2021年4月1日に産後ケアを市町村の努力義務とする「母子保健法の一部を改正する法律」が施行され、産後における母子への、よりきめ細やかな支援が全ての地方自治体に求められるようになりました
産前・産後に手厚いケアを行うことは、母親の心身と子の育ちにどのような効用をもたらすのか解説していきます
子育て支援の時代の流れ
子育て支援においては、妊娠前、妊娠中、産後、育児・・・と切れ目のないサポートを目指していこうと言う大きな流れがあります
2017年 | 産前・産後サポート事業ガイドライン 産後ケア事業ガイドライン | 妊娠前から産後までの子育て支援体制の整備が全国的に進められた |
2018年 | 生育基本法 | 国や地方自治体・医療関係者が、子どもと妊産婦に対して、切れ目のないサポートや施策を推進していくことを目指す理念をうたったもの |
2019年 | 母子保健法の一部改正 | 産後ケアの対象は「産後4ヶ月未満の女性」から「産後1年以内の女性」 |
また、法律によって産後ケアは努力義務となり、各自治体に対する強制力が出ました
法制化により、子育て支援の環境が整えられた
産後ケアが注目される背景
核家族化
産後、助けてくれる近親者が近くにいない妊婦が増えているのです
出産年齢の高齢化
昔は祖父母が産後の母親の主なサポート役でしたが、妊婦が高齢化するとその親も高齢化します
そのため産後のサポートが受けられないばかりか、出産や育児と同時に親の介護をしなければならないようなダブルケアのケースも増加しています
女性の働き方の変化
仕事のために産後もゆっくりしていられないとか、育児に専念できないといった女性が増えてきているのです
妊産婦の自殺率が高い
差し迫った問題として、妊産婦の自殺率の高さがあるよ!
2005〜14年の10年間で東京23区では63名の妊産婦の自殺が報告されました
これは産科異常による死亡よりもはるかに多い
自殺した妊産婦の内訳を見ると、もともと精神疾患を持っていた人のほか、産後うつを患っていた人も一定数いました。
また、日本全国の統計としても、産後一年以内の妊産婦の自殺率が非常に高いことが明らかになり、産後メンタルヘルスケアの重要性が認知されるようになりました
産後うつは産後1ヶ月以内の急激なホルモン変化に伴い生理的に起こ理、1割の産婦が発症する
産後うつの状態に、さらに支援の欠如やストレスが加わることで症状が悪化してしまうこともあり、支援は急務となっていました
児童虐待
ここ数年、児童虐待の相談対応件数が年間20万件超えと激増しています。
中でも子どもの死亡につながってしまう虐待は実母によるものが多くなっています
子どもの健全な発育には、出産直後の母子の愛着形成が非常に重要だよ!
子どもは生まれた直後から愛着を形成していきます
初期につまずいた場合、その子の母子関係に影響が出てしまう可能性があります
よく母子の愛着形成はサーブ&レシーブの関係に例えられますが、子どものサーブを親がレシーブしてあげるには、親にそれなりの余裕が必要です
母親のメンタルが良い状態にないと愛着形成が難しくなるため、産後ケアは母親のためだけでなく子どもにとっても必要
産後ケアの現状と課題
法制化されたことを受け、産後ケア事業に、経済的な支援を行う自治体が増えてきています
自治体ごとの足並みは揃っておらず、支援にはかなり温度差があるよ!
具体的に言うと、実際に産後ケアを利用した場合、かかった費用の一部に対して自治体が補助を出し、残りが利用者の自己負担額となるのですが、この補助がいくらになるのかが自治体によって大きく異なっています
そして、今はどこも体制を整える過渡期にあります
たとえば都内では、宿泊型施設のサポートの実施は決まっていても、通所型(デイサービス型)や居宅訪問型(アウトリーチ型)についてはまだ決まっていない区もあるという状況です
産後ケアを受ける母親が求める支援
産後ケアセンターというのは単に母親が体を休めたり、身の回りの世話をしてもらったりするという施設ではなく、母親の母性を育んだり、母子の愛着形成を促進することが目的だよ!
母子が良好な関係を築けるような工夫や施設の充実が必要です
また、最近では父親の子育て意識が高まっていますが、一方で子育てに対して不安を持つ男性が増えています
ほとんどの産婦が産後ケアを利用している先進的な国もある中で、日本は産後ケア領域について遅れをとっています
産後ケアの必要性
母親の自殺や児童虐待は氷山の一角です
いつ自殺したり子どもを虐待してしまってもおかしくなような状況に置かれている母親はたくさんいるよ!
そういう人たちへの産後ケアはもちろん必要ですし、そこまでいかなくても疲労や不安を感じている人が、利用したい時に産後ケアを利用できるという環境をしっかり整えていきたいですね
産前・産後ケアに必要なこと
プレコンセプションケア
産前支援に関しては、「プレコンセプションケア」という妊娠前からの健康管理に焦点が置かれています
既往症のない女性でも、結婚や妊娠を具体的に考えていない若いうちから妊娠に関するリテラシーを高めることも産前支援として大切な視点ですが、精神障害を持っている女性の場合は特に、周産期メンタルヘルスにおいてはハイリスクな人となりますので、妊娠前からケアについて考える必要があります
妊娠中の支援
妊娠中の母親が精神的にストレスフルな環境にあると、生まれた後の子どもの発育に影響することがわかっています
胎児期の栄養状態がこの将来の健康状態に影響するというDOHaD仮説は既に有名ですが、メンタル面でも同じことが言えるということです
妊娠前からの健康管理はもちろん、妊娠中のお母さんのメンタルヘルスについてもしっかり知ることが、母子関係や子どもの健康に大きなメリットになっていきます
地域によっては母子保健推進員や愛育班員の方が、居宅訪問型(アウトリーチ型)や通所型(デイサービス型)などの形でボランティア的にケアをしたり、イベントや研修を主催したりというケースもあるかと思います
健康管理やメンタルヘルスを社会資源を利用しながら支援していく
支援の力を伸ばす
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