双胎妊娠では、子宮容量が増大するため早産や妊娠高血圧症候群の合併頻度が増加します
また、児への鉄分などの需要が増加するため、母体は貧血になりやすく、子宮壁も過度に伸展されるため分娩後の弛緩出血をきたしやすいです
このように双胎妊娠では単胎妊娠に比べ種々の医学的トラブルを起こしやすく、周産期リスクが高いです
しかし、適切に管理することにより対応が可能です
リスクの高い特殊な病態を中心に、双胎特有の医学的トラブルとその分娩管理の留意点について説明します
双胎の種類
双胎の分類には卵性(受精卵)と膜性(絨毛膜・羊膜)があります
卵性
卵性は受精卵の数による分類で、受精卵が1つから2つに分かれた場合は一卵性、最初から2つの受精卵によるのが二卵性
二卵性のゲノムは通常の兄弟姉妹の関係ですが、一卵性はゲノムがまったく同じであり、遺伝学的には卵性が問題となります
膜性
周産期学的には膜性が問題となります
双胎で胎盤(絨毛膜)が1つか2つか、胎盤(絨毛膜)が1つの場合はその間は羊膜で仕切りがあるかどうか
すなわち「一絨毛膜一羊膜」「一絨毛膜二羊膜」「二絨毛膜二羊膜」に分類されます。
妊娠14週までに超音波検査で膜性診断がなされます
双胎の周産期リスクは一絨毛膜ほど、また一羊膜ほど高くなる
双胎妊娠を管理する場合は、まずこの膜性をしっかり把握することが重要だね!
しかし、これらの病態に対しては胎児治療という治療の選択肢があり、予後の改善が期待できます
双胎間輸血症候群
一絨毛膜双胎は、双胎で1つの胎盤を共有しているため、両児間に胎盤血管の吻合が存在します
胎盤の吻合血管により双胎間に血流の不均衡が起こり、引き起こされる病態を双胎間輸血症候群と言い、一絨毛膜双胎の約10%に見られる
妊娠中期に発症した場合は児の死亡率が極めて高く、また生存しても脳神経障害を残すという極めて予後不良な疾患です
供血児と受血児
吻合血管を通して血液を送る方を供血児と言い、血液をもらう方を受血児と言います
供血児 | 循環血液量が減少 | 貧血、低血圧、乏尿、羊水過少、胎児発育不全 |
受血児 | 循環血液量が増加 | 多血、高血圧、多尿、用水過多、心不全 |
進行すると両児ともに胎児水腫から胎児死亡に至ります
診断
双胎間輸血症候群は超音波検査で羊水の過小過多によって診断されます
すなわち、一児(供血児)に羊水過少(最大羊水深度2cm以下)を認め、他児(受血児)に羊水過多(最大羊水深度8cm以上)を認める場合に双胎間輸血症候群と診断されます
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術
双胎間輸血症候群は、双胎間の胎盤の吻合血管によって起こるため、胎盤吻合血管を遮断して両児の胎盤血流の交流を途絶すれば病態は改善する
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術は子宮内の羊水腔(受血児の羊水過多腔)へ胎児鏡を挿入し、胎盤吻合血管を全てレーザーで凝固・遮断して両児間の血流不均衡を是正する胎児療法です
すなわち一絨毛膜双胎を二絨毛膜双胎にする治療法だね!
手術の適応
胎児鏡下レーザー凝固術の適応の原則は、妊娠16週から26週未満の双胎間輸血症候群です
26週以上28週未満の双胎間輸血症候群で受血児の羊水過多が最大羊水深度10cm以上の場合と、一児胎児発育不全で小さい児に羊水過小と血流異常を認める場合も手術適応としています
現在、胎児鏡下レーザー凝固術は双胎間輸血症候群の第一選択治療法となっています。
2012年4月より保険収載されました。
高度な技術と判断が要求される手術だから、国立成育医療研究センターなど限られた施設でのみ施行されているよ!
術後合併症
術後合併症で一番問題となるのは流早産
術後の平均分娩週数は妊娠33週で、二児生存率は約70%、少なくとも一児生存率は約95%です
妊娠管理の注意点
妊婦健診
単胎と異なり、一絨毛膜双胎では妊娠16週以降、二絨毛膜双胎でも妊娠24週以降、2週間ごとに妊婦健診と超音波検査が行われます
特に一絨毛膜双胎はハイリスクなため、ハイリスク新生児の管理が可能な周産期センターなどで管理されます
多胎妊婦の支援の要点は、医学的トラブルを早期に見つけられるように注意することだね!
トラブルを早期発見するために
妊娠経過とともに腹部は増大し、妊娠後期には母体への負担が著明に増加します
特に体の小さい妊婦さんでは負担が大きくなります
以下のケース以外は、あまり神経質にならないように、変化を捉えるようにしましょう
分娩管理
双胎の周産期死亡率は妊娠37〜38週で最も低く、その後は増加します
だから妊娠37〜38週で計画分娩や帝王切開が行われるんだね!
新生児呼吸合併症の観点からは妊娠38週が望まれますが、妊娠38週に予定するとその前に緊急帝王切開となる可能性は増加します
第一子が頭位であれば経膣分娩が選択可能ですが、頭位ー頭位を経膣分娩選択の要件としている施設も多く、分娩方法は施設の方針に従うことが重要です
一絨毛膜一羊膜双胎
臍帯相互巻絡
一絨毛膜一羊膜双胎では両児を隔てる羊膜がないため、両児の臍帯が絡み合う臍帯相互巻絡が起こりやすいです
一絨毛膜一羊膜双胎の周産期死亡率は一絨毛膜二羊膜双胎と比して高く、その主な原因は臍帯相互巻絡です
子宮内胎児死亡率は妊娠30〜32週で最も低く、その後増加すると言われています
臍帯相互巻絡による胎児死亡は予知できないので、児の未熟性を考慮して妊娠32〜34週で帝王切開分娩が行われるよ!
双胎一児死亡
二絨毛膜双胎の場合は、一児が死亡しても生存児との血流移動がないので、生存児への影響は少なくなります
一絨毛膜双胎の場合は、一児が死亡すると、1つの胎盤を共有しているため、胎盤吻合血管を介して生存児から死亡児への急速な血流移動が起こる
そのため、生存児が重篤な低血圧や貧血となり、胎児死亡や脳神経障害をきたします
一絨毛膜双胎で一児死亡をきたした場合のもう一児が健全に生存するのは約50%で、約50%は死亡または脳神経障害となります
双胎一児死亡の場合、急速逸娩は生存児の予後を改善しないとされており、早期に娩出はしないよ!
母体の播種性血管内(血液)凝固症候群と生存児のwell-beingに注意しながら待機的管理を行います
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