重症便秘の原因となる疾患

便秘は子どもにはよくあることのため、あまり重要視せずに放置している人も多いです

しかし、その便秘には重大な病気が隠れている可能性があります

この記事では、放置してはいけない便秘とそれを見つけるための方法を解説していきます

排便のメカニズム

私たちが食べたものは消化・吸収を受けながら腸管の蠕動運動によって直腸まで運ばれて、さらに骨盤の底部にある肛門挙筋、肛門括約筋などの筋肉群の弛緩と同時に腹圧が加わることで便として排泄されます

便秘症は子どもでは非常に頻度の高い病気ですが、その多くはこうした排便のメカニズムが壊れてしまっているわけではないです

カバさん
カバさん

時間はかかっても食事の注意やお薬・浣腸による排便の管理で改善が期待できるよ!

重症便秘の原因となる病気

重症便秘

しかしながら、頻度は少ないものの生まれつきこのような排便のメカニズムのどこかに問題があって重症便秘を呈し、手術をしなければ治らない病気や、現在でも確立した治療法がない病気があります

重症便秘の原因となる主な病気の中でも先天的な腸管蠕動障害は最も重症であり、そうした疾患を中心に重症便秘の原因疾患について述べます

ヒルシュスプルング病

腸管の蠕動運動が生まれつき障害される病気のうち、最も有名な病気はヒルシュスプルング病です

これは生下時より便が出ず、お腹が大きく膨らんで最終的には死に至る病気

ヒルシュスプルング病では肛門に続く直腸から一定の長さにわたって腸管の動きを制御する腸管壁内の神経節細胞が先天性に欠落しています

そのため腸管の内容物がそれより先に送られずに重症の便秘を起こします

約4分の3の症例では神経節細胞のない病気の腸管は直腸やS状結腸と呼ばれる大腸の下部にのみとどまりますが、5%程度の症例では全大腸から小腸の終わりの方まで広範囲に神経節細胞が欠落しています

ヒルシュスプルング病の治療

治療は、神経節細胞のない腸管を切除して、より口側の正常な腸管を肛門に引き下ろしてくる手術が必要

ヒルシュスプルング病の頻度は出生5000人に1人とされ、稀な病気ではありますが、重症の便秘が続く場合には念のため専門的な検査をして調べる必要があります

ヒルシュスプルング病類縁疾患

ヒルシュスプルング病とは別に、やはり生まれつき腸管の蠕動運動が障害される一連の病気があり、これらは「ヒルシュスプルング病類縁疾患」と呼ばれます

ヒルシュスプルング病では神経節細胞のない部分の腸管蠕動のみが障害されますが、類縁疾患では小腸・大腸の全腸にわたり蠕動運動が障害されます

カバさん
カバさん

手術や治療の方法は確立されていないよ!

これらの疾患は先天性で、新生児期から症状が出るものが多いのですが、ヒルシュスプルング病やその類縁疾患でも、乳児期の初めのうちなど便がちょこちょこ出ていることがあり、専門の医師が見ていても診断が遅れることは珍しくありません

鎖肛

以上述べたような腸管蠕動障害のほか、鎖肛と言って直腸肛門の形成不全で生まれた時には肛門が閉鎖している病気でも、手術により肛門を再建した後に重症の便秘を呈する場合があります

骨盤底部の筋肉群が弱かったり、手術で再建された肛門管が繊維化して柔軟性に乏してくて狭かったりなど、排便に関与する肛門のいろいろなメカニズムがうまく動かないことが原因です

肛門狭窄

また、生まれつき肛門が狭い病気(肛門狭窄)もあります

脊髄や脊髄神経の形成に問題があって、排便をコントロールする骨盤低部の筋肉群がうまく動かない場合も重症便秘を呈することがあります

カバさん
カバさん

そのほか甲状腺ホルモンが十分分泌されないなど、消化管や肛門以外の病気で頑固な便秘がなかなか改善しない場合もあるよ!

