世の中には私たちが思っている以上にリスクを抱えている方達が存在します
多くの人は、強みを生かしながら自分の中のリスクをカバーあるいは誤魔化しながら日々の生活を乗り越えています
妊娠・出産はリスクでもあると同時に、守りの薄くなる時期であるからこそ、周囲にしっかりと抱えられることでその人のこれまでの抱えてきた葛藤や、関係の取り方を修正しうるチャンスになり得ます
妊娠・出産・育児を支えていく仕組みが整えられつつある一方で、リスクのみに焦点を当てていませんか?
この記事ではエジンバラ産後うつ病質問票と産婦の支援について解説していきます
親になるとは?
親になるということは、自分ではコントロールできない事態が起きるということだよ!
誰もが不安定になりやすく、「釣り橋を渡っていくような時期」
多かれ少なかれ漠然とした不安を抱えやすく、これまでの葛藤が再燃化しやすい時期でもあります
→リスクでもありチャンスでもある
すべての妊産婦さんが、何重にも守られて、この不安定な時期を乗り越えていけるように支援することが何より重要だね!
少子化や核家族化が進み、孤立化しやすい現代社会だからこそ赤ちゃんと出会う医療機関、赤ちゃんと育つ地域、が何重にもわたる支援の輪をつなげていくことが大切です
マタニティブルーズ
出産直後からおよそ1週間以内に始まり、数時間から2〜3日といった短期間で消失します
ホルモンのバランスが急激に変化するのは、思春期や更年期を凝縮して体験するような感じだよ!
欧米では60%、日本では25%が発症し、その17%が産後鬱病に移行します
産後ケアの質によって重症化を防ぐことができるよ!
考え方の特徴
「自分とは別の赤ちゃんであると同時に、自分の中の無防備な小さい赤ちゃん」
=被害感・孤立感を抱きやすい。周囲が赤ちゃんをどう見ているかに敏感
産後うつ病
出産後数週から数ヶ月以内に10〜15%に出現しますが、およそ数ヶ月で軽快します
1年以内に約3分の2が回復、2年目には90%が回復します
母親が本来の自分に戻ったと感じるには出産後1年以上必要だよ!
中には産後うつ病が契機で、10年以上不安定さが続くこともあるため、出産後1年程度まで慎重に経過を見守る必要がある
症状
「自分は母親としての資格がない」「十分に赤ちゃんの世話ができない」など母親としての自責感を抱えているよ!
自分の子どもへの無関心と、怒りや敵意の感情が伴うことがあり、少数ですが自死や嬰児殺しに繋がることもあります
精神症状
普通のうつ病と大差はなく、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、食欲の低下(増加)、睡眠の障害(不眠、睡眠過多)、焦燥感、気分の低下、罪責感、集中力の低下、希死念慮
身体症状
頭痛や腰痛、肩こりや体の節々の痛み、下痢や便秘などの胃腸症状、発汗、息苦しさなど、様々な身体症状がある
原因
要因としては、うつ病の既往歴、月経前緊張症、心理的ストレスとなるようなライフイベント、家族や周囲からのサポートの欠如などがあります
統合失調症
初発・再発の率が高く、1000回の出産に1〜2回程度
精神科治療が第一優先となります
症状
不眠や焦燥感を訴えた後に、しばしば妄想や幻覚などの精神病症状が出現します
強い混乱や困惑、一時的な記憶や意識の障害が見られます
気分が不安定で、うつ状態や逆に病的に気分が高揚する躁状態を示します
抑うつの母親と子ども
出産後はどのお母さんも不安定になりやすく、お母さんの心の健康は、赤ちゃんを育てる上で大切なことです
親子のやりとりの特徴
受け身的、応答が少ない、情緒的な関わりが少ない、マネが少ない、身体接触が少ない、肯定的な感情の表出が少ない、共感と情緒的応答性が乏しい、否定的な感情を表出しやすい、侵入的、子どものサインを正しく認識しにくい
母親の抑うつが子どもに与える影響
抑うつ的な母親の新生児は、コルチゾールとノルエピネフリン(副腎皮質ホルモン)が高いです
産後1年の時に抑うつ的だった母親の子どもは、18か月の時点で、母親との愛着は不安定、4歳の時点での認知発達が劣ることが多いです
抑うつ的な母親は、親子で遊ぶ時、活動性・顔の表情・マネが少ないから、育児機能が障害され子どもの発達への負の影響が大きいよ!
支援の仕方
心の専門家以外のスタッフによるケアやサポートは有効であり、赤ちゃん訪問によってうつ病の発症率が低下します
「気にかけてくれている存在」の有意性
家事や育児負担の軽減が必要であり、「頑張らせないこと」「家族の理解と協力」が不可欠だよ!
