近年は高齢出産婦が増加しています
高齢出産婦には、若年とは異なる産科リスクがあり、必要な支援も異なります
この記事では、高齢出産婦の特徴と支援について解説していきます
高齢出産婦の増加と特徴
初産婦の高齢化
日本においては、第1子出産時の母親の平均年齢は毎年上昇しており、2011年に30歳を超え、2016年は30.7歳となっています
また、年齢階級別の出生率の推移では、ここ10年間の変化として30〜40代の上昇が見られます
昔も30〜40代の出産は珍しいことではありませんでした
昔:複数の子どもを出産していたため、それに伴う出産年齢の高齢化
現代:初産年齢が高齢化している
高齢出産の要因
現代の高齢出産の背景には、女性の高学歴化とそれに伴う社会進出、また生殖補助医療の発達も関連しているとされています
以前は、妊娠出産を機に退職、子どもを産み終えてから再度働くという状況、いわゆる女性の就業率のM字型カーブが多く見受けられました
今は女性活躍推進と言われ、夫婦共働きが当たり前だね!
キャリアを積んだ女性にとっては、妊娠・出産でキャリアや収入を諦めたくない、いつでも産めるからあと伸ばしにしておこうという思いもあるのかもしれません
高齢出産のリスク
出産年齢が高くなることで問題となるのは産科的なリスクの増加です
また、高齢になれば、高血圧や糖尿病などの内科疾患を妊娠前から患っている可能性も高くなります
精神疾患についても2017年の患者調査の概況によれば、気分(感情)障害(躁鬱病を含む)の患者数は、平成17年以降急激に増加しています
男性に比べ女性は1.6倍多く、また年齢別に見ると40代が最も多いことからも、精神的な疾患においても、高齢妊娠では合併する可能性が高まると考えられます
気分(感情)障害(躁鬱病を含む)の増加は、ストレスを抱えながら働かざるを得ない現代的な状況と、妊娠・出産というライフイベントをそれらの環境の中で行なっているという状況を表していると言えます
核家族化
また日本では、産後は実家の親などからケアを受けることが多いのですが、高齢出産に伴い、妊産婦の家族も高齢化し、家族のケアが望めないケースも増えてきました。初めての子供の場合は常に不安がつきまとうものですが、「里帰り出産」という言葉に象徴されるように、日本では身近な家族が産後の母子をサポートし、子育てのスタートにあたって、情緒的にも物質的にも親の支援が受けられていました。しかし、高齢の親へは体力的な問題もあり頼りたくても頼れない、親自身が健康的な問題を抱えていて頼りにするのは難しい、健康ではあるが頼りたくない、親はさらに上の世代の介護を担っているなど、親からの支援を受けられない理由も多様化しています。中には、親の介護と自分の子育てを同時に担わなくてはならない、いわゆるダブルケアという状況も生まれています。これは、高齢出産に伴う社会的な課題と言えます。
高齢出産婦に必要な支援
高齢出産婦に対しては、妊娠から出産までの安全性の確保と、特に産後については社会的に子育てをサポートする仕組みが必要だね!
妊娠中の支援
妊娠中は、妊婦自身の健康の保持増進を支援することの重要性を伝え、産後に向けた準備も妊娠中からパートナーと一緒に計画的に行えるよう助言することが必要です
妊娠中も仕事を継続する妊婦が多いため、健康管理は心身ともに必要です
妊婦健診や両親学級などにパートナーと共に参加し、安心して妊娠期を過ごすことが出産や子育てにも影響します
また、産後に身近な家族からの支援が受けられない可能性が高い場合などは、妊娠中から産後ケアへの意識づけを妊婦とパートナー双方にしておくことが必要です
特に、出産直後は支援体制は軽視できません
それぞれの家庭にあった方法を選べるよう、保健医療従事者も一歩踏み込んで助言していく必要があります
高齢出産のカップルでも、自ら産後ケアを積極的に使おうと意識している人はまだ少ないよ!
高齢妊産婦の特徴を踏まえた支援
子育ては、自分の思い通りにならない経験の一つですが、それを事前に理解して親になる人は少ないと言えます
児はどんなにあやしても、何をしてもぐずり続ける時もあります
私見ですが、高齢出産婦は子育ても頭で考えがちな傾向があるように思います
勉強や仕事は努力しただけ自分に返ってきました
成功体験を積んできた女性たちにとって、子育ては自分がどんなに努力しても思ったようにはいかない初めての体験かもしれません
ましてや、身体的な回復の早い若い世代と違い、妊娠や分娩の回復に時間がかかり、睡眠不足も重なる産後1〜2ヶ月は、身体的にも辛い上に不安も高まります
そんなことが続くと、我が子を可愛いと思えなくなったり、育児や家事を思った通りにできない自分に落ち込んだりします
頑張ってしまう人ほど、このギャップは辛く、孤独を感じやすくなることでしょう
孤独への支援
これは高齢出産位限ったことではありませんが、子育てする親は地域の中での関係性が希薄化しており、それが親の孤立を招き、児童虐待の要因にもつながりかねないことは、いうまでもありません
子育ては今も昔も変わらず、地域社会との交流や人間関係を広げる機会でもあります
子どもを通じて友人が増えたり、子どもの育ちを見守ってくれる近隣の存在があれば、子育てに安心し喜びを感じることができるでしょう
そのきっかけを我々保健医療従事者がもっと意識して作っていく必要があるね!
