歯磨きは年齢ごとにやり方だけでなく、歯磨きの意味や効果が異なります
イヤイヤ期が重なると歯磨きを嫌がることも多くなり、大変です
この記事では、月齢ごとの歯磨きの気をつける点や工夫点を解説していきます
歯磨きの目的と意味
歯磨き習慣は乳幼児期に身につけたい基本的生活習慣の一つです
日本小児歯科学会では「自分で歯磨きをすること」は子どもの成長発育にとって7つの大切な役割を担っているとしています
①口の中のバイ菌を取り除いて、むし歯や歯茎の病気を防ぐ
②歯ブラシをお口に入れたり他人にお口を触られたりすることで、口の緊張や過敏を取り除く
③食べたら磨くといった生活習慣を身につける
④手、指を使った細かな運動を学ぶ
⑤鏡に映った自分の顔、目、口の位置を覚え、ボディーイメージが育成される
⑥歯ブラシを掴み、口に入れるという動作で手と口の協調性、体感感覚を育む
⑦歯磨きを頑張れたことを褒められ自信がつく
しかし、歯磨き習慣の導入から悩まれる方も多いことでしょう
子どもの成長や歯の萌出とともに歯磨きのポイントも変わってきます
年齢と歯磨き
0歳〜1歳(歯磨き準備期)
歯が生えていない、もしくは少ししか生えていないこの時期での歯磨きの意義は、赤ちゃんが手を口に持っていく、手で物を掴み口に持っていく自立的行動の発達の中で保護者の指やガーゼを口に入れることに慣れさせることにあります
口唇や頬粘膜の感覚は敏感で最初のうちは拒否が強く出ますが、徐々に受け入れてくれるようになります
楽しい雰囲気で、優しく口唇や鼻、頬部に触ったり、摘んだりして刺激を与え、口の周囲に触れられる感覚にまず慣らしてから、指で口唇や頬部の内側をマッサージしてあげよう!
実際に歯磨きを始める時期より先に刺激を与え始め、歯磨きへの需要性を高めておくことが、早く上手に歯磨きができることにつながります
体勢
また、乳幼児期は仰向けでの寝かせ磨きが基本となりますが、この体勢は赤ちゃんにとっては不安定で不安を感じる体勢です
遊びの一つとして楽しい雰囲気で頭や顔にタッチしながらお口の周りを触り、膝の上でゴロンと寝転ぶことを楽しく感じるようにしよう!
ガーゼでの拭き取り
前歯が生えてきたらガーゼで優しく拭って汚れを取ることを始めましょう
上唇の内側や上の前歯の表面にミルクのカスなどが残ることがあり、この部分は唾液による自浄作用が少ない部分のため注意
歯ブラシ
口の中を触られることに慣れてきたら歯ブラシを使い始めます
初めは汚れを取ることより、歯ブラシが歯に当たる感覚に慣れさせることが大切
遊びの中で最初は下の前歯を歯ブラシの毛先でツンツン触ることから始め、慣れてきたら1本ずつ優しく擦るようにしましょう
上の唇は感覚の過敏が残りやすく、拒否のため力が入ってしまうことがあります
優しくゆっくり歯ブラシを持つ手と反対の手の指の腹で押し上げて、前歯の生え際が見えるようにして磨きましょう
前歯の真ん中にある上唇小帯(上唇の内側にある歯茎と上唇をつなぐひだ状のもの)に歯ブラシの毛先が当たると痛いので、当たらないように指で保護しよう!
前歯を上唇小帯の左右に分けて磨くのもいいでしょう
嫌がって閉じた口に無理に歯ブラシを突っ込んで磨くと上唇小帯や歯茎に当たって痛いだけで汚れをうまく落とすことはできません
歯ブラシは子どもが自分で持って口に入れるものと保護者が使うものを分けて選ぼう!
