【支援者向け】発達障害がある親への支援のコツ

子育て支援において、コミュニケーションの取りにくさや独特のこだわりなどから保護者の発達特性に気づくことがあります

保護者の発達特性は、育児困難や育児ストレスにつながるだけでなく、養育不全に至るリスク因子であると言われていますが、どのように対応すれば良いのか戸惑う支援者は少なくありません

こうした発達障害が疑われる保護者の育児困難への支援について解説していきます

この記事がおすすめな人

・子育て支援に携わっている人
・保護者が発達障害の場合の対応について知りたい人

大人の発達障害

発達障害とは

発達障害は
「発達期早期、しばしば小中学校入学前に明らかとなり、個人的、社会的、学業、または職業における機能の障害を引き起こす発達の欠陥により特徴付けられる」
ものと定義されています

発達障害の種類

広義の発達障害には、
・知的能力障害(知的障害)
・自閉スペクトラム症(ASD)
・注意欠如/多動症(ADHD)
・限局性学習障害
・発達性協調運動症
などがあります

このうち、育児困難に繋がりやすいことが指摘されているのは
知的能力障害・ASD・ADHD
ですが、今回は特にASDとADHDについて解説します

発達障害の診断

カバさん
カバさん

成人の有病率はASD1〜2%、ADHD2.5%程度との報告があるよ!

しかし、一般集団においてASD特性やADHD特性は軽度から重度まで幅広く連続して分布しており、診断の境界はあいまいです

発達特性があっても社会生活に適応できている場合はあまり問題にならない

それらが累積して本人の生きづらさや困難感につながるかどうか、生育歴も含めた総合的な見立てから診断に至ると考えられます

カバさん
カバさん

またASDとADHDは併存していることが多いよ!

発達障害のある保護者が支援につながる経路

保護者が支援機関につながるパターンは主に以下の4つが考えられます

①自分の発達特性に悩んでいる

1つ目は保護者自身が自分の発達特性に悩んでいる場合です

幼少期に発達障害と診断されていたり、情報に触れる中で発達障害を疑ったりして医療機関や相談機関を訪れます

②精神疾患を合併している

2つ目は保護者が発達障害以外の精神的な問題で受診し、発達障害が明らかになる場合です

発達障害に精神疾患の合併を認めると養育不全リスクがさらに高まることが指摘されています

③子どもが発達障害

3つ目は子どもが発達障害などで小児科や児童精神科にかかっていて、診断や対応法を検討するために、子どもの発達特性を疑うようなエピソードを詳しく聞き取る中で、保護者が自身の発達特性に気づく場合です

④育児相談の中で

そして4つ目は、小児科医、産婦人科医、保健師などが保護者から育児相談を受け、困りごとを聞き取っているうちに保護者の発達特性が明らかになる場合です

育児支援で重要なこと

どのようなパターンで支援機関につながるにしても、育児支援で最も重要なのは
保護者の発達障害を診断・確定することではなく、その人が何に困っていて、どう支援すれば問題が解決できるのかという視点を持つことです

発達特性が背後にあるかもしれないことをきちんと見立てつつ、保護者の困りごとに具体的に対応する

発達特性のある保護者の育児困難

育児困難になりやすい理由

発達特性があると、予想外の出来事への対応が苦手

子どもは、突然体調不良を起こしたり不慮の事故に遭ったりします

つまり日々の見通しが立ちにくく予想外の出来事の連続です

そして常に時間が足りないため、いくつかの作業を並行して行わなければならず、臨機応変さも求められます

また、子どもは育児書通りに育つわけではなく、その子の成長発達のペースに合わせて対応することが必要です

さらに子どもが小さいうちは、どうしても子ども中心の生活にならざるを得ず、これまでのライフスタイルの変更を求められます

発達特性のある保護者の多くは、このような状況に置かれることをそもそも苦手とします

カバさん
カバさん

発達障害の種類によって困難さも違ってくるよ!

ASD特性による育児困難

ASDでは
・社会コミュニケーションの困難さ
・物事へのこだわり
・小さな変化に対する極度の苦痛
・感覚刺激に対する過敏や鈍磨
といった発達特性が見られます

コミュニケーション

社会的コミュニケーションの困難さがあると、
・育児書の内容や医療者の育児指導を字義通りに捉えてしまう
・曖昧な表現をうまく理解できない
・支援者から批判的な態度を取られたと受け取ってしまうと必要なサポートから遠のいてしまう
・他者との情報交換がうまくできない
・困り事や心配事があっても適切に相談できず孤立してしまう
などの可能性も考えられます

こだわり

妊娠・出産・育児への独特のこだわりは、良い生活習慣の基盤となることもある一方、医学的な問題が懸念される場合もあります

見通しが立たないことや突発的な出来事に対応しきれず非常に混乱するかもしれません

感覚刺激に対する過敏や鈍磨があると、見通しのたたない乳児の鳴き声に強いストレスを感じるかもしれません

ADHD特性による育児困難

ADHDでは不注意多動性・衝動性の発達特性が見られます

不注意

・スケジュールの管理がうまくできず予防接種や乳幼児健診などの予定を忘れてしまう
・物事を順序立てて行うことが苦手で育児や家事を要領よくこなすことができない
・心に余裕がなくなると、注意力がより散漫になり、子どもの突発的な行動に注意が向けられずに不慮の事故につながるリスクがある

多動性・衝動性

・深く考えないで発言または行動してしまい、余裕のある計画が立てられず用事を詰め込んでしまう
・思い通りにいかないと子どもやパートナーに対して感情を爆発させてしまい、それが積み重なっていくと養育不全や児童虐待につながる

気になる保護者にはまず何をすれば良いか

違和感を大切にする

カバさん
カバさん

通常の育児支援を行う中で保護者の態度や様子に違和感を持つ場面があるよね!

