「きょうだい児」は慢性疾患や障害のある子どもの兄弟姉妹のことを指して使われています
きょうだい児には様々な困難と課題があります
この記事では、きょうだい児について解説していきます
きょうだい児とは
「きょうだい児」という呼び名は、近年マスメディア等を通して広がってきたもので、慢性疾患や障害のある子どもの兄弟姉妹のこと
大人になった者のことは「きょうだい」と表記されます
きょうだい児の立場
きょうだいは、成育歴から生じるなんらかの課題を持ちながらも、周囲からの支援を受けにくい立場にあるよ!
そのため、課題解決がなされないまま困難に陥り、それが問題として表出されてから(例えば精神疾患の発症等)ようやく支援につながるという場合も少なくありません
きょうだい児支援
きょうだい児支援の必要性
幼少期から学齢期にかけての、人格形成や社会関係形成の基盤となるものを習得する時期に心理社会的な困難を抱えていると、健全な発達が阻害されやすいです
「自分が小学生の時から支援があればよかったのに」
というきょうだいたちの声(講演会等での発信)もあり、「きょうだい児」への支援の必要性が注目されるようになってきました
周囲のサポート
「きょうだい児支援」というと、慢性疾患や障害のある子どもと、きょうだい児との関係がクローズアップされがちです
しかし、実際には家族全体(その家族がどういう家族であるか)や地域社会(近隣・学校・福祉サービスの状態等)から受ける影響も大きいと考えられます
周囲のサポートの有無が、例え子どもの慢性疾患や障害の状態が同じであったとしても、きょうだいへの影響がかなり異なることは容易に想像できると思います
子どもが子どもらしく育つ環境があれば、きょうだい児も健全に育つ
家族がきょうだいに影響
現代社会においては家族機能が不全化しやすい要因がたくさんあります
そこに慢性疾患や障害への対応が加わるのですから、家族はさらに機能不全に陥り、きょうだい児がその影響を受ける(きょうだい児自身のニーズに応えてもらえない)ことになるのです
例えば、
・夫婦(もしくは親族)の間に葛藤があり、きょうだい児がそれに巻き込まれ、親(多くは母親)の相談相手を小さい時から担う ・家事や障害のある子どもの世話に関して年齢不相応な負担を負う ・完璧であることを親から要求され、自らもそうあらねばならないと思い込む ・慢性疾患や障害のある子が特別扱いでいつも優先されるため、きょうだい児の自尊心が傷ついたり愛着形成に困難が生じたりする ・障害のある子のやったことをきょうだい児の責任にされる ・親にとって便利で都合の良い存在であり続けることで自我(自分とは何か)を見失う ・家族の中で言ってはいけないことがあって辛い状況にいても、それを誰にも言えずに感情が混乱したり孤立感を味わったりする ・慢性疾患や障害への対応方法がわからず混乱する ・差別や偏見を受けたり、行ける場所が制限されることで、生活体験の幅が狭くなる ・困難を抱えているという自覚が育たず、悩みを相談できない
と言ったことです
全ての子どもは子どもらしく育つ権利を持ち、そのために取り組むべき課題があるのですが、その課題に取り組むことが難しくなるということが、大きな問題なのです
ヤングケアラーの現状
ヤングケアラーとは、本来大人が担うことが想定されている家事や家族の世話などを日常的に行なっている子ども
「きょうだい児」が家族の中でなんらかのケア役割を担っている場合には、ヤングケアラーの中に含まれます
そこで、令和2年度子ども子育て支援推進調査研究事業において実施された調査から、「きょうだい児」の置かれている状況を推察してみたいと思います
兄弟姉妹へのケアの内容
専門職が存在するような内容(ホームヘルパー、ガイドヘルパー、カウンセラー、看護師、後見人、通訳など)を担っていることがわかります
見守り | 68% |
家事 (食事の準備や掃除、洗濯) | 37.6% |
兄弟姉妹の世話や保育所等への送迎 | 34% |
外出の付き添い (買い物、散歩など) | 21.3% |
感情面のサポート (愚痴を聞く、話し相手になるなど) | 21.3% |
身体的な介護 (入浴やトイレのお世話など) | 20.8% |
薬の管理 | 3% |
通訳 (日本語や手話など) | 3% |
金銭管理 | 2.5% |
通院の付き添い | 2% |
その他 | 5.1% |
「お手伝い」のように失敗が許され、責任は大人が取るというようなものではなく、「仕事なみ」のものが求められるため、きょうだい児たちの負担は大きい
ケアを担うことの影響
また、ケアをしているために、やりたいけれど出来ていないことという設問への回答では、特にないが58%を占めています
これは、本当に何もないのではなく、ニーズが自覚化されていない状態だね!
言い換えれば、個々の持つ課題が問題化していない状態ということです
問題化した場合には、以下のような形になって表れるのです
自分の時間が取れない | 20.1% |
宿題をする時間や勉強する時間が取れない | 16% |
友人と遊ぶことができない | 8.5% |
睡眠が十分に取れない | 8.5% |
部活や習い事ができない・辞めざるを得なかった | 4.7% |
進路の変更を考えざるを得ない・進路を変更した | 4.1% |
学校を遅刻・早退してしまう | 2.5% |
学校に行きたくても行けない | 1.6% |
ヤングケアラーの相談先
ケアについて、相談したことがあると応えたものは21.6%だが、相談相手は家族が大多数となっていることから、ヤングケアラーの「ケア」に関連する環境がかなり閉じられており、家族内完結の状態にあることが推察できるのです
家族 | 69.6% |
友人 | 40.6% |
学校の先生(保健室の先生以外) | 13% |
親戚(おじ、おばなど) | 8.7% |
スクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラー | 7.2% |
SNS上での知り合い | 7.2% |
保健室の先生 | 4.3% |
病院の人(医師・看護師など) | 1.4% |
福祉サービスの人(ヘルパー・ケアマネ) | 1.4% |
近所の人 | 1.4% |
きょうだい児を健やかに育むには
きょうだい児の場合は、特に家族の努力だけでその環境を整えるのは難しいです
医療・教育・福祉・地域社会が連携して、きょうだい児のニーズ(生活課題)を把握し、取り組む必要がある
まずは親支援が重要だね!
きょうだい児が小学校中学年以上になれば、同じ立場の子ども同士での活動を取り入れて支援することもできます
支援者の意識するべきこと
患児や障害児のことを中心に物事を組み立てて考え、他の家族員はそのための資源であると位置付けるのをやめよう!
一人一人のその人を見て支援を提供することができれば、親やきょうだい児の負担もかなり減っていきます
例えば、
親に良き療育者になれと要求することが、きょうだい児との時間を奪うことにつながっていないか。
きょうだい児に「〇〇君のお姉ちゃん」と呼びかけることが、あなたは二の次の存在ですよというメッセージになってはいないか。
など日々の業務の立ち位置を点検してみると良いでしょう
支援の力を伸ばす
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