【支援者向け】持病等の問題を抱える妊産婦へのケアのコツ

健やかな妊娠・出産のためにはどのような支援が必要なのでしょうか

この記事では、妊娠前のワクチンや歯科健診、心身に問題を抱える女性へのケアなどについて話していきます

持病のある女性の妊娠・出産

カバさん
カバさん

持病を抱えている、すなわち、心身に問題を抱えている女性は、妊娠の希望があることを担当医や支援者に対して伝えるのを躊躇っていることがあることに留意しなければならないよ!

そのため、妊娠の希望の有無についてはこちらから聴取して、妊娠に対して不安に思っていることなどを積極的に確認するべきだと考えます

妊娠することのリスクやベネフィット、また、最良の妊娠経過につなげるための方法や時期について話し合います

カバさん
カバさん

「予期せぬ妊娠」となる可能性もあるから、妊娠を希望していない女性に対しても、妊娠した場合の対応・シミュレーションについて話しておくことも重要だね!

持病を抱えている妊産婦の支援においては、妊産婦となる生殖年齢女性の特性や妊娠中の変化を把握しておくことが重要です

高血圧

女性の高血圧症は、年齢とともに頻度は高くなりますが、男性と比較して低頻度です

これに対して、一旦高血圧症を発症した場合、後年者より若年者の方が、また、男性より女性の方が悲惨な結果を招きやすくなります

高齢妊婦の方が妊娠高血圧症候群を発症しやすいが、いざ発症すると若年妊婦の方が子癇や脳出血などの合併症のリスクが高くなる

これは、若年妊婦の高血圧症は、二次性高血圧として基礎疾患が潜在している頻度が高いことも関連しています

降圧薬は必要?

また、妊娠前半期は全身の血管抵抗が低下することによって、血圧は一時的に低下傾向を示します

妊娠中は降圧薬の変更が必要な場合は、この時期に試みることが勧められますが、一方、血圧が低下傾向だからと言って降圧薬の中断を許容してしまうと、妊娠後半期に血圧が再上昇した際の管理にかえって難渋してしまうことに留意する必要があります

糖尿病

糖代謝異常のある女性は、妊娠前の血糖コントロールが良好であるほど児の先天異常の頻度が優位に低下することが報告されています

網膜症

糖尿病の主な合併症である網膜症は、進行例では経膣分娩中に眼底出血を伴うことがありますが、妊娠することによっても、また、急激に血糖コントロールを行なった場合でも悪化することがわかっており、その点からも、糖代謝異常に対しては無理のない緩やかなプレコンセプションケアが重要です

妊娠糖尿病の予後

妊娠糖尿病と診断された女性の半数以上が20〜30年後に糖尿病を発症することが報告されていますが、その発症要因として、妊娠後に食事コントロールが中断されることなどが指摘されています

発症理由

・育児や母乳保育による一時的な低血糖や体重減少、出産後の耐糖能検査結果の正常化によって完治したと判断されてしまうこと
・妊娠中の厳重な食事指導への反動や安堵感
・将来的な糖尿病発症リスクに対する啓発の不足

そのため、糖代謝異常を指摘された妊産婦に対しては、ポストコンセプションケアとしての食事指導の継続が長いライフビジョンを考えて重要とされています

妊娠前からのワクチン接種の重要性

生ワクチン

プレコンセプションケアとして接種要否の検討が重要とされるワクチンに、風疹、麻疹、水痘ワクチンなどが挙げられます

これらは生ワクチンであるため、妊娠中の接種は原則的に禁忌とされていますが、妊娠中に偶発的に接種された場合であっても、胎児に優位なリスク上昇は認めれられないと報告されていることにも留意する必要があります

妊婦への生ワクチンの接種は禁忌だが、接種しても優位なリスク上昇はない

また、風疹HI抗体8倍未満の女性に風疹ワクチンを接種しても、約5%の確率で抗体が陽転化しないことが報告されており、また、陽転化しても低抗体価では風疹感染や先天性風疹症候群を完全に予防できないことが判明しています