例えば面談に何度も遅刻してきたり、乳幼児健診を全く受けていなかったり、会話が噛み合わなかったりすると、「なんとなく気になる」と感じるでしょう

見立てを行う

「なんとなく気になる」保護者を支援に繋げるには、
「〇〇が気になる」
という形できちんと言語化して、保護者の見立てを行うことが大切です

カバさん
カバさん

それが多職種による連携や切れ目のない支援につながるよ!

見立てる時のコツ

見立てる時の検討事項

・問題の特定
・その問題がどのくらい心理的苦痛や生活不全をもたらしているのか
・どのようなリスク要因がその問題を引き起こし、持続させているのか

その際には、保護者のできないことばかりに目を向けるのではなく、保護者自身や子どもの強み、パートナーのサポート体制などの環境因子を探ることも重要です

また、保護者や家族が問題をどのように考え、どうなることを期待しているかを知るのは、相手が求めている支援を提供する上で不可欠です

支援の対応や工夫

保護者が抱える育児困難の背景に発達特性の関与が疑われた場合は、それぞれの特性に応じた支援を行います

心がけること

発達特性に配慮しつつ、保護者が困っていることに具体的に対応しサポートする

ASD特性への育児支援

社会的コミュニケーションの困難さ

比喩などの曖昧な表現は使わず、具体的に伝える

また、耳よりも目からの情報の方が理解しやすい傾向があるため、図や写真を用いた視覚的な支援が有効かもしれません

後から見返せるようにパンフレット等にすると実際の育児場面でも保護者の手助けになります

カバさん
カバさん

こうした支援の方法は発達障害を持たない保護者にも役立つね!

物事へのこだわり

こだわりの内容と程度によっては、子どもに害を及ぼしたり家族の生活に支障をきたしたりする恐れがあるため注意が必要ですが、こだわりを容易に否定すると保護者との関係が壊れかねません

カバさん
カバさん

ASD特性を持つ人は白黒はっきりつけたがる傾向があり、対人関係においても敵か味方かということに敏感なこともあるよ!

そのため、対応する際は十分な傾聴を心がけ
この支援者は私の味方である
と最初に認識してもらえると、その後の支援につながりやすくなるでしょう

特性を理解した上で、こだわりが子どもに悪影響を及ぼさず家族の生活にも問題がない場合は、保護者の気持ちを尊重する

一方で医学的な問題が懸念される場合は、そのリスクを保護者と家族に伝えて認識してもらうことが必要です

小さな変化に対する極度の苦痛

育児書通りに子どもが成長発達しないことに強いストレスを感じている時は、まず日頃の育児の努力を労った上で、成長発達には幅があることを伝えると良いでしょう

子どもに生じやすい体調不良や変化をまとめた資料を紹介したり、相談のタイミングや相談先を具体的に示すことも有用です

ADHD特性への育児支援

不注意

予防接種や乳幼児健診の前日・当日にリマインドの連絡をする、子どもの発達段階に合わせて事故予防のポイントを明確に伝える、など丁寧な対応が求められます

カバさん
カバさん

家庭訪問をして子育て状況を一緒に確認し、その場で対策を講じるのも効果的だよ!

多動性・衝動性

多動性が強い場合は、その特性を保護者やパートナーと再認識・共有した上で生活に優先順位をつけることをアドバイスしたり、余裕を持って計画を立てられるように手助けできると良いでしょう

衝動性が強い場合は、ペアレントトレーニング(子どもの望ましい行動は積極的に褒めることで増やし、望ましくない行動には注目しないことで減らす)を紹介し、保護者が一貫した姿勢で子どもに関われるよう支援するのも良いでしょう

ペアレントトレーニングについてより詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください↓
「【支援者向け】最新のペアレント・トレーニング事情」

まとめ

今回は発達障害が疑われる親への支援のコツを解説してきました

今回の記事の要点をまとめると、以下の2点があります

まとめ

①発達障害のある保護者は育児困難に繋がりやすい
②できないことを指導するのではなく、発達特性に合わせた困りごとへの解決方法を具体的に提案する

具体的な支援の仕方を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください↓

「【支援者向け】発達障害がある親への支援の具体例10選」

また、養育不全や児童虐待を未然に防ぐために、必要に応じて児童相談所などの関係機関と連携をとることも重要です

保護者に発達障害や精神疾患があっても、常に周りに助けてくれる人がいるという意識の中で安心して育児ができるように、早期から地域の多職種と積極的に連携して、包括的な支援を行うことが重要だと思います

また、ハイリスクなケースへの支援の仕方について、より知識を高めていきたい方はこちらを参考にしてください↓

「【支援者向け】ハイリスク妊婦に必要不可欠な多職種協働のコツ」
「【支援者向け】社会的ハイリスク妊婦の現状と支援のコツ」

また、より良い支援をするには、支援する力を伸ばしていくことが大切です

支援者としての個人の力を伸ばす・より力を発揮できる場所で働くという点では転職を考えてみるのも一つの方法です↓(保健師の求人も多くおすすめです)
あなたの”理想の職場”が見つかる!【ジョブデポ看護師】 

転職活動に対して踏み切れない人も多いですが、迷っている時間の分だけ人生の時間を損していることになります

無料で登録しておくだけでも、人生の選択肢を一つ増やしておくことができると思うのでぜひ登録してみてください

この記事が、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいです

最後までご覧いただきありがとうございました

コメント