母子保健に関わる方の多くが、子どもの貧困に心を痛め、「私にできることがあればしたい」と考えていると思います
しかし「子どもの貧困は見えにくい」「気づいてもどうしたらいいかわからない」という声も聞かれます
この記事では、どうしたら見えるようになるか、何ができるかを解説していきます
貧困と乳児死亡率の関係
貧困が子どもの健康に影響していることが明らかになってきました
乳児死亡率は1000に対し1.8と世界でもトップクラスに低いのですが、最も低い常用勤労Ⅱ(従業者百人以上)と比べると無職では16倍の死亡率です
貧困は赤ちゃんの命にも大きく影響しているね!
貧困対策は健康づくりという視点からも重要な課題です
どう気付くか
貧困親子の困難
貧困な親子は様々な困難(知的障害、発達障害、DV、虐待、外国人、ひとり親、若年出産、非正規雇用など)も抱えています
また、親自身が育ちそびれている部分があったり、気持ちの余裕がなかったりするため、「困った親」「問題のある家庭」という姿で、私たちの前に現れることが多いのです
陰性感情や違和感がセンサーに
そうした方達に接した時に私たちに生じる「この人嫌だなあ」「イラっとする」などといった陰性感情やちょっとした違和感が、困難に気付くためのセンサーになります
そしてそれをスタッフで共有し、「貧困もあるのでは?」という視点も加えてその親と接していると、大抵貧困も抱えています
医療者や母子保健に関わる専門職は、基礎情報としてある程度の家庭状況を把握できることも多く、気付きやすい立場にあるね!
どう支援するか
①気軽に相談できる存在であること
何か困りごとがあった時、誰に相談すればいいのか、そもそも相談に値することなのか、当人にはよくわからない場合があるよ!
多くのお母さんはママ友や自分の親に相談しますが、貧困層はそういう繋がりがなく、さらに自分の親との関係が悪いことが多いのです
しかし、子育て世帯にとって医療機関はよく行く場所です。
そこで病気のこと以外も相談できるなら、敷居の低い相談先になります
自治体の保健師さんなども健診等でお母さんとよく顔を合わせている場合が多いですから、「なんでも相談に乗るからね」と声をかけていただければと思います
なかなか相談してくれない場合も多いけど、そういう姿勢を示し続けることが大事だね!
②生活保護に関して
経済的に困窮している場合には、生活保護の検討が必要です
申請への課題
残念ながら生活保護の窓口は「なるべく生活保護を受けさせない」という姿勢でいることが多く、窓口で「若いんだから仕事しなさい」などと言われて、親が「二度とあんなところには行かない」となってしまう場合があります
そこで、「支援団体に繋いでそこの支援者と一緒に申請に行ってもらうように」と伝えることが良いです
自治体の保健師さんの場合は直接うまく繋げる方法があればぜひお願いしたいと思います
生活保護のイメージへの課題
日本の生活保護は制度として利用しにくく、また政府やマスコミがネガティブキャンペーンをしてきたため「生活保護は恥」という意識を持つ人が多く、「生活保護だけは嫌」と自殺するなどといった事態も生まれています
母子保健に関わる立場から、セーフティネットとしての機能を果たせるように、その在り方を見直すような発信もしていただけたらと思います
「恥ずかしい」と躊躇する人に「あなたとお子さんの生活を守るためだから胸を張って利用しましょう」と背中を押してあげよう!
③自己肯定感を高める支援
自己肯定感は逆境に屈せず貧困から抜け出す原動力になると言われますが、貧困を抱えた親子は自己肯定感が低いよ!
「困った人」と見えてしまい、本人も自分はダメな人間だと思っています
実はどんな親でもどんな子でも必ず頑張っているところがあるが、本人はそのことに気づいていない
私たちが、彼らの話をよく聞いて「ここで頑張ったね」と指摘することで、
「自分が少しは頑張ったのだ」
という事実に気づけば、それはほんのわずかですが自己肯定感を高めることになり、前に向かうエネルギーになると思うのです
ダメな支援
専門職は「指導とは、あるべき姿に比べて足りない点を指摘すること」と思っていることがあります
100点を基準にするとどんなに頑張っても常にマイナス評価となり、頑張っているところが見えません
逆に0点を基準にすれば大抵のことはプラスに評価できるね!
「褒める」という言葉は「おだてる」というニュアンスで使われることもありますが、おだてるのではなく、「不十分だけど、ここまではやった」という正確な自己認識ができることが必要です
多くの親子は事実頑張っているので、そのことに気づいて貰おう!
そういう信頼関係ができれば「保健師さんは何かあったら力になってくれる」と思ってくれます
いざという時に相談先があるということ自体が、彼らにとって大きな支えになる
④「燃え尽きない」スキル
「気になる子カンファレンス」で話し合っていると、当初の陰性感情や違和感は「そんな事情なら無理はない」という納得や「あのお母さんそんなに頑張ってたのか」という感動に変わることがよくあります
しかし、暴言を浴びせられ、顔も見たくない気持ちになってしまうこともあります
そんな時に燃え尽きないようにするのも、私たちに必要なスキルだね!
対処法
対応としては、そういう気持ちになってしまうことをスタッフと共有する、好きになれなくても仕事として割り切る、場合によっては担当を変わる、などでしょうか
心理士や精神科のサポートが有効な場合もあります
私たち自身も気軽にSOSを出す必要があるね!
⑤地域の取り組みを把握して紹介する
子ども食堂・無料塾・フードバンク・物資支援なども各地で行われています
専門職には、地域の取り組みの情報を持っていて、必要な人に紹介していくという役割もあると思います
⑥貧困そのものを無くすために
しかし、こうした支援で貧困がなくなるわけではありません
貧困そのものを無くすために何が必要なのか、それは雇用・税制・社会保障・教育などの在り方を変えるということになります
母子保健という視点から見てどうあるべきかという提言なども求められます
おわりに
ここにあげたことの多くは、実は皆さんが普段行っていることだと思います
日常の母子保健活動を丁寧に行っていくことが貧困支援にもなり、そこに「貧困もあるのでは」という視点を加えることで、より有効な支援医なっていくと思います
また、支援者としての個人の力を伸ばす・より力を発揮できる場所で働くという点では転職を考えてみるのも一つの方法です↓(保健師の求人も多くおすすめです)
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