新生児期は赤ちゃんが外界での生活に慣れる大切な時期だと言われます
一方、親にとっては大きく変化した生活寛容の中で戸惑いを感じながら育児をする時期にあたり、とりわけ母親には大きな負担がかかると言われています
本稿では、新生児期に受ける検査や、母子保健関係者に求められる新生児期を育てる保護者への支援のあり方などについて解説していきます
新生児期とは
新生児期の特徴
新生児とは、生後28日未満の時期の赤ちゃんのことを指します
赤ちゃんは身体が未発達の状態で生まれてきており、新生児期の視力は0.02〜0.05程度です
一方聴覚は、音を聞くことはできますが、音の聞き分けなどはまだできません。
新生児期の脳
脳は、生まれてから1歳ぐらいまでの間、猛烈な勢いで発達するよ!
脳の成長と共に頭蓋骨も広がる必要があるため、新生児の頭蓋骨は柔らかく、切れ目が入って塞がっていない状態です
1歳から1歳半ごろに切れ目がくっつき、骨が硬くなっていきます
時々生まれつき頭蓋骨がくっついている「頭蓋骨縫合早期癒合症」という病気を持って生まれてくる子がいます
頭蓋骨に切れ目がないと、脳の成長に影響する
サーカディアンリズム
また新生児期は、サーカディアンリズム(概日リズム)がまだ形成されておらず昼夜の区別がつきません
そのため新生児期の赤ちゃんは、お腹が空いたら起きて、授乳したらまた眠るというのを頻繁に繰り返します
母乳だと2〜3時間ごとに授乳が必要なことも多いため、この時期のお母さんはとても大変だよ!
「あと1〜2ヶ月もすると、一度の睡眠時間がぐっと伸びて授乳の間隔があくようになります」とお母さんたちに伝えてあげる
最近の出産の特徴
日本の新生児死亡率の低さは世界トップクラスです
人口動態調査によると2021年の新生児死亡率(1000人出生数あたり)は0.8です
2001年の新生児死亡率が1.6のため20年で半減している
もともと低かった新生児死亡率がさらに下がり続けているのです
一方、早産児や低出生体重児の割合には大きな変動はないよ!
ここ20年の早産の割合は5.7〜5.8%程度、低出生体重時の割合は9%程度で横ばいとなっています
新生児死亡率が低い要因
ハイリスク妊婦の集約化
新生児臨床研究ネットワーク調査データを見ると「アウトボーン」(出生後に他院から搬送された赤ちゃん)の件数は年々減少しています
これはハイリスクな妊婦を出産前からNICUのある周産期医療施設に紹介し、そこで出産ができているということを意味します
こうした支援は、新生児死亡率の低下や出生後の予後改善などに確実に寄与しています
妊婦健診
新生児の死亡原因を見ると日本は先天性疾患によるものが多く、他国と比べて早産によるものが少ないのが特徴です
さまざまな理由が考えられますが、「母子健康手帳」を含め世界的に評価されている日本の妊婦健診システムが早産の予防にも有効に機能していることが理由の一つとして考えられます
医療的ケア児
また近年の傾向として、これは新生児に限らないことですが、日常的に人工呼吸器や胃瘻などを使用し、痰の吸引や経管栄養などの処置を必要とする「医療的ケア児」が増加しています
現在、新生児だけでなく小児も含め全国に約2万人の医療的ケア児がいると推計されています
医療的ケア児の多くがNICUで管理された経験のある子だと思います
生まれた時からしっかり管理できることで助かる命が増えた
マス・スクリーニング検査
新生児マス・スクリーニング検査では、生後4〜6日に足裏から採血し、代謝やホルモンの異常に関わる疾患(先天性代謝異常症など)を調べる
この検査の対象疾患は検査の負担が少なく治療法があり、かつ早期に診断して治療することで予後が非常に良くなる、あるいは悪化を防ぐことができるものです
以前は6疾患しか検査の対象にされていなかったのですが、新しい検査法としてタンデムマス法が開発されたことにより、約20疾患が対象となりました。
公費負担で検査できるのは約20疾患ですが、最近は原発性免疫不全症、脊髄性筋萎縮症なども追加で検査できるようなっています
これらの疾患を助成の対象に追加しての検査に積極的に取り組んでいる自治体もあるよ!
