患児のきょうだいへの関わり方のコツ4選

小児がんなど、お子さんに疾患が見つかると、その子のケアはとても大変です

そのため、その子のきょうだいのことはどうしても後回しになってしまいます

この記事では、そのきょうだいにフォーカスしてお話ししていきます

きょうだいたちの支援をする、きょうだいたちと一緒に過ごすとき、「きょうだいたちが孤立しがちなこと」や「コミュニケーションが大事」と思ったことを皆さんと共有したいと思います

表記の仕方

兄弟:通常の兄弟
きょうだい:病児等ケアが必要な子の兄弟

兄弟の存在

乳幼児健診にいらっしゃる大半の方から、兄弟のご相談を受けます

小児がんのきょうだいだからということではなく、やはり「兄弟は皆大変」という話を最初にしたいと思います

カバさん
カバさん

子どもたちは無条件に大事にされ、守られ、その安心感が大人になるときの大事な経験になるよ!

愛着から信頼関係が生まれ、自己肯定感を経て人格形成されます

兄弟の誕生

ここに兄弟が産まれると、育ててくれる人(親や祖父母等)との1対1の関係にもう一人の相手が登場します

育ててくれる人の大事な対象だった自分と同じような関係が見て取れ、とても複雑な気持ちになります

3〜4歳の頃は、皆に「可愛い、可愛い」「お兄ちゃん(お姉ちゃん)」と言われてはいるものの、お兄ちゃんやお姉ちゃんになった子どもにとって、兄弟の誕生は青天の霹靂です

もちろん弟(妹)をお人形さんのように可愛いと思う気持ちはあるけれど、例えば今までは自分が何も言わなくてもいつも空いている母親の膝があって、何も言わなくても声をかけてくれる父親がいたけれど、自分が何か言わないと皆、赤ちゃんである弟や妹の方に目がいってしまいます

カバさん
カバさん

これまでは無条件に自分が1番だったけど、2番になった感触「自分はこの後、どのように育ててもらえるのか」という変化についていけなくなる瞬間が出てくるよ!

赤ちゃん返り

それが赤ちゃん返りとして出せる子どもはとても健康で、赤ちゃん返りが出てきたら、それがチャンスだと思って「赤ちゃんにたっぷりさせてあげたほうがいいですよ」と私は親に伝えています

しかし、ある程度年齢が大きくなるとそれがなかなか出せない子どもや、もう出さなくてもいいかなと思う子どもも、もちろんいると思います

育ててくれる人との関係性が根付き、地盤がしっかり固まっている

親子の関係に確固たる自信があるため、皆が下の子を可愛がっていても上の子どもも大人側になって、可愛がることができる

下の子も同じように、育ててくれる人との関係性の中で成長していきます

きょうだいの場合

カバさん
カバさん

兄弟の中で誰かが病気になると、例えば上の子が病気になると下の子にとっては愛着→信頼関係→人格形成を経る過程が滞るよ!

下の子は自分が一番なはずなのに、皆がやけにお兄ちゃん、お姉ちゃんとなります

かたや、下の子が病気になるとますますお兄ちゃんやお姉ちゃんはなんだか混乱し、嫉妬や怒り、さらに複雑な気持ちが湧いてくるのがきょうだいと思います

きょうだいからの目線

変わらない環境が大切

子どもががんになると、家庭にいる時間と同じくらい濃厚な時間を病院で過ごすようになります

家族皆が病院中心の生活になると、きょうだいにとって家庭の安定感が崩れてしまいます

きょうだいは家の中の雰囲気が変わったと感じますが、一方でいつものように学校に行くことや地域の野球・サッカーチーム、近所の面倒見のいいおばさんが変わらずに付き合ってくれることがきょうだいにとって、とても重要です

カバさん
カバさん

教育や保育の場でのきょうだいは、家の中の環境は変わっても仲間と同じことをやりたい、家以外の所属する場所(学校等)で、自分の立ち位置は変わらないでいたいと思うよ!

きょうだいに表れる症状

少し年齢が大きくなったきょうだいは、迷惑をかけないように頑張ってみたりします

一方、乳幼児くらいのきょうだいは、例えば保育園に置いて行かれてしまうような分離不安があったり、なんとなくソワソワして遊びに集中できなかったり、食欲低下ということが起きてきます

カバさん
カバさん

今までの家庭のバランスが変わってしまうことで、自分が疎かにされている、自分だけ仲間外れにされていると感じたり、患児に対して「なんであいつばっかり」という怒り等、色々な気持ちが出てくるよ!

