産後の母親は、体力だけでなく、ホルモンバランスも乱れることから休息することが大切です
しかし、世の中には休むことなく子どものために頑張ることが美徳という文化が残っています
ここでは、産後ケアについて説明していきます
産後支援は必要?
以前の産後の考え方
世界の様々な国や地域において、産後早期は「母親が体を休める大事な時期」とされ、「褥婦」を保護し、安静にしておくために、産後にしてはいけないことが厳しく伝承されていきました
日本における産後の文化には「床上げ21日」という言葉に表された、「産後21日間はできる限り身体を休める」「水を使ってはいけない」「目を使ってはいけない」と言った昔からの習慣、禁忌がありました
現在の産後の状態
しかし、産後の感染や出血による死亡も減り、産後安静にしておく医学的理由が薄れ、褥婦は自分の心身の安静より、親になるための育児技術の習得を急ぐようになってしまったように見受けられます
出産施設でも短い入院期間の中で、退院後、授乳や育児に困らないように、保健指導を急がざるを得ない状況になっているよ!
褥婦本人も、出産という病気ではない体験のため、産後の安静の必要性を感じず、周囲からも育児に早く慣れることを要請されれば動いてしまうでしょう
また、自分のことより子どものことを優先するのが親というものだと思いがちだよ!
おそらく昔から、褥婦はそう考えて動いてしまう人も多かったのでしょう
そこであえて禁忌を設け強制的に休ませたのではないでしょうか
産後の心身回復の必要性
そもそも褥婦の「褥」という文字は布団を意味しますので、産後早期の女性は布団に横たわってケアされるべきということが言葉にも表れています
褥婦はとにかく身体を休める、授乳以外は横になって身体の回復に努めることが、ここから長く続く育児への準備になるよ!
「床上げ」までに必要なケアは、心身を休めるケアです
身体の回復は心の安定にもつながり、子どもへ愛情や絆も深まり、親としての自信も育みやすくなる
産後早期に産後ケアを受けた女性に、その経験を尋ねると、「産後ケアで休ませてもらって初めて自分がどれだけ疲れていたか気づいた」ということも多いです
これまでは家族がになってきた床上げまでのケアを、家族に期待できないのならば、市町村が提供する産後ケア事業を積極的に利用しよう!
少なくとも「床上げ」までのケアは全ての褥婦に必要なケアであり、育児のスタートラインに立つために必要なケアと言えます
産後ケア事業は母子保健法に市町村の努力義務として法制化されているため、これからもっと身近になり、使いやすくなるでしょう
産後ケアへの正しい理解
産後ケアは誰が受けるべき?
産後ケアを受けるのは贅沢や甘えだとの声もあることが、一時期話題になりました
産後ケアが果たす役割が正しく認識されなければ誤解も生まれるでしょう
実際に、「自分が受けるケアだと思わなかった」や「どのような状況だったら受けるべきなのかわからない」という声もよく耳にします
産後ケアの利用者の反応
一方で産後ケアを受けた人からは「受けてよかった」「みんなが受けるべき」という反応があります
身体を休め、専門家から直接ケアを受けたり、育児を教えてもらったりすることは、必要性が高く、満足度も高いケアだよ!
産後の生活を計画する
そこで、妊娠中から産後に目を向けて、安心してゆっくり身体を休める環境をどのように用意するか、家族みんなで計画しておくことが必要です
パートナーの育児休業制度も活用して、産後パパ育休をいつ取得するのか、他の家族はサポートできるのか、もし難しければ市町村の産後ケア事業はいつどのように使うのか、先を見越して行動できるようにしていきたいですね
産後の不安
入院中の過ごし方
日本の産後の入院期間は平均5日間、帝王切開でも7日間というのが現状です
産後の女性が、自身の体調の回復や育児技術の習得、特に母乳育児に慣れるまでと考えると圧倒的に短い期間です
母子同室を行えたとしても、児の泣きや授乳のタイミングに振り回され、児の世話に戸惑いながら退院していきます
特に授乳は、手技に慣れ、子どもがうまく吸い付くまでに時間がかかるよ!
