口は「食べる」「話す」など、人が生きていく上で欠かせない行為を担う部位です
口内の健康はQOLにも影響すると言われ、保護者も子どもの口腔ケアに高い関心を寄せています
乳幼児の口を健やかに育むためには、どのようなことに留意すれば良いのでしょうか
乳歯が虫歯になると
乳歯に関して言えば、第一はやはり虫歯、中でも気をつけたいのは一見「軽い」ように見える虫歯です
部分的に少しだけ黒い・色が変わってきた・少し欠けている
などの虫歯を、この程度なら大丈夫だろうと保護者は思いがちです
しかし、乳歯の場合、歯の欠けや穴に気付いた時点で、実は見えない歯の内部に虫歯は広がっていることがあるのです
虫歯が広がり歯の形が変わってしまうと、栄養摂取や成長に影響があるよ!
歯が欠ける影響
例えば、歯が欠けたケースでは、初期は痛みを生じませんが、欠けた部分が広がるとそこに食べカスが入り込みます
すると噛み合わせて圧力がかかっただけで食べかすが歯髄を刺激し痛みが生じます
そういった箇所がいくつもできると噛むと痛いから食べたくない、ということにつながるのです
抜歯の影響
虫歯の治療の開始が遅れ、歯を抜くことになると、残った歯にも影響を与えます
歯は健康な状態であれば隣り合った歯同士が互いに軽い力で押し合って位置を保っています
しかし、隣の歯が抜けて押す対象がなくなると、空いた歯の空間に残った歯が寄っていってしまうのです
奥の歯が前方に移動することが多いよ!
永久歯への影響
永久歯は乳歯の位置に合わせて生えてくるので、乳歯が本来あるべき位置から移動してしまうと、永久歯も異なる位置に生える
特に6歳頃に生えてくる第一大臼歯(永久歯)は噛み合わせの基本となる重要な歯です
これが6〜7歳の時点で本来の位置から違うところに移動してしまうと、歯並び全体に影響を与えます
永久歯は12歳頃に生え揃いますが、この時点で奥歯全体の位置がずれてしまうんですね
永久歯は一生使うものですから、ずれたままずっと使い続けることになります
もちろん矯正治療は可能ですが、大臼歯という大きい歯に力を加えて正しい位置に押し戻すのは時間も費用もかかりますし、何より本人には相当な負担です
乳歯の虫歯を予防すること、定期的に歯科を受診し虫歯を小さなうちに発見・治療することが大切
歯並びについてより詳しい対応のポイントを知りたい方はこちらを参考にしてください↓
・「幼児の歯並びと噛み合わせ」
永久歯が虫歯になると
永久歯の治療
口は栄養の入り口ですから一生大事にしなければいけません
虫歯で小さい穴ができたら詰め物で治療できますが、大きく穴が開くと治療が難しくなります
歯の神経をとらなければいけない場合は、神経を抜いた後に被せ物をして歯の形を作る治療を行いますが、治療した歯は強度が落ちてしまいます
そうなると、強く噛み締めた拍子にヒビが入ったり、割れたりといったトラブルも起きやすいです
歯は一度侵されてしまうと完全に元の状態には戻らない
8020運動
日本歯科医師会は80歳まで20本の歯を保とうと「8020」運動を行ってきました
歯をなくしてから「しまった」と思っても、失った歯は戻りません
まずは乳歯を虫歯にしないことが大切
虫歯の原因
①歯の汚れ
細菌が増殖
虫歯の第一の原因は、歯の周囲に汚れが長時間残ること
汚れが付着しやすいのは歯の根元(歯と歯茎の境目)、それに歯と歯の間です
汚れがある→細菌が増殖→細菌が作り出す酸によって歯の表面が溶ける→虫歯
歯肉炎
歯の汚れは虫歯だけでなく、歯肉炎を起こしてしまうのも問題です
歯の根本が細菌の出す毒素などの影響で赤く腫れぼったくなり、時に出血することもあります
全身への影響
重度の歯周病は内臓機能に影響を与えます
口内の細菌が血液を介して内臓や脳など全身に悪影響を与えてしまうよ!
ですから内科的な病気を持っている子や入院加療を必要としている子などは、歯肉炎にも注意していただきたいです
②ミュータンス菌
ミュータンス菌とは、虫歯の原因菌とされているレンサ球菌
実は乳歯が生える前の時期は、ミュータンス菌は口内に定着しないよ!
けれど、歯の萌出後、ミュータンス菌が赤ちゃんの口に入ると、歯の表面にミュータンス菌が付着し、居着いてしまうのです
家族が原因⁉︎
子どもの口腔の細菌環境は基本的に家族からの伝播で作られています
ミュータンス菌は母親から赤ちゃんの口に移行することが最も多い
一方、歯の萌出後2年間ぐらいミュータンス菌を口の中に定着させないと、その後は、ミュータンス菌が口に入っても定着しないという研究報告があります
この時期に一生懸命虫歯予防に努めよう!