特に子どもに持たせる歯ブラシは安全性を優先しましょう
保護者が使うものはヘッド部分(毛の植わわっている部分)が小さく、持つ部分が大人の手のサイズに合わせてある仕上げ磨き用を選びましょう
大人の部分磨き用のワンタフトブラシの柔らかめのものも使いやすいです
1歳〜2歳(自立と反抗期)
上下の前歯が生え揃い、奥歯や犬歯が次々と生えてくる時期です
楽しそうに保護者や兄姉が歯磨きをして見せることで、歯磨きを肯定的に捉え、真似をするようになります
イヤイヤ期
自我が芽生える時期で、なんでも自分でやりたがったり、指示されることに対して強い拒否を示したりします
自立したい気持ちをうまく歯磨きに向けさせるよう、
「ご飯を食べたら何するんだっけ?」
と促したり、歯磨きの意欲を示したら
「偉いね、食べたら歯磨きだよね!」
と褒めて、生活習慣の中に歯磨きが定着するよう心がけましょう
イヤイヤ期には自分で決めたい意欲が強いので、
「うさちゃんとワンちゃん今日はどっちで磨こうか?」
と二択で歯ブラシを選ばせたりすることで、歯磨きをすることが前提となり、また、選びたい気持ちも尊重されます
一人では上手くできない
自分一人でやりたがる子もいますが、スキルがなくうまくできません
できないことで自尊心が傷つき、歯磨き自体を嫌になってしまうこともあるので、できていないことを指摘せず、できていることを褒めて少しずつ上達を目指そう!
生えている歯の本数が増えると時間もかかるようになるので、子どもと保護者が交代で歯磨きをすることも飽きさせない工夫です
むし歯にしないために
歯磨きを寝る直前にすると、歯磨き前に寝てしまったり、眠くなって機嫌が悪くなることになるので、食後の後片付けの合間にでも早めに歯磨きを行いましょう
前歯が生えそろった生後19〜31か月の間にむし歯菌が定着しやすいと言われていますが、砂糖を含む甘味飲料や食べ物を口にしていると、それ以前でもむし歯は発生します
この時期のむし歯はほとんどが上の前歯に発生します
前歯の歯の間が詰まっていたり、重なっている場合はデンタルフロストの併用が効果的です
3歳〜4歳(歯磨き習慣の形成期)
食後は歯磨きをすることを習慣づける
絵本の読み聞かせを通して、むし歯の成り立ちや歯磨きの大切さを理解できるようになります
少しずつ細かい動きができるようになりますが、まだ把持する力は弱いので、しっかり持つためにグリップが太めの歯ブラシを選びましょう
大まかに口全体を磨けるようになりますが、リスクの高い部分の歯垢を取り除くことはできません
舌で歯の表面を触った時の歯垢が残っているぬるぬる感やざらざら感、綺麗に磨けている時のツルツル感を体感させながら上達を図りましょう
自分でできるように見えても、仕上げ磨きは欠かせないね!
大人でも磨き残しやすい上の奥歯の外側、下の奥歯の内側をしっかり磨きましょう
頑張って大きくお口を開けると頬が邪魔してかえって奥歯の外側が磨きにくいので、奥歯を噛んでもらうのが良いでしょう
デンタルフロスは奥歯の間にも通すようにしましょう
歯磨きの自立
小学校入学の時期に仕上げ磨きをやめてしまう方も多いですが、この時期は第一大臼歯が生えてくる時期と重なります
しっかり生えてくるまでは自分で綺麗に磨くことは困難です
生え始めの歯は虫歯に対する抵抗力も弱いので、小学校中学年までは仕上げ磨きを続けよう!
歯磨きと口の怪我や事故
歯ブラシを口に入れて転倒すると歯ブラシが口の中に刺さり重大な事故につながることがあります
東京消防庁の調査結果によると、歯ブラシによる事故は搬送人数で第1位、中程度以上の割合では箸に次いで2位となっています
また、5歳以下の乳幼児が歯ブラシで受傷した事故により救急搬送された人数は平成27年から令和元年の間で197人となっています。
年齢では1歳が1番多く、次いで2歳、3歳となっています。
受傷時の状況では「歩いたり、走ったりして転倒」が65.5%、次いで「人や物とぶつかる」、「踏み台からの転倒」となっています
事故予防
歯ブラシによる事故を防ぐには、「歯磨き時以外は歯ブラシを持たせない」
小学生でも、洗面所から歯ブラシを加えて移動中に滑って転倒したり、兄弟に当たって怪我につながる事例もあります
歯磨きは椅子やソファーなど不安定になりそうなところでせず、床など安定したところで座って行いましょう
また、本人が磨くときは目を離さず、歯ブラシは手の届かないところに保管しましょう
事故の多い3歳以下の場合、自分で持たせる歯ブラシには喉突き防止対策された歯ブラシを使うことも考えましょう
「食べたら磨こう」は生活習慣に歯磨きを定着させた良い標語です
いくら食べても歯磨きすれば大丈夫と思われる方も多いのですが、むし歯予防の基本は砂糖を含む甘味の量や取り方のコントロールだよ!
アメリカには1歳までにかかりつけの歯科医院を作って食生活や歯磨きの指導を受けるデンタルホームという考えがあります
かかりつけ歯科とともにお口の健康を保ちましょう
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