子どもの事故は、家庭内での処置のみで済む軽微な事故が多いです
一方で、医療機関の受診が望ましい事故、集中治療を要する事故も少なくないです
家庭内での事故を未然に防ぐことは重要だけど、当然ながらその全てを予防することはできないね!
本稿では重篤な転帰に至り得る家庭内の事故を中心に、その評価、応急処置、医療機関受診の目安について解説します
誤嚥(気道異物)・窒息
誤嚥とは気道に異物が入ること
3歳以下の乳幼児、男児に多く、精神発達遅延の児でも多いよ!
誤嚥物質は食品ではピーナッツなどの豆類が多く、そのほかに魚骨や食物の破片の場合もあります
日用品や雑貨では玩具、ビニール片、紐、硬貨などが挙げられます
対応
致死的となり得るため、早急な対応が必要です
初期評価としては、声が出せるか、意識があるかどうかが重要だよ!
意識があり声が出せる場合は、子どもを落ち着かせ刺激をしないようにしましょう
意識はあるが声が出せない場合、まず救急要請をした後に、1歳以下では抱き抱え逆さにして背中を叩く背部叩打法、1歳以降では後ろから抱き抱えて拳を胃のあたりに当て情報に強く押し上げるハイムリック法により異物の除去を試みます
しかし、これらの処置の効果は限定的です
異物が明らかに口腔内に確認できれば指で取り除いても良いですが、異物が見えない場合は異物を奥に押し込む可能性があるため、口腔内をやみくもに探らないようにしましょう
声が出ず意識がなくなってきた時は、ためらわず心配蘇生として胸骨圧迫を開始しよう!
誤飲
子どもの誤飲は生後7〜8ヶ月ごろから増加、3〜4歳ごろまでに多いです
特に1歳ごろは手に触れるもの全てを口に持っていくため、最も誤飲に注意すべき年齢だね!
誤飲では、ボタン電池や玩具など消化吸収されない消化管異物と、タバコや医薬品など消化吸収される薬物誤飲に大別されます
誤飲物のうちタバコが半数を占め、最多です。
最近では加熱式タバコの誤飲例も増加しています。
加熱式タバコは一般的な紙巻きタバコと同様にたばこ葉を使用しているため、急性ニコチン中毒を起こす可能性があります
対応
いずれの誤飲物の場合も気道、呼吸、循環、神経などの全身状態の評価が最も重要であり、それらの異常があった場合は直ちに救急受診する必要がある
また誤飲物により対応が異なるため容器や現場の写真などによる正確な情報の提供が重要です
応急処置は、水や牛乳を飲ませる、嘔吐させる、などが挙げられます
希釈や除去を期待した処置ですが、症状悪化や誤嚥などの危険があり注意を要します
家庭で吐かせることは推奨されていないよ!
医療機関では、誤飲物内容と量、誤飲理由、症状などを確認し、対応を決定します
胃洗浄は薬物後1時間以内であれば考慮されます
医療機関への受診に際し、可能な限り保護者に現物を持参してもらうのが良いです。
薬物誤飲の場合でその対応に迷う場合は、日本中毒情報センターに情報提供を依頼することも一考に値します
溺水
我が国での特徴として、1歳前後の子どもが家庭の浴槽で溺水する症例が多いです
プールや池など多量の水が溜まっている場所だけでなく、わずか10cmのため水でも溺水が生じる可能性があることを認識し、保護者や観察者は最新の注意を払うべきです
溺水の多くは不注意によりますが、痙攣、不整脈、虐待などが背景に潜んでいることもあり、溺水に至った原因について詳細な状況確認が必須です
人が溺れる時は、すでに口が水中にあることから発見できず、周囲から気づかれにくいよ!
子どもたちは、「静かに溺れていく」
溺水の病態は、口から気道へ水が侵入することにより急性呼吸不全(低酸素血症)から多臓器不全(意識消失や心停止)へと進行します
治療
治療の目標は急性呼吸不全や多臓器不全の改善による救命や神経学的予後の改善です
その成否は医療機関に到着するまでの応急処置の質によると言っても過言ではなく、胸骨圧迫などの一次救命処置が極めて重要だよ!
現場で意識があり呼吸が安定しているように見えても、数時間後に急激に呼吸状態が悪化することもあり、病院での観察が望ましいです
プールなどへの転落による溺水の場合には、頚椎を含めた脊髄の評価や保護を忘れてはいけません
やけど
やけどは、家庭内で子どもの思いがけない行動により容易に生じ得ます
家庭内での火傷は高温の液体(特に熱湯)によるものが多いです
熱傷面積は体表面積あたりの割合で算定され、児の手掌を1%として概算します
熱傷面積が10%以上の場合、入院管理が必要となります
熱傷深度とは、組織障害の深さを肉眼的に4段階で評価する指標があります
Ⅰ度熱傷
表皮に留まる熱傷で、皮膚の発赤や腫脹を呈する
Ⅱ度熱傷
浅達性と深達性に分かれるがいずれも水疱形成があり、浅達性は水疱下がピンクから赤色、深達性は水疱下が白色である
Ⅲ度熱傷
皮膚全層に及ぶ熱傷で、創面は白色から乾燥している。明らかに局所の熱傷で皮膚所見の変化が乏しい場合は家庭内での応急処置で良いことも多いが、受傷直後は熱傷深度や熱傷面積の評価が困難で経時的な評価が重要であり、医療機関への受診を躊躇う必要はない
対応
応急処置としては、熱の皮膚心部への伝達を防ぐため、まずは流水や氷水などで冷却を行おう!
十分冷却した後は、創部の被覆を行います。
創部の被覆を行う際の注意点は、熱傷部にテープを貼付して固定しないことです。
熱傷部に固定テープを貼付してしまうと剥がす際に表皮剥離が生じ得るからです。
可能であれば包帯で固定しましょう
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