子育て支援の関係者は言葉の遅れへの対応は必然です
特に健診で言語発達遅滞を確認することも多いと思います
この記事では、親への伝え方のコツや支援者としてあるべき姿について解説していきます
原因ごとの対処の仕方
他機関との連携 | 私たちにできること | |
難聴 | 補聴器装用の必要性の確認(関係医療機関など) 療育機関に紹介(言語専門職のいる機関など) 教育機関に紹介(ろう学校教育相談) | 遊びのグループの利用 「難聴児を持つ親の会」の紹介 難聴児の親のつながりをつくる |
まひなど | 必要な療育機関に紹介 (機能訓練) | 全体発達をうながすはたらきかけ 遊びのグループへのお誘い |
口蓋裂など | 医療機関との連携 言語専門職との連携 | 吹く遊び、食べ物の注意 親の会活動を支援 遊びの経験を増やす |
中枢神経系 などの障書 | 医療機関との連携 | 全体発達をうながすようなはたらきかけ お母さん(養育者)への支援 遊びのグループへのお誘い |
他機関との連携 | 私たちでできること | |
精神発達遅滞にともなう | 適切な療育機関の紹介 保育所などの利用 児童館の幼児グループ活動を紹介 | 遊びのグループに誘う 必要な遊び方、かかわり方を知らせる 生活の中での工夫を知らせる |
自閉的傾向にともなう | 適切な療育機関の紹介 保育所などの利用 児童館の幼児グループ活動を紹介 | 遊びのグループに誘う 必要な遊び方、かかわり方を知らせる 生活の中での工夫を知らせる 先輩の親との横のつながりを工夫する |
経験不足や言語環境による | 保育所の園庭開放などの情報収集 児童館の幼児グループ活動を紹介 地域の育児サークルなどを紹介 | 遊びのグループに誘い生活リズムをつける 必要な遊び方、かかわり方を知らせる 生活の中での工夫を知らせる 子どもの変化を伝える |
個人差の範囲と思われる | 保育所の園庭開放などの情報収集 児童館の幼児グループ活動を紹介 地域の育児サークルなどを紹介 | 親の心配が大きければ遊びのグループに心配しすぎないように伝える 必要なかかわり、遊び方を伝える 子どもの変化を伝える |
判断結果をわかりやすく伝える
断定をしない
心配なことがある場合は、それを注意深く伝えます
決して断定的にならないようにしよう!
この時期、子どもは予測のできない大きな変化を見せるものです
特に、良い方への変化は急激です
一過性の問題を重大なもののように言い立てると、お母さんの不安を引き起こし、生活や発達に悪い影響を与えかねません
専門機関への勧め方
専門機関での検査を勧める場合にも細心の注意が必要です
「心配がある、だから検査をする」は、健診スタッフにとっては当たり前のことかもしれませんが、お母さんにとっては大事件なのです
検査や相談を勧める場合は、「検査(相談)してみて大丈夫だったら、安心できるし」と検査・受診の積極的な面を打ち出します
お母さんとの関係の糸が切れるか切れないかは、このひと言にかかっているよ!
日本の医療機関の現状では、検査・診断はしても、その後のケアにつなげる体制は十分ではありません
ケアやアドバイスの部分は、地域で引き受けてゆく必要があります
そのためにも、継続相談の窓口や、信類できる療育グループを準備しておくことが大事になります
健診後フォローの遊びのグループに誘う場合にも、配慮が必要です
「経過観察のために来てもらう」という位置づけで誘っても、なかなか来てくれないよ!
「おうちと違ったオモチャがあるし、部屋がひろいから、からだを使っていっぱい遊べますよ。経験を増やすと、ことばの発達がうながされるんですよ。ぜひ、遊びのグループに来てくださいね」と積極的な意義や効果をはっきり伝えましょう
対応の仕方についてもっと知りたい方は「発達障害児とその親への支援のコツ」の記事を参考にしてください
大丈夫でも判断理由を伝える
「大丈夫」「ようすを見ましょう」と判断した場合も、お母さんに理由をきちんと説明してあげることが大事です
ことばが遅れる場合で心配なのは、次の3つの場合です
- <耳が聞こえない>
これは、さっき、鈴の音にすぐ振り向いていたから大丈夫そうですね。おうちでもチャイムの音を耳ざとく聞きつけるそうですしね - <精神発達の遅れ>
お子さんの場合はこちらの言っていることがよくわかっているから、この可能性は少ないと思います。遊び方も落ち着いているし、初めてのオモチャの使い方がすぐ覚えられました - <自閉症に類する障害(広汎性発達障害)>
お子さんの場合は視線が合い、人と一緒に楽しく遊べるから、この可能性はありません
以上3つの可能性が否定されるので、考えられるのは4番目の<発達の個人差と考えられる、ことばの遅れ>で、一時的なことばの遅れと思われます
生活リズムを整え、外遊びをしっかりして、ことばが増えるまでようすを見ましょうと伝えましょう
様子を見る間に何をしたらいいか具体的に示す
「大丈夫だから、ようすを見ましょう」だけでなく、具体的に何をしたらいいのか、アドバイスしてあげましょう
生活リズムをえること、外遊びを十分にすること、テレビまかせにしないこと、からだを使って遊んであげること、などを、簡単な印刷物にして渡すのもひとつの方法です
特に遊びについては、「よく遊んであげてください」だけでなく、具体的に話そう!
