在胎37週0日から38週6日までに生まれた赤ちゃんは早期正期産児と呼ばれ、同じ正期産である39週以降に産まれた時と比べて様々なリスクが高まると言います
正期産だからといって安心できないね!
この記事では早期正期産児のリスクについて解説していきます
早期正期産児とは
在胎37週0日から41週6日までは正期産ですが、その中でも在胎37週0日から38週6日までを「早期正期産」と呼ぶ
早期正期産児は産科病棟の新生児室や母子同室で診られていることが多く、体格も大きく健康そうに見えますが、正期産児と比べると以下のように合併症のリスクが高いため注意が必要です
呼吸
早期正期産児の5.4%が呼吸障害のためNICUに入院し、正期産児(3.3%)よりも有意に高いと報告されています
呼吸障害としては、新生児呼吸窮迫症候群や新生児一過性多呼吸、無呼吸発作が多いです
早期産児は、見た目が成熟しているため評価が疎かになりがちだが、適切な治療介入が遅れると新生児遷延性肺高血圧症などの深刻な状態に陥る可能性もあり、慎重な観察が必要
新生児呼吸窮迫症候群
新生児呼吸窮迫症候群は、肺の未熟性によるサーファクタント(肺を膨らみやすくさせる物質)欠乏及び活性低下が原因です
サーファクタントは、妊娠中期からⅡ型肺胞上皮細胞で合成・分泌され始めるため、十分に分泌される前に出生すると、肺胞が虚脱(潰れること)して呼吸障害を呈します
在胎36週で1.6%、在胎37週でも0.5%程度が新生児呼吸窮迫症候群を発症します
新生児一過性多呼吸
新生児一過性多呼吸は肺水の吸収遅延・呼吸障害に伴う肺のコンプライアンス(膨らみやすさ)低下、換気量の減少により、大小性に多呼吸を呈します
陣痛に伴うカテコラミンなどのホルモン上昇が肺水吸収を促進するため、未陣痛の帝王切開が新生児一過性多呼吸の発症リスクとなります
予定帝王切開の娩出時期が早いと新生児一過性多呼吸を発症しやすいためできるだけ娩出時期を正期産に近づけた方が良いね!
栄養
低血糖
胎児の血糖は主に母体から胎盤を通して血糖値をコントロールされていますが、出生後はその供給がなくなってしまいます
胎児のインスリンは血糖値に比して相対的に高い状態となっており在胎期間が短い児ほど高インスリン傾向が続くことが報告されています
出生後に低血糖に陥ると、カテコラミンやグルカゴンが分泌され、肝臓のグリコーゲンが分解されて血糖値を上昇させます
しかし、肝臓へのグリコーゲン蓄積は妊娠末期に進むため、早期正期産児ではグリコーゲンの蓄積が少なく低血糖になりやすいです
哺乳障害
さらに、十分な自立哺乳の確立も遅れがちで低血糖が助長されます
吸啜・嚥下の協調運動は在胎32週以降から確立するよ!
早期正期産児は吸啜が弱く眠りがちであることも多く、経口哺乳や直接母乳の確立に時間がかかる場合は経管栄養や輸液を併用する例も多いです
体温
低体温に陥ると哺乳不良、活気低下などにもつながるため体温維持は重要
体温調節は、熱産生と熱喪失のバランスで規定されています
しかし、新生児は熱産生と熱喪失の両面から低体温に陥るリスクが高いです
熱産生
新生児では、物理的熱産生(筋肉の収縮)は極めて少なく、化学的熱産生(褐色脂肪組織による脂肪分解合成)がほとんどで、そのため大量の酸素を必要とします
早期正期産児では、
そもそも熱産生に必要な褐色脂肪組織が少なく、呼吸障害で低酸素に陥りやすい→熱産生されにくい→体は低体温から脱却するためにさらに熱産生しようとする→低酸素血症が助長
という体温と呼吸の両者において容易に悪循環に陥りがちです
熱喪失
新生児は体重に対する体表面積の割合が多く、皮膚の未熟性による不感蒸泄(発汗以外の皮膚や呼気からの水分喪失)に伴う熱喪失が多くなります
黄疸
ビリルビンとは
新生児では、生後1週頃をピークにビリルビンが上昇し、黄疸(生理的黄疸)が見られるよ!
ビリルビンは赤血球に含まれるヘモグロビンの最終代謝物です
産生されたビリルビンは肝臓で分解され、胆汁として消化管内に排泄されます
生理的黄疸が見られる理由
・胎児赤血球は成人に比べ寿命が短く、ビリルビンが産生されやすい
・肝臓でのビリルビンの分解機能が未熟
・腸管循環などにより消化管からビリルビンを再吸収している
早期正期産児の黄疸の特徴
早期正期産児(特に37週台)は高ビリルビン血症(黄疸)をきたしやすいです
早期正期産児は、より肝臓のビリルビンの分解機能が低く、消化管機能が未熟です
そのため、黄疸が強く・長く出現しやすいことが知られています
まとめ
今回は早期正期産児について解説してきました
今回の記事の要点をまとめると、以下の2点があります
この記事が、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいです
最後までご覧いただきありがとうございました
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