【支援者向け】新生児期の項目ごとの不安への支援のコツ5選

初めての赤ちゃんを育てる時、親は小さなことにも不安を抱えてしまうものです

この記事では、保護者からよくある質問とそれに対するケアの方法を説明します

最後には、初めてのお子さんを育てる保護者をどう支えるかについて提案します

この記事がおすすめな人

・母子保健関係者
・新生児の支援に関わる人

新生児期の保護者からよく寄せられる悩み

小児科医に相談して良いのかどうかを判断しかねている保護者は多く、
「何かありますか?」
と問いかけるだけでは質問が返ってこないことも多いです

そのため、しっかり時間をとって、なんでも相談していただけるように、気づいた点などを雑談を交えてお話しし、時には20分ほど時間をかけることも必要です

体重:体重が増えない、体重が増えすぎる

:乳児湿疹、オムツかぶれ、脂漏性湿疹(頭皮のガサガサ)、じゅくじゅくしている

見た目・形状:頭の形、耳の形、血管腫、サーモンパッチ、ウンナ母斑、異所性蒙古斑

目・耳・鼻:目やに、耳が臭い、鼻がなってしまう(苦しそう)

消化管:便秘、よくいきむ、ゲップしない、お腹が張ってしまう

授乳:適切な量かどうかわからない、頻回授乳で眠れない(ずっと欲しがってしまう)、全く起きてくれない、乳首を咥えてくれない

姿勢:反り返ってしまう

支援のコツ

体重の悩み

増えない

体重が増えないことに悩む母親へのサポートで一番大事なのは、母親が完全母乳、混合、完全ミルクのどれを希望しているのかを確認すること

尋ね方によっては追い詰められてしまう母親も多いため、どれを選んでも母親と赤ちゃんの見方としてサポートすることを、明確なメッセージで伝えていく必要があります

その上で母乳希望であれば、授乳回数の検討、授乳指導を行い、母の疲労度、周囲のサポート確認し、助産師のサポートへ繋げていきます

混合栄養であれば、児の体重を元に適切なミルク量を大まかに説明します

増えすぎ

体重が増えすぎることに悩む母親へのサポートは、以下のことを説明します

母乳栄養の場合

コントロールは難しいこと、生後3〜4か月で授乳量が自然と減ってくることが多く、体重増加は落ち着いていく可能性が高い

混合・完全ミルクの場合

ミルクを増やさないように説明し、哺乳瓶の工夫などで哺乳にかかる時間を長めにすることを提案

あまりに早く飲み終わってしまう場合は、哺乳瓶の乳首自体について検討が必要です

穴が裂けている場合があることなどを説明し、チェックするよう伝えます

肌の悩み

乳児湿疹

入浴、保湿、室内環境の3つが大事

入浴については、刺激の少ない石鹸を使用し、保湿については、無香料低刺激の保湿剤を塗布するように説明します

カバさん
カバさん

ドラッグストアなどで手に入る石鹸や保湿剤には、表に無添加と書いてあっても、ハーブなどの香料が添加されているものもあるため注意が必要だよ!

室内環境としては、ダニなどの対策や、料理に伴う飛沫など肌の刺激となるものをなるべく除去すると良いでしょう

家で卵料理をしないようにすると改善したケースもあります

脂漏性湿疹

同じような症状を呈するマラセチアやカンジダなどの感染症の場合もあるので診察が必要なケースもありますが、基本的には脂の分泌が多すぎることで起こるため、皮脂の過剰分泌を抑える必要があります

過度に擦らず、泡立てた石鹸で優しく洗浄し、保湿剤を塗布する

様々な保湿剤を重ねて塗りすぎて、脂漏性湿疹となっていることもあります

発赤がある場合はステロイドや抗真菌薬による治療が必要なことがあるため、受診するようにお話しします

見た目・形状の悩み

血管腫

いちご状血管腫は盛り上がってくる前にレーザー治療を行うことで、早期治療を試みることができます

隆起してしまうとレーザー治療は潰瘍化のリスクが上がるため経過観察か、適応があれば、ヘマンジオルシロップ内服が選択肢となります

ヘマンジオルシロップは低血糖に注意が必要であり、循環器に栄養を与える可能性がある薬のため、適正な使用が必要です

ウンナ母斑

ウンナ母斑は半数以上で消えることがありませんが、多くが髪の毛に隠れるため、治療はお勧めしていません

サーモンパッチ(正中母斑)