重症便秘で危険な症状

菌血症・敗血症

腸管の内容がきちんと下部腸管に送られて排泄されない状態では腸管内容の停滞が起こり、腸管は拡張します

停滞した腸管内容の中で細菌が増殖し、やがて腸管の壁を越えて体内に入り込み、血液に乗って身体中を細菌が回る菌血症という病態に移行します

さらに、細菌の毒素により重篤な敗血症から多臓器不全に陥り、致死的な経過をとることもあります

これは腸管蠕動障害など重症の便秘で時に見られ、診断の遅れは極めて危険です

遺糞症

菌血症・敗血症への移行ほどの緊急性はないものの、直腸やS状結腸の中で排泄されない便が糞石と言って石のように硬くなり、さらにそれが子どもの頭ほどの大きさに雪だるま式に大きくなる遺糞症という病態もあります

肛門管が狭い場合、それほど大きな糞石でなくてもラムネのガラス玉が瓶から出ないように直腸内から排泄されず、それを核に糞石が大きくなる場合があります

腸管内容の液体成分のみ糞石の周りから肛門管を通過して排泄されるので、一見、少量の下痢がチョロチョロ頻回に出ているように見える

一方お腹を触ると大きな硬い腫瘤が触れます

カバさん
カバさん

糞石が大きくなると、全身麻酔をかけて手術してこれを壊し摘出する必要があるよ!

早期発見・治療に繋げるには

早期に危険な症状・徴候に気づくために大事なことは排便のリズムや便の色、匂いなどをよく観察する

初めての赤ちゃんの場合など、どんな便が正常の便で、どのような排便パターンが正常であるのかよくわからないことも多いと思います

通常の赤ちゃんの便

基本的には赤ちゃんの便は黄色の泥状で、顆粒のようなものが混じることもあります

乳酸のために少し酸っぱい匂いがすることがあります

緑色の便は、腸の中に少し長い時間止まっていた便です

正常の排便のパターンでは1日に1回から数回、まとまって多量の便が出て、それ以外の時におむつを変えても排尿のみでお尻は綺麗になっています

危険な兆候

泥状の便で悪臭がある場合は、便の中で悪い細菌が増殖しており、菌血症や敗血症に移行する恐れのある危険な徴候です

便の色も膿のような緑灰色がかった色になります

排便の間隔が2日を越えたり、少量ずつ水や泥のような便が出る場合には何か病的な状態になっている可能性があります

腹部膨満

便が出ずに菌血症のような状態になると腹部膨満が著明になります

もともと子どものお腹はなだらかに膨らんだ形です

危険な徴候

・大きく膨らんで腹壁の浮腫のために皮膚が光った感じに見える
・ソーセージのように拡張した腸管の輪郭が腹壁を通して見える

このような場合には特に赤ちゃんでは元気がなくなり、ミルクの飲みも悪く、嘔吐も見られるようになります

カバさん
カバさん

子どもの元気や体重増加は健康状態をよく反映するため、元気がなくて体重増加が不良な場合には注意だね!

また、幼児や学童で下腹部に何か硬い鶏卵大より大きな塊を触れる場合、遺糞症を考えます

放置すれば腸内の糞石がますます大きくなり排便が止まってしまいますから、浣腸液などで糞石を軟らかくして、全身麻酔科での摘便をしてでも排出させることを考えなければなりません

危険な兆候を見つけたら

こうした重症便秘や危険な兆候を見た場合、専門的な検査や治療が必要かもしれません

ヒルシュスプルング病やその類縁疾患の診断を確定するためには、小児外科のある専門病院で、造影剤を用いた放射線検査や腸管の内圧検査、腸管組織を一部採取して顕微鏡で調べる病理検査などが必要です

まとめ

慢性便秘症は子どもで非常に頻度の高いものですが、重症な便秘を呈する症例の中に、多くは先天性のもので稀ではありますが、怖い疾患が隠れていることがあります

こうした疾患では菌血症・敗血症など命に関わる危険な病態を併発することがあり、悪臭のある緑灰色の便や腹部膨満で元気がないなど、早期に気づくべき危険な兆候があることを述べました

遺糞症や頑固な便秘が続く場合にはこうした危険な兆候がないまでも、たかが便秘と放置せずに、専門的検査の必要性や排便のコントロールなど、専門の小児科や小児外科の先生に相談することをお勧めします

(↓子どもの便秘のために作られているので参考にしてみてください)

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