授乳支援を活用する
授乳がうまくいくと母親としての自信につながります
授乳がうまくいかないと、育児への自信、自分への自信が持てないままの状態
そこで、産後早期の産後ケアの柱の一つは授乳の支援となります
授乳に四苦八苦している母親達にに寄り添って、乳房の状態を確認し、抱き方を変えたり、赤ちゃんの様子を伝えたりしながら、少しずつうまくいく方法を見出していく、その過程で母親になった実感と自信をつけていくことが必要です
他の母親が子どもに母乳を授乳する姿を見る機会など現在は皆無ですので、初産婦にとっては全てわからないことだらけです
そばで「それで対丈夫ですよ。赤ちゃんも嬉しそう。よく飲めていますね」と言ってくれる人が必要です
それは、入院期間だけでは足りないので、2週間健診、新生児訪問、乳児健診など機会あるごとに寄り添ってみてもらおう!
何が正しい・不明かがわからない
産後ケア事業や産前・産後サポート事業では母親の気持ちに焦点を当てることができます
母親は「自分が子どもにしていること1つ1つがこれで正しいのかわからない」と言います
また、「保健師さんに何か心配なことはありますか」と問われても、何を言ったら良いのかもわからない」と言います
「初めて経験することは、わからなくて当たり前」と私たち支援者は思っているけど、多くの女性たちは、出産すると母親として頑張らなければいけないと思っているね!
母親は「みんなが出来ていることなのだから、私もできて当たり前」と思っているので、できない自分を責めたり、落ち込んだりしてしまうのです
人から大切にされて初めて自分を大切に思える。
自分を大切に思えるから、我が子を可愛いと思うことができ、子どもへの絆が深まる
女性の背景と必要な支援
母親となる女性の背景は多様化しています
よくある背景
晩婚化が進み、不妊治療や高齢出産が増え、妊娠中のリスクだけでなく、出産時のリスクや産後の回復にも影響が出る人が増えています
また、自身の親との関係性に悩んでいたり、夫婦関係に問題を抱えている人もいます
経済的な問題は福祉部署と連携する必要もあるでしょう
医療面
身体の不調はメンタルにも影響しますし、既往として精神疾患や心療内科受診歴がある人も少なくありません
すでに診断がついて産科以外の診療科を受診している場合はその診療科と、メンタルヘルスケアが必要な場合は新たに精神科や訪問看護などと、それぞれ連携も必要です
一人一人のケースに合わせた相談や連携は、子育て世代包括支援センターがその中核となって機能しているよ!
子ども側の要因による必要な支援
また、生まれてくる子ども側に理由があり、支援が必要なケースもあります
多胎児
双胎や品胎など多胎児の育児はそれだけで負荷がかかります
物品の準備に加え、サポートしてくれる人の手配は家族も含め大変だよ!
できれば、産前から産後の生活をイメージしておけるよう、多胎児の育児の実際についてみたり聞いたりして、困った時はどこに相談したら良いのか知っておくなど、準備をしておけると良いでしょう
子ども二人が退院できる環境が整っているかなど、できれば産前から保健師の家庭訪問などで一緒に確認していこう!
子ども一人を育てるにあたっても、成長発達の過程で心配事はつきません
ましてや多胎児であれば、成長発達への心配もあり、目まぐるしい毎日の中でやるべきことも多く、立ち止まって考える時間がないかもしれません
その環境を理解してくれる専門家や仲間がいること、多胎児育児の先輩との接点があることは、想像以上に心強い存在となる
多胎児育児の先輩家族と交流できたり、情報交換できたりする場があることも不安解消に効果があります
ただし、ゆっくり話をするためには、子どもを預かってくれるサービスもついていることが必要です
父親も負担が大きい
最近では父親の支援も注目されます
複雑で閉塞感の漂う社会情勢の中、メンタルヘルスの不調を抱えるのは、母親のみならず父親も一緒です
産後うつのリスクを持つ父親は母親と同じくらいの割合だと言われています
父親にとっても育児は初めてのことだらけで不安がいっぱい!
実は父親が母親以上に負担を感じているケースも多くあります
母親と同じように父親もその窓口を知ることが必要だと言えるでしょう
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