乳幼児期は大きく気にしていなくても、年齢が上がるにつれ、だんだん成人期への移行をどうしていったら良いかと悩む方は多いです
この記事では、成人移行支援とは何なのかから移行の必要性や方法について説明していきます
成人移行支援とは
医療の進歩により、多くの子どもの命が救われる様になった一方で、小児慢性特定疾病を抱えながら成人する患者が増えてきています
ところが小児診療の医師は成人期特有の高血圧や癌などの合併症の診療経験が少なく、「大人になった患者」への対応に困ることが多いよ!
「移行期」=「トランジション」とは小児診療から成人診療へと移り変わる段階のことを指し、そこでなされる医療を「移行期医療」=「トランジション医療」と呼びます
しかし、「移行期」という言葉はある特定の時期を指すという誤解が生じてしまいがちであること、患者ごとにその時期は異なることから、「移行期医療」ではなく、「成人移行支援」と呼ぶことが推奨されています
成人移行支援の二つの側面
成人移行支援には、以下の二つの側面があります。
Ⅰ.患者主体の成人診療への移行支援
・年齢に見合ったヘルスリテラシーの獲得
・メンタルヘルスの維持
・家族、親子関係の成長の支援
・本来の能力に見合った就学・就労支援
Ⅱ.診療連携の調整・支援
ⅠもⅡもどちらも重要ですが、実際に困ってしまうのはⅡかもしれません
しかし、Ⅰが蔑ろのままでは、決して成人診療科への移行がうまくいきません
ヘルスリテラシーとは、子ども自身が自分の疾病を子どもなりに理解し、症状や自分の気持ちに気付きコントロールする力を指します
ヘルスリテラシーの獲得を支援することが成人移行支援の中心で、成人診療科への転科はあくまでも結果の一つ
ただ、現実的に成人化への移行が難しい場合も多く経験します
その場合でも、
・家族との話し合いの場を持つ
・患者一人一人にとって最も適切な医療は、どこで誰が行うべきなのかを一緒に考える
・サスティナビリティのある成人診療ネットワークへの移行を念頭に置く
ことで、家族の将来への不安を解決する必要があります
成人移行支援とは、その患者にとっての最善の医療を求めていくことだね!
小慢を持つ乳幼児への支援
乳幼児期には成人移行支援として必須のものはありません
家族のヘルスリテラシーの獲得
患者本人のヘルスリテラシーの獲得の前に、家族自身がヘルスリテラシーを獲得しよう!
本人には概ね10歳以降から少しずつそういった教育を始めていき、疾病に関する理解を進めます
しかしその前に、小児慢性特定疾病とそれに関する様々な情報を、家族が正しく理解している必要があります
ヘルスリテラシーの獲得への課題
自分の子どもに難しい疾病名を告げられた時、ほとんどの親は気が動転します。
その中で聞いた医師の話など、覚えていないのが普通です。
その後、インターネットなどで検索して、正しい知識を得られればいいのですが、SNSなどで科学的根拠のない書き込みにあたってしまい、正しくない情報に触れることがあります
乳幼児期に重要なことは、家族が正しい知識を得ることだよ!
必要な知識
疾病の遺伝形式から始まり、その発祥のメカニズム、診断方法、現在推奨されている治療など、日常の生活に関係しないことでも徹底的に調べる
当然、医学書は高度な記載がされていて、理解が難しいと思います。
その際は医療者に質問をして、理解を深めます
患者会の勉強会などに参加するのも正しい知識を得る場となります
また、医療体制や診療報酬状の問題点に関しても、家族だからこそ知っていただきたいと考えています
そうすれば、子どもが10歳を超えてヘルスリテラシーを身につける段階に入ったときに、家族がきちんと指導できるね!
患者と家族の不安に対するQ&A
国立成育医療研究センターでは、「成人移行支援に関する考え方」がホームページにのっています
その一部を、小児慢性特定疾病用に少し改変して記載します
小児の先生に継続してみてもらえない?
Q.小児診療の先生にはずっとお世話になってきました。
これからもずっと見ていただくわけにはいきませんか?
A.現代の医療システムでは、小児診療の医師だけで「ずっと診ていく」ということが実現困難
医学の進歩で多くの子たちを救命できる様になった反面、元疾患やその合併症を保ちつつ成人になる患者が増え、出産を含む成人としての健康管理や、小児では馴染みのない成人病への対応が一層重要になってきました。
そうした課題に対しては、成人を専門に診療している診療科の方がより良い医療を提供できます。
特に小児科医は小児診療に特化してきており、成人期の診療をしたいと考えても確信を持って行える状況ではありません
患者にとっての最善の利益を求める
そのためには、成人期を迎えた患者一人一人にとって
・最も適切な医療は何か
・どこで誰がどの部分の診療を担うべきなのか
を患者や家族と一緒に真剣に考えていきましょう
成人の先生が小慢を診療できる?
