自閉症と聞いて皆さんはどんなことを思い浮かべますか?
・発達障害
・かわいそう
・接し方がわからない
自閉症という言葉を聞いたことがあっても、説明してと言われたら説明できる人は少なく、なんとなくマイナスなイメージばかり世の中には浸透しています
確かに自閉症は、こだわりが強く、人との関係を築きづらい面がありますが、本当は真面目で約束を守る、きちんとした子たちです
この記事では、自閉症の原因や特徴、診断時期、特性に対してどのように対応していくことが良いのかを解説します
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、自閉症やそれに似た特性のある発達障害の一群
「スペクトラム」とは連続体という意味で、その特性・症状の表れ方が強いものから弱いものまで連なっているというイメージです。
特性の表れ方にも違いがあります
新しい診断基準では「アスペルガー症候群」や「高機能自閉症」という細かい分類はせず、知的障害を伴うものから知的障害のないケースまで、全てを含めて「自閉症スペクトラム障害」と呼ぶようになりました
中にはIQが120等の特定の才能に秀でている子もいるけど、知的障害の有無や特性の表れ方(強弱)によっては、本人の辛さが測れないよ!
原因は?いつ診断される?
ASDの原因はまだよくわかっていませんが、先天的な脳の機能障害と考えられています
多くは3歳以前に発現し、1歳半までに診断可能とされていますが、知的障害のない場合は、言語や対人関係の困難が的確になるのがもう少し後になるため、幼児期の診断は難しいともいわれます
他の発達障害と併存することもあり、注意欠如・多動症(ADHD)や学習障害(LD)の両方の特性がある子も結構多く見られます
主な特性
①人との関わり・コミュニケーションが苦手
乳児期から関わりづらい
対人関係の困難が強いと、気になる様子は乳児期から見られます
そう言えば赤ちゃんの頃から目が合わず、スキンシップを嫌がった…
と後に振り返るお母さんは多く、「なんとなく通じ合えていない感覚」を持っています
逆に、後追いもせず一人でおとなしくしているため、「手のかからない赤ちゃんだった」ということもあります
独特な言葉遣い
言葉がなかなか出なかったり、話してもオウム返しや独り言だったりして、言葉によるコミュニケーションは取りづらくなります
話すようになってからも、妙に大人びた言葉遣いや棒読みのような話し方だったりするため対話になりづらく、「変わった子」と見えてしまうこともあります
言葉をその通りに受け取る
「お風呂見てきて」と言ったら「見てきたよ」というので安心したら、あふれていた。
というように、言われた通りにしか受け取らず、その言葉に含んだ意味まで理解できません
例え話や冗談を真に受けて怒り、トラブルになりやすいね
相手の気持ちに気づかない、空気が読めない
友達が使っている物を黙って取り、それで相手が泣いても気にしない…と言った姿から、「自分勝手で意地悪」と思われることもあります
また、自分の言動が周りにどう映るのかが分からないので、相手が嫌がっているのに一方的に自分が興味のある電車の話をしたり、場の雰囲気を感じ取れず、お葬式の時に大声でギャグを連発したりして「空気が読めない」と言われることもあります
表情や態度から相手の意思をくみ取ることが苦手な子が多いよ
②興味の偏り・こだわりが強い
興味・関心の幅が狭くて深い
細部に関心が向く傾向があり、興味は狭いが深いという特徴があります
視覚的な記憶力が非常に良くて、関心のあるものは1回見たら絶対に忘れないという子がいます
コンピュータが画像を取り込むように覚え、それを頭の中で再生して後から絵に書いたりできてしまうこともあります
ある領域では専門家並みの知識を持つことがあり、鉄道博士、虫博士などと呼ばれる子もいるよ!
気持ちを切り替えられない
暑いからこっちの服を着ようと言っても「この服じゃなきゃダメ」。
工事をしているから別の道を行こうと言っても、「この道じゃなきゃダメ」と言った具合です
ひっくり返ってパニックになることもあります
ゲームで1番にならないと怒るのも、気持ちが切り替えられないことが原因になります
なお、玩具などを一列に並べるのは、物や手順へのこだわりと同時に、そうすることで自分の気持ちを安定させているということもあります
相手、状況、場面に応じて気持ちを切り替えることは難しいよ!
③感覚の偏り・動きがぎこちない
感覚が敏感・鈍感すぎる
五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)のほか、固有覚、前庭覚という体内で感じる感覚が、敏感・鈍感すぎるということが、さまざまな困難に繋がります
中でも特定の感触や音を嫌がることは多く、気力で我慢できるようなものではないので、生活に支障が出ることもあります
※固有覚:筋肉や関節に感じる感覚で体の位置や動くときの力加減を理解するために使う。
※前庭覚:平衡感覚ともいい、姿勢を保ったり、動くときのスピードを理解するために使う。
子どもの気になる行動・状態の要因がこの感覚機能の偏りからきていることが、実はとても多いよ!