今のお母さんたちは、ただでさえ遊ばせ上手ではないのですから
「くすぐり遊びは好き?キャアキャア声を出すのは、ことばの発達にもいいんですよ」
「だっこして振り回すと声を出して喜ぶでしょう。子どもの喜ぶ遊びが、ことばの発達を進めるんですよ」などと
親が「様子を見たい」と言うとき
どう対応すべき?
スタッフ側としては精神発達の遅れにともなうことばの遅れの可能性が大きいと判断し、遊びのグループないし療育グループにつなげたいと思う
でも、お母さんはその判断に不満で、「ようすを見たい」と言う
そんなときは、無理せず、親の気持ちを汲んでいったん引き下がったほうが、後のかかわりがスムーズにいくよ!
受容ができていないだけ?
お母さんは、自分の子どもが「ふつうでない」とか「障害がある」ことを「認めたがらない」のではなく、「まだ認められない」「まだ受け入れられない」だけです
親として当然の気持ちです
「そんなはずはない」「うちの子に障害があるなんて、何かの間違いだ」と否定し否定し、でも心の中では不安で心配でたまらない
相談したいのに…
頼りになる人がいたら相談したいけれど、相談したが最後、「障害児」のタイコ判を押されそうな気がしてしまいます
そのため、外に向かっては強気に「ようすを見ます。男の子はことばが遅いっていいますから、心配していません」と言ったりするのだと思います
単に子どもの状態に気づいていないだけではなさそうだね!
お姉さんに責められたくないとか、高学歴でバリバリのキャリアウーマンだった自分のプライドを否定したくないとか、複雑な気持ちが隠されているのかもしれません
スタッフの実力不足?
健診する側に足りないところはなかったでしょうか
一方的な「指導」をし、お母さんに「判定されてしまった」という気持ちを与えはしなかったでしょうか
お母さんのそういう気持ちの揺れをよく理解してあげてください
その上で、「障害」をあまり話題の焦点にせず、育てにくい子ども、育ちに弱さのある子どもには、どういう配慮をしたら、より良い発達をうながすことができるかを、徐々に理解してもらうことが必要です
実際、障害のあるなしにかかわらず、きめ細やかな育児はどの子どもにも大切なのですから
また、支援者としての個人の力を伸ばす・より力を発揮できる場所で働くという点では転職を考えてみるのも一つの方法です↓(保健師の求人も多くおすすめです)
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どんなスタッフであるべき?
相談したいときに相談できる存在になる
2歳の時点では、落ち着きがなく、かんしゃくを起こしやすかったり、ことばの遅い子どもは、少なくありません
「男の子はことばが遅いっていうから」とか「これは落ち着きがないんじゃなくて活発なのよ」と、自分を安心させることもできやすい時期です
でも3歳を過ぎると、だいたいの子どもは、ことばで通じるようになってきます
他の子が次第に成長・発達していくようすを見るにつけ、だんだん心配になり、「やっぱり遅いのかなあ」と、お母さん自身、認めざるを得ない時期が必ずやってきます
そのときに、「そうだ、あの健診のときの保健師さんに相談してみよう」と思い出してもらい、健診の大きな役割を果たす
身近な存在でいる
とても気がかりな子どもの場合は、歯科検診の時に顔を出してみるとか、近くに訪問に来たからついでによってみたとか理由をつけて、
「あなたのことを気にかけて大切に思っていますよ。心配なことがあったら相談に来てね」
という思いを発信し続けて下さい
必ず通じるときがあるはず!
早期療育の意味
早期から療育を開始することは確かに必要です
私の経験からも、2歳代前半に療育的なかかわりを始めて、適切な指導を受ければ、その子の持っている力を最大限発運できるようになると思います
3・4歳と、開始が遅くなるほど、子どもの状態は変化しづらく、お母さん(養育者)との関係も固定化したまま推移し、2次的な心理的な問題を引き起しがちです
早期療育にこだわりすぎない
だからといって、なにがなんでも早期からの療育につなげなくてはならないと力が入りすぎて、お母さん(養育者)の拒否を招いてしまっては逆効果です
子どもの将来を決めるのは、基本的には、子どもの保護者
お母さん・お父さんが悩みつつ納得して選ぶ
保健師さんを中心とする健診スタッフは、その過程に寄り添いながら支えてほしい、と思います
健診は、その場かぎりの相談・判定の場ではなく、子どもやお母さん(養育者)とのかかわりの始まりです
育てにくい子ども、障害の心配のある子どもを抱えるお母さん(養育者)にとって、健診という出会いが「良き出会い」であることがとても大切です
最初の良き出会いは、その地域での「良き生活」を開いてゆく扉になるよ!
健診での対応についてもっと知りたい方は「知っておくべき健診での保護者の本音6選」の記事を参考にしてください
まとめ
今回は言葉の遅れへの支援の仕方について解説してきました
今回の記事の要点をまとめると、以下の3点があります
この記事が、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいです
最後までご覧いただきありがとうございました
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