【支援者向け】発達障害のある親への支援で知っておくべきこと3選

母子支援をしていると、親が発達障害の疑いがある場合に直面することは多いです

しかし、支援の仕方に困り悩んでいる人は多いです

この記事では、気になる親により効果的に関わるコツについて解説していきます

この記事がおすすめな人

・子育て支援に携わっている人
・障害者支援に携わっている人

発達障害のある親との出会い方

発達障害のある人が人生の中で社会に参加し子育て期を迎えることは、定型発達の人と何ら変わるところはない

そして定型発達と発達特性のある人の双方が、少子化社会における子育て期のライフスタイルの多様化に直面しています

母子保健活動で、私たちは以下の2つの窓から発達障害のある親と出会う可能性があります

子どもの時に支援されていた

1つ目の窓は、乳幼児期からの切れ目のない発達支援の仕組みの中で繋がった人が成人期を迎え、親となる場合です

カバさん
カバさん

家族のみならず多くの支援者と共に子育てをしている現在の状況は、その次の世代の支援にもつながっていくね!

育児相談の中で

もう一つの窓は、子どもの発達や、子育ての困りごとを持って訪れた親と出会う場合があります

最近は子どもの発達や養育の相談に先立って、親自身が成人期に発達や心の問題の診断、あるいはグレーゾーンと言われた経験があると話すケースも増えてきました

カバさん
カバさん

だけど、親自身が当事者であるという気づきは、周囲も含めてない場合の方が多いよ!

子育ては子どもの育ちの過程とそれに応じる親の養育行動との相互作用で成り立ちます

困りごとへの親の養育行動をアセスメントしていく中で、親の発達特性が明らかになる場合がある

大人になり発達障害が改善した人への支援

たとえばASDと診断された子でも、乳幼児期からの早期介入や特性に合った環境調整などの発達促進的な支援により、長期経過で社会生活機能障害がなくなり、時には症状のレベルで消失する事例も多く見られます

転帰を示した人の特徴

しかし、このような転帰を示した人の社会的刺激や課題への反応特性を脳画像や脳波など脳機能の所見から比較すると、定型発達とは明らかに異なっていました

転帰を示した人は定型発達とは異なる神経メカニズムで適応的な認知や行動をとっていることから、場合によっては適応のための負荷が大きくなる

男女差

カバさん
カバさん

ASDやADHDなど多くの発達障害の頻度や臨床像は性差が見られ、明らかな男性優位が見られるよ!

ASDの社会性とコミュニケーション障害を男女で比較すると、女性の方が男性と比べ言語能力が高く模倣における障害が少ないことなどから、適応的な社会行動をとりやすいと考えられています

カバさん
カバさん

だけど、社会的に適応し続けようとすることは長期的には心理的過負荷となり、精神保健の問題を生じやすいよ!

不安や抑うつ、適応障害などの臨床症状の背景に、発達特性による困難が見つかる場合がこれに当たります

大人になってから発達特性が目立つ

発達特性があってもその人なりの対処と適応をしていたため、診断されていなかった人が、大人になって診断されることがあります

それは、大人になり、新たなストレス状況から生じた不安や抑うつ症状によって以前からあったこだわりや感覚過敏、不注意などの発達特性が強調され顕在化する場合があるからです

男性就労による社会生活環境の変化
女性妊娠や出産、子育てによる環境の変化
大人になり発達障害を受ける契機

ジェンダーで異なるライフステージで要請される社会的役割と発達特性とのミスマッチが与える影響も、子育て支援を考える上で重要です

発達障害のある親の課題

子育ての難しさ

子育ては、同時に複数の認知処理と対処行動、プランニングの修正を求められるマルチタスク課題に満ちています

また育児は、育児手技の熟練と共に感情労働でもあるため、子どもからのコミュニケーションや感情表出への共感や応答と同時に、親自身の感情や動機付けの調整が求められます

カバさん
カバさん

発達障害があると、これらの実行機能に障害が見られるよ!

