1型糖尿病の年代ごとの付き合い方

1型糖尿病は年代によっての管理の課題や特徴は異なります

この記事では年代ごとの特徴から対処方法までお伝えします

乳幼児期

心理面の特徴

・自分の境遇をまだ理解できない ・「痛い」「食べたい・食べたくない」など生理的欲求に対するストレス ・保護者のストレスやプレッシャー、子どもへの罪悪感は極めて大きい

管理上の課題

・食行動や活動量が不規則で、血糖値の変動が大きい
・血糖測定もインスリン注射も自分ではできない
・低血糖を訴えられず、自分で対処できない

対処方法

・厳格なコントロールは求めない、特に保護者が焦らない
・保育園や幼稚園との緊密な連携

学童期

心理面の特徴

・「集団への帰属」「同一性」により安らぎを得る
・親、教師、医療者など、権威への服従

管理上の課題

・生活の中心が、保護者から離れた集団生活になる
・自己管理能力が身につき始めるが、発達の差は大きい
・いじめや不登校の原因となる可能性

対処方法

・学校関係者との綿密な連携が必要
・患者会、家族会への参加、ピアサポート

学校生活での配慮

カバさん
カバさん

必要以上に特別扱いはしないようにしよう!

特別に配慮して欲しいこと

・必要な時にいつでも速やかに血糖測定できること
・補食ができること
・安心して注射が打てること

カバさん
カバさん

1型糖尿病について周囲に伝えるか否かは、本人の気持ちを一番に尊重しよう!

学年が低い時には安全のために言ったほうが良いこともあります

コントロールに振り回されては本末転倒

今こだわりすぎても、どうせ人生の振れ幅の方がずっと大きいです

人生を楽しむことを忘れない!人としての成長が一番大切!

思春期

心理面の特徴

・集団内での「同一性」「個性」という相反する価値観の併存
・権威(親、教師、医療者)への反発
・自我の確立のための葛藤

管理上の課題

・保護者の目の届かない時間、活動が増える
・部活動などで本格的に運動量が増える
・インスリン抵抗性が増大しコントロールが難しくなる

対処方法

・本人の意思を尊重しつつ、前向きな動機付けを行う
・親子関係のカウンセリング

アイデンティティ確立のための葛藤

1型糖尿病への怒り、絶望、無視、妥協があります

現れる状況

・隠れうち
・うったふり
・摂食障害
・登校拒否、引きこもり
・疾患に対するコンプレックス、トラウマの形成
・血糖測定の拒否、注射のスキップ

青年期

心理面の特徴

・健康面や血糖コントロールに対する過剰な自信
・病気が人生の競争の足枷になっていると考えがち

管理上の課題

・社会での競争(学業、出世、パートナー獲得)が本格化する
・血糖コントロールや健康を最優先できない場面が増える
・経済的な自立が求められる

対処方法

・まずは自立した社会人であることを目指す
・疾患に関して改めて勉強する

進学・就職の問題

進学で1型糖尿病が問題になる事例はまずありません

就職にあたっては、業務の遂行能力と関係なく、1型糖尿病であるというだけで差別されることがあってはなりません

しかし、実際には、すべての企業、すべての人事担当者が1型糖尿病に対し正しく理解してくれているわけではないため、1型糖尿病をオープンにして就職活動を行うか否かは、本人と十分な話し合いが必要です。
時に病気を隠すことも大切

カバさん
カバさん

社会人では誰にも言わない人が多く、就職でも言わないことが多いよ!

1型糖尿病だと新規につくことが難しい職業

警察官、消防士、自衛隊員、職業ダイバー、パイロット、青年海外協力隊

壮年期

心理面の特徴

・病気を持つことが特別でなくなってくる
・合併症への不安

管理上の課題

・家族の生活を支える役割が求められる
・他の疾患の併発や合併症の発症が見られ出す

対処方法

社会生活を送りつつも、丁寧な自己管理で良好なコントロールを維持する

老年期

管理上の課題

・併存症や合併症が増え、医療費も増える
・理解力、自己管理能力が低下する

対処方法

・家族のサポートに頼る
・行政、福祉サービスとの連携
・規則正しい生活を送るので血糖コントロールはそれほど苦労しない

糖尿病患者家族のチェックリスト

・ライフステージに応じた疾患受容の評価(本人も保護者も)と目標設定
・基本数値と知識の再確認(小児期発祥では本人への教育がされていないことも)
・低血糖の正しい対処(ただ「食べる」だけではない。経鼻グルカゴンも紹介)
・シックデイへの対応(基礎インスリンは絶対にやめない。SGLT2阻害薬は休薬)
・基礎インスリンの調整(就寝中の血糖が横ばいになるように)
・ボーラスインスリンの調整(カーボカウント+補正うちのスキルを磨く)
・補助療法の検討(SGLT2阻害薬、α-グルコシターゼ阻害薬など)
・血糖モニタリング(SMBG,CGM)の読み方と役立て方(TIRと%CVを意識)
・最適な治療(MDIかCSIIかSAPか)の選択(最新治療が最良の選択とは限らない)
・先進医療機器の使いこなし(導入だけで満足せずその後の継続指導が大切)
・医療費軽減の工夫や、社会、学校、家庭環境の調整(1型ライフは現実生活)
・仲間づくり、ネットワークの構築(自立した1型ライフを目指す)

まとめ

・目先の血糖コントロールに振り回されず、まずは人として健やかな成長を目指す

・年代に応じた1型糖尿病との(本人、保護者の)関わり方を知る

・最新の医療機器、薬剤が次々登場中。でも選ぶのは本人

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