養育者から子どもへのボンディング(情緒的絆)形成の過程は養育者自身のウェルビーイングと子どもの安全な育ちのために重要な意義があります
その形成の過程で生じる心理的困難は、周産期のメンタルヘルスひいては成育医療における重要な臨床的問題となります
心理的困難は、養育者に心理的苦痛や育児困難感を生じさせうつ病などの精神疾患や心理社会的逆境の併存により不適切養育のリスクが高まるよ!
このため、産科医療のみならず母子保健、精神保健及び児童福祉の多領域が協働した包括的な支援及び予防的介入が望まれます
この記事では周産期ボンディングの基本的な情報から支援まで解説していきます
ボンディングとは
ボンディングとは養育者から子どもへの情緒的絆を育てる過程であり、出産直後の接触に始まり、その後の1年間をかけて交流を重ねるごとに強まる「愛おしさ」「守りたい」「親密さ」などの肯定的な感情です
ボンディングの形成不全
ボンディングの形成不全とは養育者から乳幼児への情緒的絆ー肯定的な感情が欠如した状態の持続及び怒りや拒絶などの否定的な感情により、子どもにあたたかく親密なケアの提供が困難な状態
ボンディングの形成不全は現在のところ公式の診断基準には採用されていません
しかしながら不適切養育のリスクとなる重要なケースでは育児場面の回避や放置、乳幼児に対する暴言や攻撃的な関わりなど差し迫ったリスクの高い状態に至るため、その困難度や緊急性を判断し介入する必要があります
養育的ケアを支えるボンディング
周産期に提供される養育的ケアは、子どもの健全な発育だけでなく、脳と心の発達(社会性・情緒・認知機能)の観点からも重要な意義があるよ!
養育的ケアとは、子どもの健康と成長に必要な栄養と心地よく安全な環境を提供するのみならず、応答的な養育により情緒的な暖かさや社会情動的な成長発達に必要な刺激を与えることです
24時間休みのない養育的ケアの提供を支えているのが、養育者のボンディング=絆の感情です
授乳や抱っこ、スキンシップなど暖かく親密なケアは乳幼児に、安心を与えます
養育者の多くは妊娠期から赤ちゃんの存在を胎動で実感しボンディングの感情を育むよ!
その肯定的な感情に支えられて出生直後から応答的な養育がスタートします
育児は疲労が大きいが、養育者のボンディングが大変さを支えている
養育的ケアの効果
養育的ケアの実施時、養育者と乳児の間に高い同調性(シンクロニー)が見らます
このような早期発達における同調性の体験は、親子の安定した関係性(アタッチメント)に発展すると同時に、乳児のコミュニケーションや情動制御の能力に関わる神経回路の形成過程を促進します
安定したアタッチメントと社会脳の発達は小児期、思春期のライフコースで遭遇するストレスフルな出来事に対する子どものレジリエンスを高めることになります
大きくなった時も心が安定し、精神状態の良好が保てる
養育的ケアがなされないと
様々な阻害因子により応答的な養育ケアが提供できない環境では、同調性・随伴性を欠いた相互交流から、不安定なアタッチメント・パターンが形成され子どもの共感的なコミュニケーション能力や情動制御機能に困難が生じ、養育者にとっての「育てづらさ」が強まる悪循環となります
小児期 | 注意や衝動のコントロール及び学習の困難 |
思春期・青年期 | 自尊心の低下、不安・抑うつの発症リスクが高まる |
このような子どもの成長発達すなわち次世代育成サイクルを視野に入れて、親子2世代を支援することが重要です
支援の仕方
辛さに気づくことから
赤ちゃんに否定的な感情を持つことは養育者自身や周囲にとって受け入れ難いことであるため自ら訴えることは少ないよ!
助産師、保健師など母子保健スタッフによる妊産婦への健診や訪問の場面で自己記入式の質問票や母子健康手帳の中の育児感情についての所定の質問項目への回答をチェックすることは、有効なスクリーニング法の一つです
表出しづらい否定的な感情は、質問票を活用する
軽度の否定的な感情、「自分の子であると感じられない」と言った訴えは質問票を活用した場合に見られやすいです
情緒的な絆が形成されるタイミングには個人差があり、初産の場合や乳児との接触の機会を制限される状況では遅れる場合もあるよ
否定的な感情の背景
「腹立たしい」「こんな子でなかったら」「離れたくなる」などと表現される怒りや拒絶の感情が、赤ちゃんの泣きなどの刺激に対して過覚醒状態の養育者に生じる場合があります
親密な感情の欠如とともに抑うつ感や育児疲労の重なり、情緒的サポートのない孤立した状況などが長期化すると、赤ちゃんに寄り添えない重度の育児困難状況に進行するよ!
ボンディング形成不全の症状
ボンディング形成不全のあり方として、
・親密な絆の欠如
・拒絶
・病的な怒り
・乳児についての不安
・差し迫った虐待のリスク
などのタイプ分けをすることもあります
連携が不可欠
スクリーニングに引き続き、軽度から重度のボンディング形成不全の母親を母子保健スタッフと医療機関が連携し、切れ目のない母子の見守りと支援を継続するとともに、重度の事例では養育者の苦痛や精神症状への対応について精神科医などメンタルヘルスの専門家との連携を行います
また育児困難状況が切迫していると判断される状況では、子育て支援や児童福祉領域との連携が必要となります
また、妊娠期から医療スタッフとコメディカルスタッフの連携による切れ目ない見守り等により社会的サポートを強化することは、ボンディングの形成不全に対するファーストステップの予防的介入となります
否定的な感情が強く不適切な養育行動により子どもの安全が確保できない場合には、子どもの保護のために児童福祉機関との連携を図ろう!
子育て支援プログラム
親子関係強化に向けた様々なプログラムもボンディング形成不全のケースに対して有効です
親子の関わり合いの場面に治療者も同席し養育者の感情と赤ちゃんの反応の双方に注目し、共感的に言語化しながら養育者の否定的な感情を緩和し肯定的な関係性を育むガイダンスを行いましょう
小児医療の現場で、NICUなど分離状況にある親子へのケアとしてカンガルーケアやベビーマッサージなど、身体的・情緒的接触の機会を提供することで情緒的な絆の形成が促進されていることが報告されています
直接の接触が困難な状況では、写真やビデオ視聴を活用しよう!
妊娠中から胎児に向けて子守唄を歌い聞かせる試みも養育者のメンタルヘルスや赤ちゃんへの肯定的なボンディングの形成に有効であることが示されています
おわりに
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