きょうだいがよくされる対応

なんとなくイライラしたり、攻撃的になっても、親から「あなたは元気なのだから、できて当たり前」と言われることもあります

また患児の付き添いで親が病院に行かなければならず、今までは親が送迎していたきょうだいの習い事が続けられなくなる等、きょうだいが大事にしていた場所から孤立してしまい、そこから怒りが湧いたり、それが孤立につながる悪循環もあると思います

状態に合わせた対応の仕方

自責が強い子

カバさん
カバさん

きょうだいは、色々な気持ちが湧いてきたり消えたり、最初から無関心のきょうだいもいたり、本当に様々だよ!

罪悪感や孤立感、何が起きているかわからない、患児と同じように見られてしまうという気持ちもあります

自分の将来への不安、嫉妬、恥ずかしさに加え、きょうだい喧嘩は絶対1回はあるので、患児が病気になったのは「やりすぎちゃったせいかな」「原因は自分ではないか」ときょうだいたちは、おそらく一瞬は感じることがあるのではないかと思います

できて当たり前のことが、患児はできないのに自分は普通にできてしまう、自分だけ仲間と楽しんでいる、患児は支援が必要な状況なのに自分は自由に出かけられることが、大人に近づいたきょうだいにとっては罪悪感につながっているのだと思います

対応の仕方

話し合う・説明する時間をしっかり設ける

このようなときはどのようにしたらいいか、実は患児もきょうだいもお互いを思い遣っているにも関わらず、意外とお互いの想いを言えていなかったりすることが多いので、話すきっかけやお互いの気持ちを分かち合える時間があると良いと思います

そして、家庭の中でわかっていると思っていても、実はきょうだいと共有できていない患児の情報があると思います

例えば手術をするような病気でない限りは、治療が終わると患児の見た目は問題なく見えるのに何故か生活が元に戻らないことは、きょうだいにとって理解できない状況が続くことになります

カバさん
カバさん

きょうだいの生活にどのような影響がある状況かを親がきょうだいに伝えよう!

孤立感

家族とも友達とも孤立していると感じる

患児ときょうだいが同じ小学校だったりするときょうだいに「(病気のことを)あまり言わないで」と言いたくなるのが親の本音だと思います

そうするときょうだいはなんとなくモヤモヤした気持ちになり、学校に行くとやはり患児について聞かれるので、どこまで言っていいのか、言ってはいけないのかと困惑することがあります

また患児は幼い年齢でも自分の病気のことや難しい薬の名前を覚えていて、周囲の大人は驚いたりしますが、きょうだいはそのような親と患児の話題に入れない孤立感を抱くこともあります

きょうだいは健康な自分に親の関心がなくなってきるのではないかという孤立感・孤独感や生活が今まで通りではなくなり、健康な仲間の集団から孤立し、自分の居場所がなくなると感じることもあると思います

対応の仕方

きょうだいのことも見ていること、今後どういう生活になりいつまで続くのかの目安を伝える

そのようなとき、親は治療が始まって最初の1〜2ヶ月は患児のことが心配で仕方ないと思いますが、ある程度治療の生活リズムが見えてきた段階で、きょうだいが今までやっていたけれど患児の入院によって中断されていたことを親が時間の分担・整理をして、その活動が再開・継続できるように考えてあげられると良いと思います

また、家庭が慌ただしい状況の中で、例えばきょうだいが宿題を今まで通りやっていることを「頑張っている」と見守ってもらうよう、きょうだいが所属している学校や保育の現場にお願いすると良いと思います

きょうだいが落ち着かない家庭の中にいることを見守るような理解が得られると、それだけで孤立感は薄れるでしょう

カバさん
カバさん

そして今がどのような状況で、両親が何をしなければいけないから今のような生活になっているという理由が、きょうだいに伝わると良いね!

