長年、乳幼児期の死亡原因の上位を占めているのが「不良の事故」です
子どもの事故を防ぐために様々な啓発や取り組みが行われてきましたが、乳幼児の死亡事故や重大な事故は後を経ちません
こうした状況を踏まえ、改めて従来の予防策の問題点や、効果のある事故予防策とはどのような取り組みなのか、見直す必要がありそうです
この記事では、子どもの事故の現状やITを活用した事故予防などについて話していきます
進まない事故予防
厚生労働省の人口動態統計によると、子どもの死亡事故は0歳児は窒息が多く、1〜4歳児は交通事故や溺死・溺水が多いという傾向があります
この傾向は近年ほぼ変わりはありません
救急搬送のシステムや医療の向上で死亡数は減ってきていたのですが、それも、ここ3年くらいは頭打ちの状況です
ただ、事故による子どもの死亡数は、一つの県で見ると年間に数件です
子どもの事故は数多く発生しており、そのほとんどが死亡に至らないものであることを考えると、死亡数のみが示される人口動態統計だけを参考に子どもの事故の実態を語ることは難しいです
事故の発生率は変化なし
これまで様々な事故予防の取り組みが行われてきたけど、毎年同じような事故が同じくらいの頻度で起こっているということは、従来の予防活動は効果がなかったということだね!
まずは、ここを真摯に受け止める必要があります
事故予防の効果的な取り組み
事故予防には「教育」「法制化」「製品や環境を変える」という3つのアプローチがあるよ!
教育
まず1つ目の「教育」はこれまで母子保健関係者が取り組んできた部分です
資料やチラシを作るなど、他の2つに比べてお金も労力もそれほどかからず、すぐに取り組めるけれども、効果が出にくい点が特徴です
効果が出にくいことの背景にあるのは、「予防」自体の難しさです
なぜなら、ほとんどの親が、自分の子どもが事故に遭うかもしれないという実感を抱いていないからです
資料やチラシを配っても、親に危機感を抱かせたり事故予防に積極的にさせたりすることはなかなかできないよ!
法制化
2つ目の「法制化」は国が法律で電化製品の仕様などにルールを設けたりすることで、非常に効果があります
例えば、電気ポットは転倒してもお湯が50ml以上こぼれない仕様にすることが既に法律で定められています
一方で近年一般的になってきた電気ケトルについては、まだこのような仕様が法制化されておらず、電気ケトルによる火傷事故が多発しています。
事故予防の観点からは電気ケトルについても湯漏れ防止機能をつけることをすぐにでも定めてほしいですが、法制化には関係各所との調整やガイドラインの作成などを行う必要があり、何年もの時間がかかります
法制化は効果が高いが実現まで時間がかかる
製品や環境を変える
こうした「教育」と「法制化」を踏まえ、最も確実ですぐに実現できるのが、3つ目の「製品や環境を変える」です
極端に言えば「子どもから少しくらい目を離しても安全」な製品や環境が用意できれば、「これをしてはいけない」「あれも気をつけなくてはいけない」といった保護者に対する教育や注意喚起も不要になります
環境作りや製品開発を早く進めることが、子育て支援につながるね!
チャイルド・デス・レビュー
子どもの死亡事故について検証し、社会でどのように予防していくかを考え実践していくためのCDR(チャイルド・デス・レビュー)という取り組みが、2020年の春からモデル事業としてスタートしています
ですが、個人情報保護法との兼ね合いなどが立ちはだかり、思うように進んでいません
非常に大事な取り組みですが、日本社会で実際に動き出すようになるにはまだ時間がかかります
現時点では、CDRに期待するより、日常的に目の前に起きている子どもの事故を、どのしていくか考えることが大事だね!
母子保健関係者にできること
母子保健関係者には「地域のデータの把握」と「活動の評価」、この2点を意識して活動してほしいと思います
地域のデータの把握
雪が降る北海道と海水浴をする機会の多い沖縄、交通量の多い東京都、それほどではない地方都市など、それぞれ生活事情も生活スタイルも異なります
事故予防は国レベルのマクロな視点ではなく、地域ごとに見ていくことが大切だね!
ネットで様々なデータにアクセスできる時代ですので、まずは自分の地域でどんな事故が起きているのか実態を把握してください
活動の評価
そして、対策をして事故予防に効果があったのか「活動の評価」を行います。
その対策を行なって事故が減ったのか変わらないのか、3〜5年ほど事故の件数を見ていくといいでしょう
母子保健関係者はこれまでも、子どもの事故に対して様々な活動をしてきたと思います
しかし活動の結果、「どんな事故がどのくらい減ったのか」ということを示し、その活動が有効だったかどうかを評価するということまではしてこなかったと思います
事故予防の対策を実行するだけで終わらせず、評価を行うことで、取り組みの有効性を確認し、事故を減らすことができる
個別の事故予防策
子どもの事故予防にとって大切なのは、一人一人の子どもの発達や環境に合わせた個別性のある事故予防だね!
例えば生後2か月の子の保護者に誤飲について話をしても「まだ動かないし誤飲するわけない」と親は思いますよね。
ですがこれが8か月の子の親だと誤飲事故は身近なものになります
現時点の子どもの発達に合わせた話題でないと、保護者も子どもの事故に対して実感が湧かないよ!
さらに、自宅が階段のないマンションなのか階段のある戸建てなのかなど、住環境によっても、子どもを取り巻く事故リスクは異なります
IT技術の活用
個別性のある対応を行うためにスマホをはじめとしたIT技術を利用した取り組みも是非考えてほしいと思います
家の構造や子どもの発達などが、個々で異なることがこれまでの事故予防の課題でしたが、IT技術を駆使すればオンラインを用いた家庭訪問なども行うことができ、その子の発達に合わせて、家の中がどうあるべきかといった指導も可能になります
保護者にスマホのカメラ等を使って家の階段やベランダ、風呂場の状況などを見せてもらい、その日のお子さんに対して必要なことを指導することができる時代です
とは言え、全ての事故を予防することは無理なので重症度が高いお風呂の溺れ、ベランダからの転落などに的を絞って取り組むのが良いでしょう
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まとめ
保護者には、行政に子どもの事故を報告すると責められるのではないか、社会からバッシングを受けるのではないかという意識もあります
そうした保護者感情にも十分配慮し、個人を特定できないような仕組みを作るなど、情報を集めやすくするための工夫も色々と考える余地がありそうです
ただ、今後はできることが格段に増えてくることは確かなので、大いに工夫をしていただき、これまで手が届かなかった新しい事故予防の取り組みを実践していただければと思います
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