愛着形成の過程
親を安全基地とみなす
乳児は、自己感と他者感が明確になる生後半年前ごろ、親との安心した交流体験を基盤に、親に情緒的な慰めや安心感を求め、歩き始めると、「安全基地」としての親の存在を確かめながら離れて遊びに出掛けていきます
疲れたり、不安を感じたりすると親の元に戻り、慰めを得ると再び遊びに出掛けていきます
親を愛着対処とみなし、「安全基地」である親に対する愛着が形成される
この様に乳児は「愛着と探索のシステム」を有効に活用して、外界を能動的に探索し、事物を操作しながら生活世界を広げていくよ!
基本的信頼
特に生後一年の乳児はスキンシップを好み、抱っこされたい、話しかけてほしい、あやしてほしいといった社会的刺激を必要とし、この様な身体的・心理的・社会的な自分の欲求が満たされることにより、「私はここにいていいのだ」といった基本的信頼感を獲得します
ホルモンと愛着の関係
オキシトシンあるいはバソプレシンというホルモンとアタッチメント(愛着)の関連が注目されています
従来、オキシトシンは出産・授乳を調節するホルモンであり、バソプレシンは高利尿作用や血管収縮に作用するホルモンであると考えられてきました
近年、オキシトシンは抗不安・抗うつ効果を発揮し、一方バソプレシンは不安・抑うつ関連行動を増加させることが明らかとなってきました
幼少期の養育環境によるオキシトシン・バソプレシンレベルの変動が、後発的な愛着形成・情動発言にも影響する
虐待や劣悪な養育環境、いわゆるマルトリートメントにより、「安全基地」であるはずの親や養育者との愛着形成に重篤な障害、すなわち愛着障害を持つ乳幼児が存在し、これらの子どもたちに対する支援・介入は現在、精神保健の重要な国際課題となっています
子どものトラウマ症状
特に、発達障害、身体障害、転換性障害、全般性不安障害、解離幻覚、うつ、など、子どものトラウマに関連する診断や病態は多岐に渡り、子どもの発達や行動上の問題を臨床場面で診る場合は、性格で丁寧なアセスメントスキルを要します
アメリカでの対応
この様な背景からも、小児医療は以下の7つの役割を認識する必要があるとアメリカ小児科学会が提唱しています
①全ての小児でマルトリートメントの兆候や症状を認識し、児童や成人の保護機関への州ごとに定められた報告義務を理解する ②外来受診のたびに家族のウェルビーングを評価する ③障害を有する児を持つ家族が、児の能力やニーズに対応するための支援が必要であることを理解する。児に関して保護者へ合理的な期待を示し、発達段階に応じた一般的な課題への対応方法について、具体的な提案ができる様にしておく ④障害を有する児とその家族を支援するために必要なサービスを提供する、利用可能な地域のリソースや機関を紹介する ⑤健康診断の際に、適切な躾について話し合う。親は、特に言葉は話せても発達に遅れがある児では、どの様に躾をしたらいいかわからないかもしれないので、ポジティブペアレンティング指導を行う。この様な家族には、障害を有する児の養育スキルに詳しい専門家を紹介することを検討する ⑥障害を有する時の教育的・医学的な治療計画に積極的に関与し、チームでの包括的支援に関わる ⑦虐待などの危険に晒されている子ども、障害を有する児やその家族を支援するためのシステム改善を、州や地域レベルで提唱する
アタッチメントを育む支援
乳幼児の精神的健康のためには、重要他者である親との関係が密接で満足に満ちたものであることが必要だね!
ボウルビーは乳児が親に愛着を覚えるのは食欲などの生物学的本能を満たすだけではなく親への愛着行動自体が根源的欲求であると表しました
これはとても原始的なプロセスで、決して流行の幼児教育や情操教育に時間を費やせばよりよく形成されるというものではありません
保護者が頭で考えすぎることなく五感を通じ「もっと気楽に子育てをすること」を支援することが大切
養育困難があるにもかかわらず養育者が良好に適応する過程には、子どもについての知識を持つこと、社会的支援、育児への肯定的な捉え方が関与します
支援はオールマイティーではないけど人と人とを繋ぐ絆になるよ!
相互に尊敬する
トラウマインフォームドケア(支援者がトラウマに関する知識や対応を身につけ「トラウマがあるかもしれない」という観点を持って対応する支援の枠組み)はそのベースに「相互の尊敬」があり「必要な情報が共有される」ことが必要不可欠という点を忘れてはいけません
支援者は患者さんとの間で力の不均衡が存在していることを認識し、意図せず患者に対して支配的になっていないか常に敏感でいることも求められます
おわりに
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