ビタミンK2シロップ飲まないとやばい理由

産科施設等では生まれて間もない新生児にビタミンK2シロップを投与していますが、なぜ新生児期にビタミンKを与える必要があるのでしょうか

新生児・乳児ビタミンK欠乏症とはどのようなものか、また推奨されるビタミンKの内服方法などについて解説していきます

この記事がおすすめな人

・ビタミンKについて知りたい人
・ビタミンK2シロップを投与する理由・方法を知りたい人
・ビタミンK欠乏症について説明できない人

ビタミンKとは

天然のビタミンKにはビタミンK1とビタミンK2があります

ビタミンK1

ビタミンK1は緑黄色野菜に広く含まれ、食物中の脂肪によって吸収が高まり、一般成人では十分量のビタミンK1が食事から摂取されています

ビタミンK2

一方ビタミンK2は腸管内の細菌により合成される化合物群であり、の合成量だけではビタミンKの必要量は産生されません

ビタミンKの役割

ビタミンKは肝臓において凝固因子(凝固第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子)産生に関与しており、ビタミンK欠乏に伴いビタミンK依存性凝固因子が欠乏して凝固障害が起こり、出血する可能性があります

ビタミンK欠乏性出血症

ビタミンK欠乏性出血症とは

出生後7日以内に起きるビタミンK欠乏に基づく出血性疾患

出血斑や注射・採血など皮膚穿刺部位の止血困難、吐血、下血があります

また、頭蓋内出血など致命的な出血を呈する場合もあります

生後2〜4日に起こることが多いですが、出生後24時間以内に発症することもあります

新生児期に起こりやすい理由

新生児期にビタミンK欠乏症が起こりやすい理由としては、

①ビタミンKは胎盤通過性が低く、出生時の備蓄が少ない
②新生児の肝臓が凝固第Ⅱ因子合成に関して未成熟
③母乳のビタミンK含有量が少ない
④新生児の腸管が生後数日の間は無菌であり、ビタミンK2が腸管内で産生されない

などが挙げられます

カバさん
カバさん

他にも胆道閉鎖症などの肝胆道系の基礎疾患がある場合は発症することがあるよ!

発症時期ごとの原因と出血部位

発症時期により原因や出血部位が異なります

早発型(出生後24時間以内)

原因:母体への薬剤投与
出血部位:頭蓋骨骨膜下・頭蓋内・胸腔内・腹腔内

古典型(生後2〜7日)

原因:特発性・母体への薬剤投与・母乳栄養
出血部位:消化管・鼻腔・臍・皮膚

遅発型(生後2週間〜6か月)

原因:二次性(胆道閉鎖症など)・慢性下痢症・抗生剤投与
出血部位:頭蓋内・皮膚・消化管

ビタミンK2シロップの内服方法

内服方法には、以下の表の通り、病院ごとにばらつきがあります

3回法
(哺乳確立時、分娩施設退院時、1か月児健診時)
55.6%
3か月法
(生後3か月まで1週間ごとに13回)
22.3%
その他22.1%
医療機関ごとの内服方法の実施割合

ビタミンK投与については、3か月法(哺乳確立時、分娩施設退院時、その後は生後3か月まで週1回)が推奨されている

理由としては以下のことがあげられています
・3か月法によるビタミンK欠乏性出血症予防の可能性が示唆されている
・過去に3か月法でビタミンK過剰が起こったという報告がない
・欧米で3か月法を採用している国が多くある

また、肝胆道系疾患が早期発見されずに、ビタミンK欠乏性出血性疾患が起こったのちに診断される事例が少なくないです

肝胆道系疾患の早期発見のため、「母子健康手帳」の「便色カラーカード」(便色の確認の記録)を活用していくことも重要です

便色カラーカードについて詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください↓
「胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル」

まとめ

今回はビタミンK2シロップ飲まないとやばい理由を解説してきました

今回の記事の要点をまとめるとまず、以下の3点があります

まとめ

①新生児期はビタミンKが不足しやすい
②ビタミンK欠乏性出血症になると、出血しやすくなり、致命傷ともなる
③ビタミンKの内服方法は3か月法が推奨されている

この記事が、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいです

最後までご覧いただきありがとうございました

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