瞼や眉間、ひたいにできる血管腫ですが、ほとんどの場合、1〜1歳半までに自然と薄くなり消えていきます

成長しても消えない場合、後からレーザー治療が可能です

異所性蒙古斑

大部分は小学校高学年ごろに消えるので、新生児期からレーザー治療を行う必要はありません

10歳を過ぎても残ってしまう場合はレーザー治療の必要性を判断すると良いでしょう

色味の濃い異所性蒙古斑は皮膚深部に色が残る可能性があり、早めのレーザー治療を推奨する施設もあります

耳の形

出生直後はまだ軟骨が柔らかい時期であり、その時期を逃すと矯正が難しくなるため、なるべく早く形成外科に紹介したいところです

頭の形

稀に頭蓋骨縫合早期癒合症により変形もありますがほとんどの場合、むきぐせによる変形です

新生児期からの介入で改善を図ることが可能です

2〜3か月以降ヘルメットによる矯正も可能ですが、生後0〜2か月に適切な指導を行うことで予防できる可能性があり、できる限り産科入院中から指導を行っています

消化管の悩み

排便回数が多く水っぽい

母親に子どもが下痢をしているかどうかを聞くと、下痢ではないと答える人がほとんどです

カバさん
カバさん

1回の排便のうち、どれくらいおむつに染み込んでいるか、排便回数が多くないか確認しよう!

排便回数が1日10〜12回と回数が多い場合、以下の項目を確認し、母乳過多や飲み過ぎによる相対的な乳糖不耐症になっていないか、ミルク消化管アレルギーの可能性はないか、検討します

排便回数が多い時の確認事項

・授乳頻度
・左右それぞれの授乳にかける時間
・排便のタイミング

児の体重増加が正常範囲であると、母乳の産生過多に母親自身が気づいていない可能性があります

母乳の産生量はしっかりある割に頻回授乳になってしまっている場合は、後乳が飲めていないことによるカロリー不足になっていることを想定します

助産師による乳腺炎予防のサポートのもと、片乳のみの授乳など工夫をすると良いでしょう

産生過多のために乳腺炎となり、切開が必要なまで重症化したため、乳腺炎の対策として頻回授乳を指導され、生後6か月まで12回の授乳を続け、困り果てたお母さんが相談にこられた例も経験しました

体重増加が順調であっても新生児期から適切な乳房管理のケアが受けられるようにすることが大切

嘔吐

幽門狭窄、ミルク消化管アレルギーなどの病的なものを除くと、ほとんどがいつ乳と捉えます

腹部膨満からの嘔吐のリスクを減らすには、腹部のケアが大切です

腹部ケア

・綿棒浣腸による排ガス
・ゲップをさせる

ゲップのさせ方については従来の肩に担ぎ上げる方法だけではなく、対面で頭を支えつつ、左側腹部を撫でさする方法も提案しています

その他

反り返ってしまう

SNSなどで脳性麻痺の特徴であると書いているのを読んで不安になってご相談される方がいます

多くの場合、
抱っこが不安定→全身の筋肉が緊張→背筋が伸びる→足も揃えて伸びた状態になる→背筋が鍛えられる→さらに抱っこしづらくなる
という悪循環になっているようです

カバさん
カバさん

なるべく早めにまんまる抱っこができるように説明しよう!

おくるみ・スリング

股関節の正常な発育のためにも、おくるみやスリングの正しい使い方を指導する必要があります

抱っこ紐やスリングなどは様々な種類が販売されており、それぞれに合わせて指導する必要があるため、保護者が使用しているものを持ってきてもらい、装着してもらって指導します

親をどう支えるか

頼ってもらう

孤独感を味わっている母親は多くなっています

「自分の子どものことは自分が一番知っているから」
「自分が守らねば(やらねば)ならない」
と思い込み、他人を頼れない母親も多いです

最近の保護者は情報収集能力が高いのですが、中にはSNSなどの偏った情報を信じた結果、地域の専門家が支援できなくなってしまうケースもあります

地域の小児科医や助産師などの専門家に助けを求めて良いと認識してもらうことが一番の助けになると考えます

出生直後から「頼っていいんだよ」とメッセージを送ることが非常に大事

親と同じ目線になる

また、新生児に関わる専門職として、支援者は保護者の信頼を得るためにも同じ目線で応対する必要があります

疾患にだけ目を向けるのではなく、保護者のバックグラウンドとなっている、育児書やSNS、最新の育児グッズについても目を通しておくことをお勧めします

支援の力を伸ばす

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まとめ

今回は新生児期の項目ごとの不安への支援のコツを解説してきました

たとえ何人目であっても小さな赤ちゃんを迎えることは幸せなことであり、大変なことでもあります

保護者に信頼していただき、共に赤ちゃんの成長を見守り、父母の成長を見守ることが大切であり、この職業の醍醐味でもあると考えます

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