言葉の遅れといっても原因はその子によって異なります
原因によって対応の仕方も変わってきます
この記事では言葉の遅れの種類と援助が必要かどうかの判断の仕方について解説していきます
言葉の遅れの4つの種類
「ことばの遅れ」を、次の4つに分けて考えてみます
- 原因となる病気や障害が明確(難聴、脳性まひ、発声発語器官の器質的障害によるもの)
- 発達の遅れやアンバランス(中度以上の精神発達遅帯、対人関係ないし認知障害にともなうもの)
- 不良な言語環境(心理的要因を含む)
- 発達の個人差(境界線級(IQ70~84)の精神発達遅滞をも含む)
原因となる病気や障害が明確
- 難聴
耳からの音の取り込みが少ないため、ことばの獲得が遅れます - 脳性まひ
発声発語に関する運動能力が障害されているため、ことばが遅れます - 口蓋裂などの器質的障害
口腔器官の器質的障害によることばの遅れです。長期間にわたる気管切開や鼻腔栄養のために、発声発語運動の練習ができず、ことばが遅れる場合もあります - 中枢神経系の損傷
交通事故や脳の手術などにより大脳の言語野に損傷を受けた子どもが失語症の状態になることがあります。成人の失語症とは違って、発達的に代償されてゆく可能性が大です
発達の遅れやアンバランス
- 精神発達遅滞
精神発達が遅れると、ことばの発達も遅れます。 - 自閉症を含む広汎性発達障害
中枢神経系のどこかにうまくはたらかない部分があって、外界をとらえることや対人関係の発達が遅れ、ことばの獲得も遅れます - その他
認知面に発達のアンバランスがある子どもは「ことばの遅れ」を症状として持つことが多いものです。将来的にLD(学習障害)の可能性のある子どもや、多動症候群の子どもたちが含まれます。知的な遅れは頭著ではなく、「グレーゾーンの子ども」といわれる「ちょっと気になる子」です。望ましい環境を用意し経過を追うと正常発達の範囲に入ってゆくことも多いものです
不良な言語環境
- 両親が高度難聴者で子どもに話しかけることがほとんどない
- 養育者の精神的な問題のため子どもとのかかわりが保てない
- 子ども自身がことばを獲得すべき時期に長期入院していたりなど、「環境剝奪」といえるような状況下
発達の個人差
原因となるはっきりした病気や障害がなく、精神発達や対人関係、ことばを含む生活全般にも大きな問題が見られないのに、ことばが遅れることもあるよ!
1歳6か月児健診時には、ことばは出ていないけれども行動面では問題なしと思われ、フォローしているうちにことばが増えて、2歳半から3歳の間には正常に追いついてゆく、というような子どもたちのことです
こういう子どもに「特異的言語発達遅滞」という診断名がつくことがある
「特異的」というのは「原因がわからない」という意味で使われており、あまり重要に考える必要はありません
健診にかかわる私たちの仕事は、子どものより良い発達を支援することなのですから、お母さんに無用な心配を抱かせないという意味で、むずかしい診断名や病名はあまり使わないほういいと思います
1・2歳代では障害要因の考える必要がない「発達の個人差」が意外に多いよ!
援助が必要かを見分ける
見分けのむずかしい1・2歳代で、援助が必要なのか、ようすを見るだけで良いのかをどこで見分ければ良いのでしょうか
以下の3つを見て、難聴・精神発達遅滞・自閉性障害およびその疑いが少なければ、一応「発達の個人差の範囲の中」と考えます
「ボーダーライン」(境界線級の精神発達遅滞)や「グレーゾーン」の子どもたちの場合は判定が困難です
その場合は、さらに経過を追う必要があるね!
原因となる病気や疾患の有無を確認
耳の聞こえのようすは必ず確かめます
小型のヒアリングチェッカーや鈴やカスタネット、小さい太鼓などで音を出し、反応するかどうかを観察します
静かな部屋で行なうことが大事!
1度で確信が持てない場合は、何回か継続して観察してみます
聞こえそのものには問題がなくても、外界とのかかわりがうまくとれずに反応しない場合もよくあります
長期にわたる気管切開や鼻腔栄養などの既往も影響するよ!
精神発達のようすを見る
年齢並みの理解があるかどうか、がポイント
オモチャを使っての遊び方や、からだの使い方、おとなからのはたらきかけに対する反応の仕方などを見ます
また、「くつした、ぬごうか」「くつした、ママにあげて」と、ことばだけで声かけして、その反応を見ます
しかし、いずれも1度で見当をつけるのはむずかしいものです
精神発達遅帯を否定するには、「年齢並みの理解が保たれている」ということが大切
また、検査場面での理解と日常生活場面での理解とでは意味が違います
観察や聞き取りを大切にする必要があります
お母さん(養育者)に「こちらの言っていることがわかりますか」と具体的にたずねてみましょう
対人関係のようすを見る
自閉的な傾向が強い場合は、視線が合わない、人と一緒に遊ぶことをしない、決まりきったパターン化した遊びをする、クレーン現象が見られるなど、いくつかの特徴的な行動が見られます
まとめ
今回は言葉の遅れの種類と支援が必要かどうかの見分け方について解説してきました
今回の記事の要点をまとめると、以下の2点があります
言葉の発達を伸ばすコツについて知りたい方は「言葉がなかなか出ない子への対応のコツ5選」の記事を参考にしてください
この記事が、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいです
最後までご覧いただきありがとうございました
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