低出生体重児の増加が指摘されて久しく、母子保健関係者としては早産児、低出生体重児やその家族に接することも多いです
早産児・低出生体重児の親は我が子の成長に不安を抱えることが多いです
この記事では、早産児や低出生体重児の現状や考えられるリスクなどを解説していきます
早産児・低出生体重児の現状
出生時の体重が2500g以下の赤ちゃんは低出生体重児
在胎週数が37週未満の赤ちゃんは早産児
80年代頃から早産児・低出生体重児の割合は増加してきました。
2000年代頃から全出生数の約10%が低出生体重児です
データ的には日本の新生児医療は、世界で最も水準が高いと言われており、週数の早い早産児の生存率は、日本とスウェーデンが世界で一番高いです
日本では生後4週間以内に亡くなる新生児死亡率は1000人あたり1人を切っていて、亡くなってしまう子の多くは救命が難しい先天性異常のケースです
東京大学でも、200g代とかなり小さく出生した子が、退院して帰宅した例があります
後遺症
ただ、死亡率は下がったけど、後遺症が残ったり、在宅で療養が必要な子が増えてきているよ!
また、在胎週数34〜40週では、1週おきに、将来の知的発達に差が出てくることもわかってきました
在胎週数34〜36週で生まれる子を後期早産児と言います
これまでは正期産の37週になったらすぐに帝王切開による出産を行うケースもありましたが、こうした判断が適切かどうか、議論されています
低出生体重児の要因
出生体重が少なくなるのは、早産と在胎不当過小が原因として挙げられているよ!
これらが生じる背景として、以前から「妊婦の痩せ」による胎児の低栄養と多胎が指摘されていました
多胎
お母さんがお腹で育てられる赤ちゃんの体重は5kg程度が限界と言われており、双子だと一人の体重が2500gくらい、三子以上になるとさらに赤ちゃんの出生体重は少なくなります
現在も「妊婦の痩せ」は要因の一つですが、多胎に関しては、生殖医療に関するガイドラインができ、三つ子、四つ子などは減ってきました
高齢妊婦
以前は難しかった高齢での妊娠・出産も周産期医療の進歩により可能なケースが増えてきていることから、最近では、妊婦の高齢化が低出生体重児出産の大きな要因になっています
高齢出産がさらに増加しつつある最近の傾向を見ていると、今後低出生体重児の割合は増えていくのではないかと予測されます
SGA(在胎不当過小)
在胎週数に比して体重が増えないことをSGAと言う
SGA児は、乳幼児〜小児期には問題がなくても大人になってから生活習慣病の発症リスクが高くなると言われており、これをDOHaD説と言います
胎内で大きくなれない状態で週数を稼ぐために居続けることは必ずしも赤ちゃんにとって好ましい状況とは言えない
SGA児の場合は、週数を稼いだほうがいいのか、早い段階で出産し、NICUでしっかり栄養を与え治療をしていくのか、さまざまなバランスを考慮して治療にあたるよ!
早産児・低出生体重児の疾患と治療
以下で想定する赤ちゃんは1000g未満の超低出生体重児ですが、将来まで影響する恐れのある概評的なリスクとそれに対してNICUで現在行われている治療について簡単に紹介します
肺:呼吸窮迫症候群と慢性肺疾患
肺そのものができ、さらに肺を広げるために必要なサーファクタントという物質が生成されるのが22週以降です
呼吸窮迫症候群はサーファクタントを作れないために起こる
治療
最近では未熟な肺でも人工呼吸器や酸素投与などの医療サポートにより呼吸自体は可能です
未熟な肺の使用→肺が痛む→慢性肺疾患という肺の形が普通ではない状態になる
慢性肺疾患になった場合、退院後も在宅で酸素療法が必要になるケースもあります
成長とともに肺胞は育つので酸素療法は次第に必要がなくなります
22〜24週で生まれたこの10%程度が在宅酸素療法を行なっているよ!