高齢出産のメリット
では、高齢出産は問題ばかりかというと、メリットもあります
高学歴や仕事での社会活動は、知識量が多くなり、情報を取捨選択する力も培われています
産科的なリスクへの自覚を持つことで予防行動につながったり、育児を見据えた準備や調整も自ら取れます
十分な情報提供を行い、適切なアドバイスと一緒に考える機会を作ることが重要
真面目で仕事がバリバリできるタイプには、「満点を取りたい」という人も多く、子育てでうまくいかないことがあると減点、「自分がいけなかった」と思いがちです
子育てに完璧なものなどありません。
ましてや点数化できるものでもありません
少し肩の力を抜いて、それでいいと思えるように導こう!
これには1回限りの関わりでは逆効果の場合もあり、継続的な関わりとそこで培う信頼が必要になります
産後ケアの活用
妊娠中から育児にかけて親子と継続的な関わりを持つためには、子育て世代包括支援センターを通じたサポートが有効になるでしょう
親子の情報を把握し、継続的な支援を行うことが可能ですし、妊産婦にとっては「まず相談できる場」として機能します
その中で、産後の支援の一つとして、産後ケア事業の活用は重要です
産後ケアとして求められるニーズは多様で個別的です
例えば、出産による身体的疲労感が強い人には、児を預かり、まず十分な睡眠をとってもらうことが優先的なケアになります
授乳にトラブルのあるケースは授乳のケアが、産後うつなどメンタルケアが必要な人にはメンタルケアがというように、その人の背景と状態から、今最も優先されるケアは何かをアセスメントし、本人と調整してケアを組み立てていく必要があります
メンタルケアは、言葉で表出される状態と求められる本当のケアは違うところにある場合も多いため、ケア提供者の経験と感受性は重要な要素になってくるね!
母親への支援の視点を持つ
一貫して言えることは、産後の女性は、出産という大仕事を終えた後で、「みんなに助けてもらいたい」「優しくしてもらいたい」という思いがあることです
産後は家族や専門家も児のケアに集中しがちだね!
しかし、母親となった女性にもまだまだ助けが必要です
本来であれば、床上げ21日までは女性はほとんどの時間を横になって過ごし、食事や身の回りの世話をしてもらうことで、心身のエネルギーを補給して、自分の回復後子どもの世話に集中できたのです
この時期を誰にも頼らず、あるいはパートナーと2人で、頑張って乗り切ろうとすることは、女性が自分自身のエネルギーをすり減らして、心も体もギリギリのところで踏みとどまるような危うい状態と言えます
医学的には健康と診断される産褥の状態であっても、心身が不安的なまま過ごすことは、親子の愛着形成や夫婦関係、仕事への復帰などに支障をきたす
この状態は社会的に健康であるとは言えないのではないでしょうか
児童虐待の予防や産後うつの予防という観点からも、特に高齢出産婦に対しては、個別集中的な産後ケアが必要であると言えます
継続した支援
出産直後は身体的な休息が十分に取れた女性たちにとって、次の壁は産後3か月までの孤独感との戦いです
1か月健診が終わると医療機関とのつながりはなくなり、新生児訪問や乳児家庭全戸訪問が終わると保健分野とのつながりもなくなります
3〜4か月の乳児健診を個別健診で行っている自治体も多いため、保健師や助産師などの専門家との関係が絶たれ、母子二人きりで長時間を過ごし、誰かと会話することもないまま育児に追われて1日を過ごすことで精神的に追い詰められるのがこの時期です
このような女性たちにとって、デイケア型やアウトリーチ型の産後ケアはリフレッシュと自己肯定感を取り戻す機会となるね!
児の成長そのものや自分の育児方法がそれでいいのか確認したい、助産師と話すことで安心できる、自分のことを気にかけてもらえて嬉しいといった意見が産後ケアの感想として聞かれます
時には、パートナーとの関係や親との関係などカウンセリングさながらの事情を助産師に打ち明けることも少なくありません
ショートステイ型の産後ケアももちろん重要ですが、デイケア型やアウトリーチ型の産後ケアも、育児のモチベーションを上げ、女性自身が本来持っている力を高めていく効果があると感じられます
高齢出産の流れは変えられません。
社会全体で出産・子育てを支えるためには、産後ケアを児童虐待予防や産後うつ予防の柱にしっかりと位置づけ、一人一人を丁寧にケアすることしかないと考えます
個別の丁寧なケアこそが、おそらく費用対効果の高い施作になります
支援の力を伸ばす
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