支援をしていると、うんちの相談はたくさん受けます
その際には、どうして便の状態がそうなっているのかということを説明しなければ保護者は安心できません
この記事では、排便の種類とその意味、またホームケアの方法について解説していきます
治療より適切なアドバイスを
保護者が持つ子どものうんちの心配は、
・便の回数が多い、少ない
・排便時に唸っている
・綿棒浣腸はクセにならないか
・緑色の便が出た
と多岐にわたります
子育て支援に携わる者は、これらの心配事の一つ一つに応える必要がありますが、それは単に薬を使ったり、綿棒浣腸を指導してとりあえず排便させると言った「治療」をすることではありません
心配事の多くは、児の排便状態が保護者の正常排便のイメージと異なっていることの戸惑いからくるものです
支援者は赤ちゃんの生理的排便を理解して、正常排便とはどのようなものか、どうなったら医療機関を受診すべきなのかについて適切なアドバイスをする必要がある
乳児期正常排便のバリエーションを知る
多くの保護者は、健康な乳児では1日1回、やや軟らかめの便が出るものといったイメージを持っており、これから外れると何か病気が隠れているのではないかと不安になります
しかし、乳児期の排便にはバリエーションが多くあり、疾患のサインかどうかの判断基準は、
「きちんと体重が増えているか」
「出た便が硬くないか」
排便回数ではありません
まず、母子健康手帳の乳児の身長・体重増加のページに正確な月・日齢と身長・体重をプロットして増加曲線を作成し、体重増加を判断しよう!
生理的な排便頻度の減少
授乳方法による違い
健康な赤ちゃんは、母乳栄養の場合で生後1か月までは1日4回、多いと8〜9回排便します
人工栄養児ではこれより少なく1日平均1〜3回程度ですが、これは主に腸内細菌叢の栄養となるオリゴ糖含有量の違いによります
母乳には短鎖ガラクトオリゴ糖・長鎖フルクトオリゴ糖が9:1組成で含有されており軟便になります
近年の人工乳には、組成は多少異なるもののオリゴ糖が添加され人工栄養児の便もやや回数が増えて軟らかくなりました
成長に伴う減少
2か月
生後2か月を過ぎると排便回数は激減し、特に母乳栄養児では毎日でないことも起こります
これは母乳栄養児の37.4%に見られ、出ない時は6日間も出ないことがありますが、便自体は軟らかく体重の増加も問題はありません
3〜4か月
3〜4か月経つと、再びほぼ毎日の排便に戻ります
原因は不明ですが、母乳が効率よく吸収され、便の産生が少ないためとも言われます
一部にこれを「母乳性便秘」と称して、果汁摂取や綿棒浣腸を進めるものもありますが、これは母乳栄養児の生理的な現象であって便秘ではありません
児の健康に影響せず自然に軽快するものに対して治療は不要だけど、1週間以上排便のない時には他の疾患を否定するためにも受診を勧めてみよう!
乳児排便困難症
生後9か月未満の児が10分以上いきんでいるものの便が出ない、あるいは出たとしても軟便であり、特別な基礎疾患のないものが乳児排便困難症
排便時にいきんで腹圧をかけても肛門括約筋が協調して弛緩しないために排便ができないものですが、いずれは児がこの協調運動を習得するので3〜4週間で自然に改善します
生後1か月の児では3.9%に見られます
体重の増え方や飲み方に問題がないこと、排出された便が軟らかいことが確認できれば、便秘ではなく将来的にも心配のいるものではないことを伝えよう!
綿棒浣腸を指導されることがありますが、肛門への刺激は発達中の脳にとっては侵害刺激となります
また、その繰り返しによって肛門刺激がないと排便できない癖をつけてしまう可能性もありますので避けたほうが良いです
乳児排便困難症は問題のあるものではないが、直腸肛門の異常を否定するため、一度は受診を勧めます
硬い便が出ている時
出る便が硬く、排便困難を伴う時は便秘かもしれません
多くは基礎疾患のない機能性便秘ですが、特に乳児期発症のものについては基礎疾患を持つ可能性があり、注意しておきます
便秘のホームケア
家庭では便秘に対して様々なことが行われます
便秘への対応
脱水状態では便秘になりやすいのですが、便秘の児に水分を多く取らせても便秘は改善しないよ!
プロバイオティクスは腸内細菌叢を改善し、大腸pHを低下させて大腸の蠕動運動を活発化し便秘の改善につながる可能性があります
便秘の児では、食物繊維の摂取量が少なく、実際に食物繊維を多く摂取させて便秘が改善した報告もあります
しかし、便秘の児の多くは食物繊維の推奨量が摂取できません
乳製品を取らせる保護者も多いのですが、逆に牛乳を除去することで難治性便秘が劇的に改善したとの報告があります
牛乳アレルギーのある児では除去の有効性も期待されますが、家庭での自己判断は危険です
便秘の予防と早期治療
便秘には、予防と早期治療も重要です
幼児〜学童期の排便習慣について検討した報告では、起床時間が遅く朝の排便習慣が確立しないこと、朝食の米飯摂取と夕食時の副菜摂取が少ないことが便秘に繋がりやすいことが示されています
乳児は本能的に苦味のある野菜を嫌うので、離乳食期から粘り強く野菜に慣れさせる必要があるね!
また、幼児〜学童期に早起きを習慣づけることも大切でしょう
排便時の痛みや出血への対応
排便時に痛みや出血をきたす児は要注意です
高齢者のような出血(痔)に対する局所治療は不要で、むしろ原因(便秘)に目を向けて早期の診断・維持治療を勧めます
便秘の悪循環、難治化は排便時の痛み・出血によって排便を我慢することに始まる
乳幼児期の慢性下痢
2週間以上続く下痢を慢性下痢症としますが、発症時期によって病因が異なります
生後1か月未満
生後1か月未満に発症するものは重症で、遺伝的なものや吸収不良症候群である場合が多く、注意が必要です
1か月を過ぎると小児の機能性下痢症や胃腸炎後の吸収不良が伴う下痢症、食物アレルギーに関わるものが多くを占めてきます
いずれも身長・体重増加と血便の有無が受診の目安になるよ!
機能性下痢症
生後6か月から5歳までに多く、1日4回以上の慢性下痢が4週間以上続きますが、腹痛はなく栄養状態や体重増加も良好
1〜3歳児の6.4%に見られ、便は軟便〜水様便になります
便中には粘液や未消化物が見られることも多く、保護者は栄養が摂取できていないのではと心配しますが、腸管通過速度が早く、小腸運動が未成熟なことによると考えられています
脂肪摂取が少ない場合や果糖やソルビトールの多いフルーツジュース、清涼飲料水の摂取過剰が発症要因・増悪因子となりますので、これらの摂取を控えてもらいます
3〜4週間で自然に治癒するため特別な治療は要りませんが、保護者の不安は強いため、健康に害のあるものでないこと、成熟に伴って改善することを十分説明します
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