心臓:動脈管開存症
胎内にいるときのみ使われ、産後は自然に閉じる動脈管という血管があります
早産児はこれがなかなか閉じないことがあり、そのままにしておくと心不全になるリスクが高まります
治療
薬や手術によって人工的に動脈管を閉じる処置が行われます
脳:脳室内出血/脳室周囲白質軟化症
脳室内出血
脳室内出血とは脳室の中や周囲で出血が起こることです
脳室内に血が溜まると髄液が流れなくなり、脳障害や水頭症を起こしてしまうため、髄液の流れる道を作るための手術が必要になります
最近では、インドメタシンという薬が脳室内出血の予防に使えることがわかり、リスクの高い児には薬を予防的に使うようになり、発症総数が減少してきています
脳室周囲白質軟化症
脳室周囲白質軟化症(PVL)とは、脳室の周りの白質という部分にある神経繊維が死んでしまうと、頭からの指令が体に伝わらなくなり、脳性麻痺になってしまします
原因は主に絨毛膜羊膜炎をはじめとする母体感染で、30週など週数が進んでから生まれた場合でも発症することがあります
治療ができないため、発症すると生涯のハンディキャップとなるよ
しかしすぐには症状がはっきりしないため、退院前にMRI検査によって脳室周囲白質軟化症の有無を確認します
眼:未熟児網膜症
通常は妊娠の長い期間をかけて徐々に目の血管が網膜全体を覆うように広がって成長していくのですが、早産によって突然酸素の多い環境に晒されると、網膜の血管が異常に発育し、血管が網膜を押し上げ、網膜剥離の状態になることがあります
これを未熟児網膜症と言います
レーザー治療
網膜は一度剥がれると治療することが難しく、失明してしまうケースもあるため、未熟児網膜症のリスクのある子には増殖する血管をレーザーで潰す光レーザー凝固治療を行います
以前はごく小さく誕生した場合、片目もしくは両目ともに失明してしまうケースもありましたが、最近は光レーザー凝固治療などにより完全に失明する子は少なくなったよ!
しかし屈折異常などが残り、眼鏡が必要になる子が多くいます
骨:くる病
胎児は通常、34週以降になると母親から骨を作るカルシウムやリンを大量にもらいます
34週以前に生まれた子は、これがもらえないため骨や歯が脆くなってしまいます
対応
NICUでは、カルシウムとリン、タンパク質を強化した特殊な低出生体重児用ミルクを与えたり、母乳の場合はカルシウムとリンを強化するパウダーを混ぜて飲ませます
こうした治療もあり最近では骨折しやすい子などはほとんどいませんが、一方で、将来の最終身長が低い可能性なども指摘されています
退院後の注意事項
感染症
早産児・低出生体重児はNICU入院中は感染症にかかりやすくはありますが、治療後に退院して家に帰る時期にはそこまで神経質になる必要はありません
また、最近は早産の子もNICUで普通のスケジュール通りに予防接種を行うよ!
早産児・低出生体重児の感染症で問題になりやすいのはRSウイルス感染症ですが、早産児にはシナジスという薬で予防できます
発達障害
早産で生まれた子には発達障害のある子が多くなります
保育園・幼稚園に通うようになると問題が出てくることがあります
発育
早産児の場合、誕生日からの月齢ではなく、出産予定日からの月数である修正月齢で成長を見ることが大切です
暦月齢でみると成長曲線の正常範囲の中に入らなくても、成長曲線のラインに沿って成長カーブを書いていれば大丈夫!
正常範囲に追いつけないことに焦るのではなく、成長をゆっくりと長い目で見ていく必要があります
月齢と修正月齢双方における身長・体重を成長曲線上にプロットしていくと成長曲線のカーブに沿っているか、その子なりに育っているかがわかりやすいと思います
通常は1500g以上で生まれた子は1歳半まで、1500g未満で生まれた極低出生体重児は3歳まで修正月齢で見ていくよ!
まとめ
在宅医療が必要な場合、親は夜中数時間毎に起きて吸引を行うなど、身体的にも精神的にもストレスの多い状況になります
また発達障害がある場合は、成長とともに親の悩みも深まっていきます
こうした親子に定期的に関わるなど必要なサポートをしてほしいと思います
「低出生体重児保健指導マニュアル」には低出生体重児を持つ親への支援に必要な知識などについて記載されています。
これをうまく活用して支援にあたるといいと思います
退院後の子を一時的に預かるレスパイトを行っている医療施設もありますが、退院後の生活へのサポートは不十分なのが現状です
今後は医療現場と地域とが連携し、親子にとって必要なサポートを考えていくことも必要です
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