Q.成人診療科に小児慢性特定疾病を診療できる先生はいないのではありませんか?
A.小児慢性特定疾病をお持ちの患者は、小児医療機関と成人医療機関の両方で分担して診療していくこともある
それは、その様な疾患に詳しい成人診療科の医師がいないからです。
一部の小児慢性特定疾病に関しては、基本的には小児診療の主治医が司令塔になり、関係する成人診療科と連携をとって成人期の診療を継続すべきと考えています
つまり、小児診療の医師としてではなく「疾病」の専門医として、主治医としてではなくコンサル医として、関わりを継続するんだね!
日々の治療は、投薬を含め、成人診療科のかかりつけ医が小児診療の医師に緊密に相談しながら診療を行い、入院し、小児診療の医師がコンサルトを受けるという形が望まれますので、あらかじめ、そう言った連携を行う準備もしておかなければなりません
年齢で区切られる?
Q.小児診療ではある年齢以上の患者は見ないということですか?
A.医療者、患者、家族が一緒に、現在そして将来の病状を考え、最適な診療ができる場所を考えていく
病状がまだ安定しておらず、小児診療で継続することが適切であると判断した場合は、そのまま診療を継続することもあります
ある年齢以上の継続診療は行わないという意味ではないよ!
しかし、より年齢が上がれば、いずれは成人診療の必要性は増してきます。
そして、成人診療科での診療の必要性を常に検討していくことは、医療側・患者側双方で取り組むべきことだと考えています。
その結果、当初は上記の様に小児診療の継続が選択された場合でも、次第に病状や家族状況の変化によって、状況が変わることも考えられます。
成人移行の準備は何する?
Q.成人年齢に近づく前から成人以降のための準備を行うと聞きますが、どのようなものですか。早すぎませんか?
A.子ども自身が自分の病気を子どもなりに理解し、症状や自分の気持ちに気づきコントロールする力(ヘルスリテラシー)の獲得を支援することが成人移行支援の中心
成人診療科への転科は移行支援の目的ではなく、単なる結果です
より重要なことは、子どもが大人になり、自分で診療科を選び、自分で受診することができる様になること
そのゴールに向けたヘルスリテラシー獲得に向けた取り組みが重要です。
確かに小児慢性特定疾病をお持ちの患者の成人診療科への転科は困難なことがあり、前述の通り、小児診療の医師との関わりが継続することもあります
しかし、ヘルスリテラシーの獲得がないがしろにされてはいけません
まずは、自分の病気の病名が言えるのか、どういった病気であるか言えるか、飲んでいる薬があれば、その名前や作用が言えるか、から始めよう!
意外に多いのが、病名を知らない子ども達です。
話をしてみると、「何か、聞いちゃいけないのかと思っていた」「知らなくてもいいって言われた」と子どもたちは答えます。
薬や特殊ミルクに関しては、「飲めと言われているから飲んでいる」が多いようです
10歳を超えた頃から、疾患に関する教育を始め、診察室では状況を自分で話せるようにし、服薬の意味を考えながら薬を自己管理するようにしていきます
それがヘルスリテラシー獲得の第一歩です
障害が重くても移行は必要?
Q.うちの子は障害が重いのですが、それでも成人移行支援は必要ですか?
A.重症で寝たきりに近い患者の場合、在宅診療医をキーステーションにしていくと、成人診療科への移行がうまくいく
在宅診療医導入前は、様々な物品をもらい、カニューレを交換するために、毎月大きな病院に受診していたと思いますが、在宅診療医を導入すると、それが不要になります
しかも在宅診療医の先生は、成人の医療機関と強く連携していますので、肺炎などに罹患した際に大きな総合病院に入院させてもらえます
専門的な治療に関しては小児診療の主治医がコンサルトを受けつつ、成人診療科で治療する体制が組みやすくなります
ただ、現時点ではなかなか在宅診療医の先生が見つからない場合もあるよ!
まとめ
成人移行支援とは、決して小児診療の病院や医師が困っているなどの理由で患者を小児診療から追い出すことではありません
患者一人一人にとって最も適切な医療は何であるか、どこで誰が診療を担うべきなのか、それらを患者ら家族と一緒に真剣に考え、その患者にとっての最善の医療を求めていくことです
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