しかし、発達障害がある親の子育て能力に対して、過剰に否定的なバイアスが多く見られます

共感性の障害

共感性の障害があると、子どもの気持ちがわからず子育ては難しいとされています

ASDでは他者の視点に立つことの難しさが強調されますが、定型発達(と仮定される人)でも多くの状況でその機能は損なわれています

障害は関係なく「察する」子育ては難しい

わからないことに気づき、率直に質問することで、他者の体験を理解し、適切に反応するスキルを身につけていきます

自分を責めやすい

発達障害の持つ親が、「普通」の子育てをすることに過度に没頭し、それができていないことで自分を責め、子育てに回避的になってしまうことがあります

子どもを泣き止ませられず、苛立ちながら早く寝てくれることを願う自分を「愛情がない」と考えてしまうことはよくあります

親が自らの特性を理解し、聴覚過敏により子どもの泣きに対して消耗が激しいことや、セルフケアの時間が多めに必要であることに気づくことで、自分を肯定的に捉えていける

発達障害のある母親への支援の事例

Aさんが第2子の出産に際し、精神科クリニックを受診したのは、就学前の第1子Bちゃんの子育て困難の相談を受け支援していた保健師の紹介によるものでした

Aさんは子育て教育を重視し、読み書きの教え方に悩んでいました

いくら教えても忘れてしまうと叱責し過ぎてしまい、Bちゃんの泣き声について近隣からの相談もしばしばありました

受診時の話題も国語の教育に終始し、「場合によって意味が変わる言葉が多すぎる」「四字熟語のように意味がきっちり決まっている方が助かる」と話しました

Bちゃんの就学の準備と、妊婦健診の同時進行の調整が負担となりパニックが頻発していると考えられましたが、Aさんに自覚は見られず教育がうまくいかないことにとらわれていました

Aさんにあった子育てや教育の仕方を知るためと説明し、発達検査を行ないました

要領を得ない話し方や、生育歴・教育歴から知的能力の問題が予想されましたが、平均レベルの数値で、Aさんがこだわる言語能力ー言語理解はむしろ高く、知覚推理に極端な低下が見られました

複数の情報から、その都度まとまりのある意味を推論することに躓きやすい、あるいは時間がかかることがわかりました

そのことを説明すると、小学校の頃から「ふわふわ言葉にやられてきました」と独特の表現で話、ASDの説明に「ふわふわ言葉の世界が社会性なんですね」と納得しました

国語の難しさのやりとりが面接のルーチンとなり関係性ができるとともに、ASDの感情調節の困難ー易刺激性への向精神薬を処方したことでパニックが減り、妊娠出産を乗り切れました

Bちゃんの就学後、教育へのこだわりが再び強まり子育て支援課も介入するようになりました

未就園の弟の育児環境は整っており感情的になることはありませんが、Bちゃんへの叱責を見聞きしている影響が懸念されました

相談を受けていた保健師が、結婚前の会社勤務では何年間も無欠勤で評価されていたと自信を持って語る様子から、Bちゃんの教育費のためにも福祉制度や就労支援機関の利用を提案しました

就労してからのAさんには笑顔が見られ、多くの仕事を任されていることを語るようになりました

Aさんの教育へのこだわりとパニックには、自分自身の学校での疎外感や孤立感、それをBちゃんには体験させたくないという恐れがありました

それに共感した保健師の「教育のために働く」という提案が、こだわりからの切り替えの契機となりました

Bちゃんは今、「仕事に忙しくて色々してあげられなくてごめんね」というAさんに「仕事に一生懸命なお母さんが大好きよ」と特性を理解し上手に返すAさん自慢の娘となり、教育福祉の道を目指しています

発達障害のある女性への子育て体験の理解とエンパワメント、さらには神経発達症のある親を持つ子どもからの声と関係性のニーズを、支援に活かしていくことが求められます

まとめ

今回は発達障害のある親への支援について解説してきました

今回の記事の要点をまとめると、以下の2点があります

まとめ

①発達障害のある親とは、幼少期から繋がっている人や、育児相談の中で出会うことがある
②生活に困難を感じていなかった人でも、大人になってから就職や出産などの環境の変化により困難を感じるようになることがある
③発達障害があっても、自らの特性を理解し、育児を行っていけるよう支援することが大切

また、より良い支援をするためには、支援の力を伸ばすことも大切です

支援者としての個人の力を伸ばす・より力を発揮できる場所で働くという点では転職を考えてみるのも一つの方法です↓(保健師の求人も多くおすすめです)
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最後までご覧いただきありがとうございました

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