新生児聴覚検査
現在は90%以上の産科施設で行われています
通常は退院するまでに行うことが多いようですが、1か月健診時に検査する施設もあるようです
新生児聴覚検査にはOAE(耳音響放射)と自動ABR(自動聴性脳幹反応)の2種類の方法があります
OAEは、耳の機能に問題はなく脳の神経などに異常があった場合、見逃されてしまうことが指摘されているよ!
親が家庭で気をつけること
感染症
新生児期に限らず、乳児を持つ親が気をつけなければならないものの一つに感染症があります
中でも最も注意したいのが「RSウイルス感染症」だね!
この感染症は、呼吸器にダメージを与えるため、乳児がかかると喘息のような症状をきたします
亡くなる子は少ないですが、非常に重症化しやすい病気です
乳児の中でも早産児や先天性心疾患などを持つ子、ダウン症児は重症化しやすいので、特に注意が必要です
このようなハイリスクの子には重症化を予防する治療薬(シナジス)があり、健康保険が適用されるので、注射で投与を受けることが大切です
基本的なことですが、赤ちゃんの周囲の人が風邪をひかないこと、手洗いうがいをしっかりすること、風邪を引いたら赤ちゃんに接触しないことが大切
乳幼児突然死症候群
新生児期から生後半年までは乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症が多いことが知られています
1歳までは赤ちゃん用の硬めのマットに仰向けに寝かせ、顔の周りにふかふかの枕やぬいぐるみなどを置かないようにすることなどを親にアドバイスすることが大事
喫煙はSIDS発症の大きな危険因子であることがわかっているので、母親自身の禁煙に加え、周りの人も赤ちゃんのそばでは喫煙を控えるように注意を呼び掛けたいものです
それから、お母さんが赤ちゃんと添い寝して幸せを感じることはいいのですが、うっかりお母さんがそのまま寝入ってしまうと赤ちゃんに覆い被さって窒息させてしまうことがあります
海外では添い寝を禁止している国が多くあるよ!
日本では添い寝は禁止されていませんが、注意は必要だと思います
新生児期の受診の目安
活気があるかどうか
赤ちゃんの様子で気になることあっても、基本的に表情が良く、おっぱいがのめているようなら大丈夫です
逆にお母さんから見て赤ちゃんに元気がないと思ったら受診する必要があります
元気がなくおっぱいを欲しがって泣かない、おしっこが出なくてオムツ交換の回数が減るのは脱水のサインです
明らかにぐったりしている場合は急いで受診しよう!
ミルクアレルギー
以前は腸炎として診断されていたかもしれないので症例が実際に増えているかどうかは不明です
ミルクを変えるとこれらの症状はおさまります
人工乳の方がリスクは高いように思うけど、母乳でも起こるよ!
人工乳で発症した場合は、さらに消化しやすい人工乳に変える、母乳中の蛋白に反応しているかもしれないので母親の食事制限をするなどで対応します
親への支援のポイント
この時期は特にお母さんへの支援が一番大事なことだと思います
先ほどもお話しした通り、新生児期は授乳が頻回でお母さんたちは長時間続けて眠ることができません
また出産を契機にメンタルを崩す、マタニティブルーズのお母さんも多いです
父親や祖父母など母親の周囲の人がサポートする環境づくりが大切
一方で、祖父母が高齢で育児を手伝えないなど周りのサポートが期待できない母親が多くなっているように感じます
さらに多胎児かつ低出生体重児ともなれば、母親だけで育児をするのは極めて困難です
退院の前に必要時には病院と地域の保健師や訪問看護師との連携が必要
そうして育児環境をしっかり整えてから退院してもらうケースが少なくありません
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まとめ
今回は新生児期について解説してきました
今回の記事の要点をまとめると、以下の4点があります
この記事が、少しでもお役に立てたのであれば幸いです
最後までご覧いただきありがとうございました
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