そして、マイナスの自分を受け止め、きちんと聞いてもらえたという体験が次のサポートにつながっていきます
エジンバラ産後うつ病質問票
EPDS尺度利用のメリット
・感情表出の乏しい日本人の特性をカバー(観察して得られた印象と、実際の得点の乖離があることが多い)
・産後の不調のSOSが出せない人に、サポートを差し伸べるきっかけになる
・初めて会った母親の精神状態について、短時間で多くの情報を得られることができる(EPDSをきっかけに想いを引き出すことができる)
・自分の状態を客観視できる
・ネガティブな感情を表出・受け止め、現在の状況を把握する一つのきっかけとなる
EPDSの聴取自体が支援につながるので、単にスクリーニングで使わないようにしよう!
質問紙記入依頼のポイント
1点以上がついた質問項目について、母親から実際の言葉で確認する
質問票の結果、また聞いた内容については他人には漏らさないので、今の状態をありのままに書いてもらうようにしましょう
詳細に聞き取るということは母親自身の心の整理になり、漠然とした不安が把握しやすいものになるよ!
質問1、2 感情障害
うつ病の基本症状の一つです
「以前は楽しみにしていたことが楽しめない」のは育児・家事が忙しいことが理由ではなく、楽しむような気分になれないことが原因です
質問3〜6
客観的には子育てが行えており、特に子育てで具体的に困っていることがないのに
「私の育て方が悪いから、大きくならない」
「育て方はあまり上手ではない」
という訴えがあります
子育てに慣れていない・多忙な場合も点がつくよ!
質問7 睡眠障害
育児や家事で眠る時間が足りない場合に点数がつきます
夜泣きのため眠いのに眠れていないことが多いよ!
入眠障害:布団に入ってから眠りにつくまでどのくらいかかるか
早朝覚醒:朝早く目が覚めてしまいますか
眠りが浅い:眠っているが、ぐっすり寝た感じはないですか。眠れないことですごく疲れますか
夜間の不眠を昼寝によって解消することができているか確認
質問4・5 捉え所のない恐怖感
理由のない漠然とした心配や不安があります
質問6 集中力がなくなり判断が難しくなる
初産の場合は健康な母親も点をつけやすいです
初産で過度な心配、周囲にサポートする人がいないことが多いよ!
実際の行動を具体的に聞き出し、ケアについてのアドバイスに繋げる必要性もあります
質問8・9 うつ病の基本症状 抑うつ気分
はっきりとした理由はわからないのに、1日の大半で悲しくなったり涙が出ている
どういう状況の時に、悲しくなったりすることがどのくらい続くのかを確認しよう
質問10 自殺念慮・自殺企図の有無
この質問に1点以上の回答があった場合は必ず確認、冷静に聞く
「最近、一番そのような気持ちになったのはいつ・どのような状況でしたか」
「自分をどうしようと思いましたか」
「その後どう行動しましたか」
「そういった考えが浮かんだ時に、SOSを出せる人はいますか」
「そばにいなくても、電話などで連絡ができ、話が聞いてもらえる人はいますか」
「そんな気持ちになったことを誰かに話せましたか」
援助要請の具体的な方法・手段(誰に、どのような形で連絡し、何を話すのか)を確認しよう!
この時期の難しさ
物言わぬ赤ちゃんが何を伝えたいのか、客観的に、はっきりとわかりにくいので、自分自身の思いが、赤ちゃんに映し出されやすいです
特に抑うつが強いと、自責感が強い、母親としての自分に自信がない、理想の母親像とのギャップが大きいです
子どもの泣きなどに過敏、自分が責められているように感じてしまう
子どもと距離を取ったり、余計に鬱的になったりするよ!
支援のポイント
子どもに対する肯定的な視点
赤ちゃんへの眼差し=自分への眼差し
目の前にいる(お腹の中にいる)赤ちゃんの存在を肯定的な視点で見ることで母子の一体感が強くなります
まずは自分を肯定的に捉えられるように支援しよう!
評価しない場と空間
支援=特別なことと思われやすいです
親は自分を評価されているのではないかと過敏だよ!
親と赤ちゃんがより楽しく過ごせるように支援していることを伝えましょう
介入拒否になることも
良かれと思う介入が、傷つきにつながることもあります
周囲の支援=自分がダメだというレッテル=支援に対する抵抗
不安定になるのは誰もが当たり前で育児は一人ではできずみんなで育てていくものです
お母さんがほっと力を抜いて安心して子どもと関わることができるように支援することが、何よりも支えになります
支援の力を伸ばす
支援者としての個人の力を伸ばす・より力を発揮できる場所で働くという点では転職を考えてみるのも一つの方法です↓(保健師の求人も多くおすすめです)
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まとめ
必要な支援を届けるには、親と子を取り巻く緩やかなネットワークを繋いでいくことが大切です
関係機関と連携し、情報の共有と共通の認識を持つことで地域にある資源を最大限に活用することができます
赤ちゃんとお母さんが地域の中で見守られて育っていくには最初の支援が鍵です
支援者が安全基地として機能することで次の支援につなげていこう!
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