歯科診療は、一定時間口を開け、我慢を強いられます
また、歯を削る振動や音、ライトの光など刺激もたくさんあります
「初めての人や場所が苦手」
「人とのコミュニケーションが苦手」
「聴覚や触覚の感覚異常」
「活動の見通しが持てない」
などの特性がある発達障害の子にとって、歯科診療は不安や恐怖心を抱く場です
今回は発達障害のある子に対する歯科診療時の対応を紹介します
歯科診療での基本的な対応
初診では口腔内診察のほか、医療面接や行動観察を通して、疾患特性と子どもの特性を把握します
そして治療計画を保護者に説明し、同意の元歯科診療が始まります
対応のポイント
来院前
来院前に子どもから「注射しない?」「見るだけ?」と聞かれた時は、保護者に「先生に聞いてみようね」と話してもらいます
「見るだけ」と言って来院した結果、実は治療だったとなると、子どもと術者の信頼関係が築きにくくなるね!
入室時
挨拶の後、歯科診療時に不適応行動の要因となりやすい体調や来院までの様子、生活環境の変化、尿意などを確認します
ユニット(治療の椅子)までの移動や靴を脱ぐことなど、自分でできることは自分で行うように促す
発達障害のある子どもは、周囲の音や人の動きなどが気になり診療に集中できないことがあります
診療に集中するための工夫
個室やパーテーションを使用し刺激を遮断して術者とのコミュニケーションを図りやすくします
また、先の見通しが立たず不安な場合は、絵カードや写真などの視覚媒体を用い、使用する器具や処置の順番を子どもに知らせます
視覚媒体は、療育や保育園、幼稚園など日常の支援に使用している媒体を参考にすることもありるよ!
診療中
歯科診療は行動療法を応用し、歯科器具や歯科診療に対する不安や恐怖心を少しずつ取り除きながら進める
例えば、先の尖った歯科器具をいきなり使うのではなく、普段から見慣れていて、やり慣れている歯磨きから始めます
その際、10数えることを条件付けすると、我慢の練習にもなります
次に、「今度は鏡で見ます」と説明し歯科器具の中でも刺激の少ないミラーを使用します
その後、徐々に刺激に強い器具を使用し、拒否が強く出た場合は、刺激が少ない器具に戻してストレスを軽減させます(系統的脱感作)
また、歯科器具を子どもがわかりやすい言葉に置き換え、説明しながら器具を見せ、実際に口腔内で使用します
説明し見せるだけではなく、実際に指や手のひらで触れさせ体験させると、安心感が増します
常に子どもの行動の小さな変化をも見逃さないように注意し、頑張ることができたらすぐによく褒めよう!
診療終了後
頑張ったことに対して、シールなどを与え一定の数になったらご褒美をもらうことにより、歯科診療への協力性を維持させることができます
ホームケアの役割
子ども自身の歯磨きは、例えば「下の歯を10磨こうね」と声をかけながら、介助者が手を添え一緒に歯ブラシを動かし歯磨き動作を教える、介助者を模倣させ磨く部位を増やす、絵本を使用しバイ菌の存在を知らせ歯磨きの目的を教えるなど、子どもの発達段階に合わせた介助が必要です
その結果、歯磨きに興味を持ち、口腔の健康の大切さを意識するようになるね!
そして、歯科診療に対しても必要性を理解していきます
発達障害のある子への歯磨き
「歯」というボディイメージ、「10」という数の概念、「上、下」という空間、「歯磨き」という動作など、認知機能や運動機能を育むこともできます
発達障害のある子は、触覚過敏が残存し介助者による歯磨きを嫌がることがある
その場合、介助者による歯磨きは指による脱感作から始め、口腔内を触れることに慣れさせながら歯磨きへと移行します
脱感作では最初に、「これからお口の中を触るよ」と説明し子どもに心の準備をさせます
次に、人差し指の腹を歯肉に当て、唇や頬の緊張が緩和されるまで一定圧を加えます
その際、指を動かすと刺激になるので動かさないことがポイントです
脱感作の順序は痛点が少ない臼歯部から始め、最後に前歯部を行います
口の中を触れられることに慣れてきたら、よく褒めながら滑らかめの歯ブラシで奥歯から優しく磨きます
歯磨き=痛い、怖いと学習させないよう注意しながら繰り返し関われることで、子どもは徐々に口腔内に触れることに慣れ、歯科診療も受け入れやすくなるね!
まとめ
発達障害のある子の歯科診療は、疾患特性を理解し、個々の子どもに合わせた配慮が必要です
少しの配慮で子どもは課題を乗り越え達成感を得て、徐々に歯科診療に対する不安や恐怖心を克服していきます
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