代理ミュンヒハウゼン症候群を聞いたことがありますか?
ハイリスクの家庭を支援している方は特に知っておくべきことです
この記事では代理ミュンヒハウゼン症候群の解説から治療について解説していきます
代理ミュンヒハウゼン症候群とは
両親または養育者によって子どもに病的な状態が持続的に作られ、巧妙な虚偽や症状の捏造によって作られる子ども虐待の特異な形
死亡率は9〜22%と高く、子どもの被害を最小限に食い止めるために早期に発見して介入する必要があります
診断基準として以下が挙げられています
①身体的あるいは精神的な症状を相手に捏造し、怪我や病気を誘発させる
②他者に対し、子どもが病気、障害、怪我を負っていることを示す
③外的報酬がない状況でも作為行為が見られる
④その行為が妄想性障害などほかの精神障害によって説明できない
また診断がつけられるのは被害者ではなく加害者の方とされています
臨床的特徴
被害者の特徴
男女差はなく、5歳以下が多いとされていますが思春期でも見られ、年長の子どもほど、親と結託する
経過を経るにつれ、自身が自ら匂わせる作為症を発症することは稀ではありません
臨床症状の領域は多岐に渡り、窒息による呼吸停止、薬物による中毒、痙攣発作、口、鼻からの出血、発疹などの皮膚病変、発熱や高血圧など多彩です
本来であれば不必要な治療による心理的トラウマは、アタッチメント、自己肯定感、対人関係に影響し学業や運動などの活動が限られ、社会的孤立を引き起こすよ
加害者の特徴
95%以上が女性、母親であり、既婚75.8%
平均年齢は27.6歳で45.6%が医療関係者とされ、何らかの精神疾患の治療歴、人格障害の診断歴などがあり、夫婦関係は概ね悪く、「子どもの病気に基づいた関係」であることも指摘されています
夫は医療児童虐待が明らかな場合でも妻と結託する傾向が見られます
特に医療従事者の注意を引きたい、認めてほしい、あるいは騙したいという動機、加害者の生育歴に母親から拒絶された早期のトラウマなどが仮説として挙げられます
アセスメントすべき項目
行動観察
・助けを求める
・深刻な不安(代理心気症)
・妄想
・過剰な心配
・ネグレクト/虐待
・虚偽の訴え(配偶者から親権を奪う目的)
・子どもを頼りない状態に保つ
特に幼少期に他者に負わせる作為症を経験した思春期児童が自らに負わせる作為症を表すことがあり、嫌なあるいは脅威を感じる様な課題やイベントを避けるため、特に親からそうした行動を強化された場合、仮病を使うことがあります
また、自らに負わせる作為症の利得は明らかではありません
意識しての症状か、無意識での症状であるのか、をアセスメントする必要があるね!
病歴の信憑性
過去と現在の小児科医、かかりつけ医とのケースカンファを行い、徹底的な病歴の評価が必要とされます
学校からの記録も必要であり、兄弟が他者に負わせる作為症の被害を受けている場合も多く、兄弟の記録も評価します
一方で、症状を裏付ける様な身体疾患が隠れていないかを確認するため、入念な医学的診断評価を行うことも重要です
親の精神医学的評価
診断に直面した際に、親が精神症状や希死念慮を呈するリスクについて注意が必要だよ
特定の診断プロファイルは確立していないことを念頭に置いておきます
こうした親は、自身の病歴の詳細、成育歴、夫婦関係性などについても嘘をつくかもしれず、小児医療従事者との関わりを楽しんでいる、という状況も見受けられます
子どもの精神医学的評価
親子関係が発達的に適切なものかどうかに注意を払います
他者に負わせる作為症の被害者はアタッチメントと分離について心理的問題があり、加害者との極端な保護的関係にあることが多いとされています
他者に負わせる作為症の診断がついて親から離された場合、子どもが苦悩することが多いため、早い段階から、子どもと治療的な関係を結んでおくと良いね!
代理ミュンヒハウゼン症候群の診断手順
①子どもの病歴を詳細に取る
これまでに関わりを持った医療機関から情報を得る
②多職種連携
保健所・保健センター、福祉機関(市町村ケースワーカー、保育園)、学校など、これまでに関わった機関から情報を得る。
情報収集し、戦略を立てるために、関係機関の間で、ネットワークミーティングを開くことが望まれる
③直接保護者(加害者と思われる)から、これまでの病歴を詳細に聴取する。
できる限り、ビデオやテープに記録する
④入院中はできるだけ、養育者と子どもだけにせず、できれば気付かれぬ様にビデオカメラでもモニターする(医療倫理コンサルテーションが必要)
⑤子どもを養育者から分離して、少なくとも3週間は観察する。
児童相談所及び弁護士と協議し、一児保護委託を検討するとともに、その後の法的な対処も準備する
治療
治療の焦点は親による虐待行為と、子どもに対する姿勢と行動への介入だよ!
親の孤独感を軽くし、認知の歪みを訂正するとともに、夫婦関係が子どもへの虐待にどう関与したかを知ることを助けることが目標となります
家族再統合は介入が成功するという期待を強く持てるケースにおいてのみ試すべきであり、深刻な児童虐待、虐待行為の否認、援助を拒否する、深刻な人格障害、アルコール/薬物使用などが、予後不良因子と言われています
「この母親が虐待などするはずがない」と、医療者に思わせることも多く、担当者が「何かおかしい」と感じた時、一人で抱え込まず、多職種と連携し、子どもを守るための方策を計画し実行することが大切です
特に虐待と作為を否定する親の治療は困難で再犯率が高いよ!
心理療法
母親への介入を成功させるには父親に対する心理教育とペアレンティングが重要ですが、父親も他者に負わせる作為症を否定し続ける場合には治療が難渋します
薬物使用やDVなどの問題がある場合、それらの対応も求められます
子どもの治療に心理療法は必須です
予後不良因子は、加害行為が2年以上続いた、居住先が決まらなかった、母親との接触が監視されていなかった、母親が十分な治療を受けなかった、母に依存する父との接触、などが挙げられます
予後は転換性障害、心的外傷後ストレス障害を含むメンタルヘルスの問題を長期にわたって抱えると言われているよ!
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