予防策
出産前の歯科治療
出産前にお母さんの虫歯を治療しておく
母親の口腔内の虫歯原因菌を減らしておくことは子どもへの伝播を防ぐのに有利になるのです
妊娠中の歯の健康について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください↓
・「妊婦の口腔内の状況」
母親がキシリトールを摂取
キシリトールでは不溶性グルカンが賛成されないため、ミュータンスレンサ球菌群菌が歯から剥がれやすくなります
母親のミュータンスレンサ球菌群菌は増殖が抑制され、歯垢除去が容易になるよ!
そして、「歯に付着しにくい」ミュータンスレンサ球菌群菌が母から子の口腔内に侵入したとしても定着が阻害されるのです
日々のケア
大人が口にした食べ物や食器を子どもの口に入れないようにしよう!
とはいえ、たいていの親御さんはミュータンス菌をお子さんに移してしまいます
その前提で考えて、まずは歯磨きやフッ化物塗布を行うこと、デンタルフロスを用いることが大切です
フロスは小学生でも扱いが難しいので、親がやろう!
・必ず大人が仕上げ磨きをする
・磨いてあげるときの歯ブラシはペングリップで持つ
など、基本的なことが母子健康手帳に記載されています
子ども本人に歯ブラシを持たせて練習させるのもいいですが、歯磨き中に子どもが転んで歯ブラシを喉や頬に突き刺す事故が起きているので、歯ブラシを口に入れたまま歩き回ることがないようにしてください
幼児健診の活用
虫歯を作らないために何ができるのかを理解せずになんとなく磨くだけでは、ケアとしては足りないかもしれません
国は法律で1歳6か月児、3歳児に歯科健診を行うことを定めている
自治体によっては1歳で行うところもあるようです
そういった健診時に指導を受けよう!
1歳前は、健康な子でしたら特段のチェックはなくて良いと思いますが、保護者が子どもの口について何か変だと思ったら、気軽に小児歯科を受診してほしいと思います
口に関する親の悩み
乳幼児の保護者からよく寄せられる悩みは
「歯が生えてこない」
「歯の生える順番が違う」
などがあります
大きな問題はないケースが多いのですが、ごく稀に全身的な病気などが関わっていることもあります
背景に病気が潜んでいないか一度診察を受けよう!
また、出生児や生後すぐから生えている先天歯は、授乳に影響することもあるので、早めに歯科医等に相談してください
1歳前の指しゃぶりはなんらおかしくありませんが、こうした乳児期からの習癖がずっと続いた場合は、口腔発達に影響を与えることもあります
口の中のことで気になることがあれば1歳前であっても小児歯科を受診しておく
かかりつけの歯医者の見つけ方
日本小児歯科学会の専門医に登録されている医師なら、確実に赤ちゃんを診察できます
日本小児歯科学会専門医は、乳児に対する治療の手段はもちろん、幼児期以降では、その子の理解力に合わせ治療の説明なども子ども本人に伝えるというスタンスを持っているはずです
専門医名簿は学会ホームページで公開されていますので、活用してください
最近の傾向
顎の成長
歯の生える時期や口腔発達のスピードは、以前と比べて特段の変化はないと考えています
ただ幼児期から学童期の食事内容がいわゆる「軟食」になって、顎の成長などに影響を与えているということはあるかもしれません
発達障害
10〜20人に1人くらいの割合で診療時に特別な配慮が必要な子がいます
発達障害や知的障害を持っていたり、家庭に問題があったりと理由は様々です
子どもの理解力が低い場合、親が歯磨きをしようとしても拒否されることもありますし、治療時に口を開けてくれないこともあります
より詳しい対応のポイントを知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください↓
・「発達障害のある子への歯科診療」
歯の怪我はすぐに受診
乳歯の怪我は2~3歳、永久歯ですと7~9歳くらいがピークです
転倒やぶつけてしまうなどが多いのですが、アスファルトやコンクリートでの怪我は当然ながら土よりダメージが大きく、また時間が経つと対処法が限られてきます
直ちに小児歯科専門医を受診しよう!
夜間の場合、地域によっては歯科医師会等が運営する夜間診療所などもありますので、できるだけ早く受診して治療を受けるようにしていきましょう
まとめ
今回は子どもの歯の健康について解説してきました
今回の記事の要点をまとめると、以下の3点があります
子どもの歯の健康のために、もっと知りたい方はこちらを参考にしてください↓
・「子どもの月齢ごとの歯磨きの仕方」
・「子どもの歯の健康のためにすべきこと」
・「奥歯を使って食事ができない乳幼児」
・「歯磨きや爪切り、耳掃除を嫌がる子への2つの対応のコツ」
この記事が、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいです
最後までご覧いただきありがとうございました
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