そのため、集団免疫による妊婦の保護を目的として、男女関係なく風疹ワクチン接種の検討が必要と考えられます

不活化ワクチン

一方、インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンや新型コロナウイルスなどのm RNAワクチンは、感染性がなく、強い副反応がなければ胎児に影響しないことから妊娠中の接種が可能であり、さらには、母親からの移行抗体による新生児・乳児の感染予防効果が期待されています

しかし、妊産婦は不安が大きく、副反応による児への影響に過敏であることから、その訴えや不安を傾聴して、疑問に一つ一つ答えながら妊娠中・授乳中のワクチン接種に関して話し合う必要があります

口腔トラブルと妊娠

妊娠中の歯周病は、細菌性あるいは無菌性炎症によって起こされた高サイトカイン血症によって早産や低出生体重児の危険因子になることが推定されています

また、サイトカインの持つインスリン抵抗性とも関連して、糖代謝異常にもつながることが推定されています

一方妊娠中に歯周病を治療しても早産率に優位な改善が認められないことから、妊娠中よりもプレコンセプションケアとしての歯科健診の効果が期待されています

カバさん
カバさん

妊娠中はホルモンバランスや口腔環境の変化などによって、歯周病・虫歯が発症しやすい時期だよ!

歯科治療は妊娠中・授乳中でも安全に行えますが、育児中は歯科受診のための時間が取れない可能性が考えられることから、妊娠中の歯科受診・治療が勧められます

プレコンセプションケア

妊娠は、女性が自らの心身の健康状態を見直す良い機会とも言えます

例えば、心身に問題を抱えている女性に対するプレコンセプションケアは、妊娠に向けてどのようにすれば良いかというだけでなく、長いライフビジョンを考えた女性の一生の健康を整えることまでを幅広く考えて実施されるものです

カバさん
カバさん

何よりも妊娠を通して心身の環境を整えておくべきであることを意識してもらうことが重要だね!

ただ、プレコンセプションケアに関する周知が未だ十分でないと考えられる現在においては、「妊娠中〜産褥期からでも何ができるか(インターコンセプションやポストコンセプションケア)」という気持ちで支援することがより喫緊の課題とも考えます

妊娠前の支援

妊娠前からの精神状態の安定化は、産後のうつ状態の発症・悪化を予防できる可能性があるため、以下のサポート体制の調整が必要です

妊娠前に必要な調整

・食生活や飲酒・喫煙などの生活習慣の改善
・医薬品の調整
・遺伝カウンセリングの検討
・出産・育児サポート体制に

可能であれば、3〜6ヶ月程度精神状態が安定していることを確認した上での妊娠成立を目指すことが理想とされていますが、前述したように、特に心に問題を抱えている女性は、妊娠の希望を相談できなかったり、また、妊娠しても心の問題を産科医に伝えないまま妊婦検診に通院し停滞することがあります

妊娠中の支援

十分な情報が得られないまま妊娠し、胎児への影響を危惧して医薬品の使用や精神科通院を自己中断する例も散見され、妊娠・産褥期の病態の悪化や不幸な結果につながっています

妊娠中に必要と診断された医薬品を使用することは、むしろ胎児の発育や発達の促進にもつながることを伝え、妊産婦を取り巻く精神状態の悪化に関連する社会的リスク要因を改善するための支援策を早期から話し合っておくことが重要

多職種連携

心に問題を抱えた妊産婦は、自宅での養育困難が予測される例がある一方で、切れ目のない長期の支援が必要であることから、可能な限り居住地近くの医療機関で妊娠・分娩管理されるのが望ましいと考えられます

カバさん
カバさん

そのためには多職種が各々の専門性に専念するだけでなく、連携・協働し、妊産婦の生活圏における包括的な支援を行うことが重要だね!

おわりに

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