【支援者向け】後期早産児への支援

後期早産児は在胎週数や出生体重が目立つほど小さくないため、支援者側も問題視せずに支援することが多いです

しかし、後期早産児には正期産児と比べ、さまざまなリスクがあります

この記事では、後期早産児の課題と支援の仕方について解説していきます

後期早産児の課題と成長の過程

我が国の出生数は、2019年についに90万人を割りました

少子化が予想以上に進んでいる中で早産児の占める割合は、2005年以降ほぼ一定数の数値で推移し、2017年では5.7%です

さらに、在胎34週0日から36週6日で出生する後期早産児は、年間4万1826人出生しており、早産児全体の4分の3以上にのぼります

後期早産児は以前ほぼ正期産児と呼ばれていましたが、正期産児以上に注意が必要であることが指摘されるようになり、後期早産児と呼ばれるようになりました

後期早産児や早期正期産児は、在胎39週から41週で出生した児に比べて入院加療や特別な支援を要することも多い

短期予後の問題点

後期早産児は正期産児に比べて呼吸窮迫症候群、一過性多呼吸、動脈開存症、黄疸、敗血症などの疾患罹患率が高く、また、哺乳障害を伴うことも多い

カバさん
カバさん

だけど、在胎36週、体重2500g前後で出生した児は、元気に産まれた正期産児と同様の新生児期のケアを受けていることが多いよ!

これらの児が有する短期的な問題点を考えると、同様のケアで良いのか今一度考える必要があります

また、在胎34週・35週で出生した児が退院後、RSウイルスに感染すると重症化しやすいことが知られています

そのため、RSウイルス流行期には下気道感染の重症化を予防するためにパリビズマブの投与が推奨されますが、以前に比べて流行期に変化が見られており、投与開始時期にも注意が必要です

長期的な問題点

欧米では、後期早産児は学習障害や精神疾患を含む長期にわたる合併症罹患率が高いという報告が散見されます

精神疾患に罹患する危険率1.2倍
脳性麻痺2.7倍
精神発達遅滞1.6倍
統合失調症1.3倍
行動・情緒の異常1.5倍
労働に影響する身体的異常1.4倍
低給与1.1倍
全体IQ85未満2.3倍
行動IQ85未満2倍
正期産児と比べた後期早産児のリスク

精神疾患として、後期早産児は不安・抑うつや注意欠陥多動障害を正期産児と比べて高率に認め、母親のIQ、居住環境、社会環境などを考慮しても、6歳時点での行動異常や認知能力の低下に関連することも報告されています

カバさん
カバさん

両親の社会経済状態が低い場合には、さらに危険性が増すよ!

日本では、後期早産児の多くは、正期産児と同様の乳児健診しか受けていません

母親のサポートに関しても、特別な配慮はなされていないのが現状です

後期早産児の母親は正期産児の母親に比べて産後、育児不安を感じるという報告、また、不安抑うつの程度が重く、ストレスを感じやすいという報告が散見されます

母親の愛着表現は児の脳神経に長期にわたる影響を残します

児の認知能力を向上させたり将来の精神疾患罹患を防ぐためには、母親のメンタルサポートも含めた支援が必要

後期早産児への支援

後期早産児は、正期産児に比べて眠りがちであることが多いです

そのため、母親側から刺激して授乳しなければ授乳回数が減ってしまったり、直接授乳では飲んでいるように見えても効果的にのみ取れていなかったりします

カバさん
カバさん

適切な授乳支援がなされないと、容易にカロリー摂取不足に伴う黄疸や過度な体重減少に陥ってしまうよ!

産科施設を退院する際には以下の状況であるかを確認し、いずれかを満たさない場合は退院の延期あるいは数日以内の受診を考慮しましょう

退院時の状況

・乳汁摂取量が十分である
・体重が安定しているか増加傾向、体温が維持できる
・血清ビリルビン値が安定している〜低下傾向である

前述のような退院後の支援があれば、基本的には1歳までには発育が追いついていきます

後期早産児を持つ母への支援

元気に産まれても、母親は早産となったことに対して喪失感や出産体験への無念さを感じ、妊娠中の生活を振り返って後悔することも少なくないです

早く産んでしまったという児に対する罪の意識や児の状態への不安、さらに将来の成長・発達への不安を持って産後の生活を送る母親も少なくないです

父親・家庭のサポートも重要ですが、在胎36週2500gくらいの児であればさほど小さくもないため、家族は「普通」の赤ちゃんと思って母親にも接してしまうかもしれません

カバさん
カバさん

家族が母親の気持ちを理解し、エンパワーできるように、支援者側が家族に児の状態を伝える必要もあるね!

退院時には、今後予期される出来事を母親に伝えておきましょう

例えば、退院後どのように授乳するのか、直接授乳だけでは十分な乳汁摂取が期待できない場合は搾乳を何回位行なって補足するのかなど、家族も含めて一緒によく相談しましょう

入院期間中に母乳育児が軌道に乗ることは稀であり、退院後も継続支援が必須

その後のフォローは人工栄養児では少なくとも修正40週まで行い、母乳栄養児に対しては直接授乳のみで安定した体重増加が得られるようになるまでは1週間ごとにフォローします

カバさん
カバさん

母乳で育てている母親には搾乳回数・搾乳量、授乳回数を毎日記録してもらおう!

母子保健者に大切なこと

後期早産児とその母親に関わる支援者には、児の発達成長を細やかにフォローすることと同様に、母親のエモーショナルサポートにも重きを置いてもらいたいです

特に、高年初産婦は、母親としての自信や母親であることの満足度得点が低かったり、親・夫も高年のため産後のサポートが受けにくいこともがあります

カバさん
カバさん

エジンバラ産後うつ病自己評価票などのツールを用いてスクリーニングを行ったり、多職種との連携を図ることで、個別かつ継続的なサポートを行なっていこう!

母親自身が心身ともに孤立せずに安定した日常生活を送ることは、児の精神発達にも良い影響を与えます

少子化対策のみならず虐待予防の一環としても、両親の育児不安の軽減は重要で、後期早産児並びに早期正期産児を持つ両親が、安心して子育てができる環境整備の構築は必要です

母親・家族との信頼なくして適切な支援は行えません

母子保健に関わる専門家には、適切な栄養・養育をサポートできる知識とスキルとともに、コミュニケーション能力がより重要な要素となっていきます

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