触覚過敏は本能的な反応
生まれたての赤ちゃんには口でおっぱいを探し吸い付いたり、手に触れたものを握ったりする反応(原始反射)がみられます
これは本来人間に備わっている本能的な行動で、生後3か月を過ぎる頃から徐々に消えていき、その代わり、視覚や触覚など五感を使ってものを感じる機能が育っていきます。
手に握ったおもちゃを見ながら感触を確かめるようになるのです
ところが、この発達が順調にいかない場合、触れただけでは識別できないので、触れることへの不安が強くなります
視覚 | 周囲をあちこち見てしまい気が散りやすい |
聴覚 | 大きな音・特定の音が苦手 |
味覚 | 極端な偏食がある |
嗅覚 | 「臭い」とよく訴える |
触覚 | 触られること、粘土・泥・砂遊び、歯磨き、爪切りを嫌がる |
固有覚 | 肘や膝など関節にうまく力が入らず、体がぐにゃっとした印象。力を入れて物を持てない |
前庭覚 | 滑り台や階段を降りるのを怖がる。バランスを崩しやすい。転びやすい。姿勢が崩れやすい |
新しい感触は怖くて仕方ないので、激しく拒否する。
これが触覚過敏の状態だね!
感覚鈍感は同じ動きを繰り返す
くるくる回る、ぴょんぴょん跳ぶ、手をひらひらさせるなど同じ動きをずっと繰り返している子がいます
不安が強くなると、こうした行動を繰り返すことで気持ちのバランスをとっているということがあります
また、感覚が鈍感で刺激を受け取りにくいため、足りない刺激を取り入れようとしているとも考えられます
視覚 | 動いているものを目で追うこと、捕まえることが苦手 |
聴覚 | 人の声の聞き取りが苦手。呼んでも振り向かないことがある |
味覚 | 濃い味付けのものを好む |
触覚 | 怪我をしても痛がらない。なんでも手で触る |
固有覚 | 必要以上に力を入れる。不必要な時に飛び跳ねる。つま先立ちで歩く。ものをそっと持ったり、扱ったりが苦手 |
前庭覚 | 回転するものを見つめることが多い。頭を振る。体を揺する |
不器用・運動が苦手
手足や指先の触覚が鈍感だと、ボタンの掛け外しやシール貼りなど手先の細かい作業が難しくなります
また、筋肉や関節に感じる固有覚が鈍感だと力加減がわからず、ドタドタと歩いたり、力任せにドアを閉めたりする様子が見られます
ボール投げやマット運動、縄跳びなど、しなやかな動きが要求される遊びも苦手さが表れます
この部分の特性のみ顕著に表れる場合は、発達性協調運動障害と診断されることもあるよ!
関わりのポイント
基本的な関わり方は「その子にわかりやすくすることで不安を取り除き、気持ちを切り替える手助けをする」こと!
重い自閉症スペクトラム障害の場合、気持ちの切り替えはかなり難しいですが、自閉症スペクトラム障害の中でも知的障害のない子の場合、切り替えられるようになる可能性は十分あります
言葉掛けはシンプルにわかりやすく
「ちょっと」「優しく」など、曖昧な表現や相手の立場で考えるのが苦手なのでシンプルな言葉で伝えるよう心がけます
人との関わりを通して言葉を育てる
単に語彙数を増やすために単語を教えるのではなく、絵本や実物を見ながら指差して答えたり、ジェスチャーを交えて話しかけるようにしましょう
挨拶は大人が率先して行うことで、その場に相応しい「あいさつ言葉」を伝えます
人との関わりを通して言葉を教えよう!
言葉を伸ばす関わりについてより詳しく知りたい方は、こちら「言葉がなかなか出ない子への対応の仕方」の記事を参考にしてください
落ち着ける環境を用意
押し入れの中、段ボール箱の中、机の下など本人と一緒に探します
布を1枚被るだけで落ち着ける、ということもあります
余計な刺激が入らず、一人になれる、落ち着ける環境を用意しよう!
事前のお知らせ
行動の前には、これからどこに行って何をするかを伝えましょう。
初めてのこと・場所の場合は、特に丁寧に伝えます
「今日はお菓子は買いません」「公園には寄りません」など、具体的な約束をしておくことで、パニックになるのを防ぐこともあります
また、見通しが持てるよう「長い針が3になるまで」など終わりを具体的に示すと安心できます
絵や写真を用いて説明するのもいいね!
して欲しい行動を実際にやって見せるのも、見てわかる伝え方としておすすめ!
パニックへの対応についてより詳しく知りたい方は、こちら「予定の変更が許せず、パニックになる子への2つの対応の仕方」の記事を参考にしてください
興味の幅を広げる手助け
好きなことに没頭する時間は大切にしつつ、興味を広げることも考えましょう
いつもミニカーを並べて遊んでいるなら、そこに人形を加えてごっこ遊びに誘ったり、空き箱で車を作ってみたりする等、今興味を持っていることから少しずつ広げていくといいでしょう
(↓サブスクで色々なおもちゃを試してみるのもおすすめです!)
苦手な感覚は避け、足りない感覚は入れる
感覚が鈍い場合は足りない感覚を補う、敏感な場合は苦手な感覚を避けるか軽減するというのが対応の基本です
飛び跳ねたり体を揺すったりし続ける子には、その動きを止めるより、押す、軽く叩く、強めに撫でてギュッと力を入れるなど、外側から筋肉や関節に感覚を入れるようにすると良いでしょう
視覚や聴覚が鈍感で大人の話が入りにくい場合は、個別に目を合わせたり体を触ったりして注意を向けた上で話しかけることも必要です
まとめ
今回は自閉症と関わり方のポイントを解説してきました
今回の記事の要点をまとめるとまず、自閉症の特性としては大きく分けて以下の3点があります
そして、この特性を踏まえて、上手に関わっていくコツは以下の6点です
この記事が、少しでもお役に立てたのであれば幸いです
最後までご覧いただきありがとうございました
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