きょうだいたちに、患児がどのような病気で何が行われているかということも必要な情報ですが、きょうだいはそれによって自分がどのような変化を受け入れなくてはいけないのかということが特に年齢の幼いきょうだいにとっては大事な情報になると思います

例えば、保育園の送迎が、おばあちゃんになるけれど、それが卒園するまで続くわけではないということが伝わると良いかもしれません

この複雑な感覚は「うんうん、あるある」と小児がんの子どものきょうだいだからというわけではなく、きょうだい同士だととても深く共感できるようです

そのようなきょうだい同志の繋がりは力になるのだろうなという場面によく遭遇します

患児を恥ずかしく思う

きょうだいは恥ずかしさもあります

カバさん
カバさん

きょうだいは学校等で「お兄ちゃん入院しているらしいね」と言われることに恥ずかしさや引け目を感じるよ!

患児の治療が終わり登校はできても通常の活動ができなかったり、手術痕や脱毛等、容貌の変化が見られることもあります

それでも患児たちは学校が大好きなので、できるだけ登校できるようにと私たちは準備します

カバさん
カバさん

だけど、患児の友人たちは年齢が幼いほど反応がストレートなので、患児本人には聞かないけれど、友達がきょうだいに事情を聞くことがよくあるよ!

またきょうだいが患児と一緒に外出したくないと思う気持ちがあるのは、大人は普通のことだと思いますが、きょうだいにとってはそれが罪悪感になってしまうこともあります

対応の仕方

カバさん
カバさん

そのようなときは、「そう言わずこうしましょう」という指導的な声かけよりも、「そのような気持ちは、あって良い」とその気持ちを認め、一緒に聞いてあげよう!

自分は今まで通りの仲間と同じように過ごして良いことがきょうだいに伝わり、言葉だけではなく実際に活動が続けられると、少し自信が持てるようになることが多いです

きょうだいの立場

集団の中で違う立場にならざるを得ない雰囲気を肌で感じ、それが孤立感や恥ずかしさでもある

周囲の大人はきょうだいのために費やす時間や人手よりも、病気や治療、入院生活の辛さがある患児に描かれる時間の方が長くなってしまいます

カバさん
カバさん

親は落ち着いてところで、できる限り一歩引いてきょうだいのことも平等に対応できると良いね!

将来への不安

小児がんの治癒率が上がった一方で、例えば晩期合併症によって長期的に在宅酸素が必要、服薬を長期に継続しなければならない場合もあります

ある程度の年齢になったきょうだいは「患児の世話は将来自分がしなければいけないのかな」と思うこともあるでしょう

他にも小学校高学年の兄弟に、母親から「(患児のことを)よろしくね」「困ったらお兄ちゃんの所に行くように言っているから」と言われると、しっかりしなくてはいけないとしみついてしまうこともあると思います

また、親は上の子どもが10歳で脳腫瘍になっていると、下の子どもが10歳の頃に頭が痛いと言われるととても心配になると思います

きょうだいも見えない病気ほど心配になり、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)があんなに大変だったから、もしかして・・・」と自分も患児と同じ病気になるのではないかと不安になるきょうだいもいます

自分がしっかりしないといけない、同じ病気になるかもしれない等不安が大きい

対応の仕方

カバさん
カバさん

大切なことは、きょうだいたちが心配になり「ねえねえ私も・・・」と聞かれた時に、彼らが知りたい情報を伝えることだよ!

また、学校に通う患児のことは学校と病院・親の中でできるだけ完結するように、そしてきょうだいは年齢相応の体験、それは「きょうだいとして」ではなく、例えば12歳であれば12歳が体験できることを優先してできると良いと思います

カバさん
カバさん

ただ、きょうだい自身がしっかりしなくてはいけないと思うことは決して悪いことだけではないよ!

小児がん経験者の方達だけでなく、きょうだいも医療関係、福祉関係、教育関係に進む方たちがとても多いことは、本当に心強いです

きょうだいに大切なこと

きょうだいの調査はいろいろありますが、10年〜15年前からあまり変わっていません

例えば病状と親子のコミュニケーションに関する調査によると、子どもの発病前の親子間のコミュニケーションが良いと発病後のコミュニケーションは変わらず維持できると言われています

一方、患児の状況があまりよくないと親は患児に集中してしまうので、きょうだいに意識を向けるパワーや時間が少なくなり、きょうだいたちはそれぞれわかるため親にあまり相談しなくなります

改めて患児の病状に関する情報はきょうだいにとっても大事ということが示されています

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