乳幼児期には便秘や下痢などのうんちに悩まさせられます
この記事では、そのうんちが表している健康状態がわかるようになるため、うんちの悩みが解決していきます
乳幼児期のうんちと排便機能の発達
便はにおい、形、硬さ、回数などから健康状態を表します
健康とみなされる「普通便」の形状や回数の目安は年齢によって異なりますので、まずは成長に応じた普通便について知っておく必要があります
普通便
例えば、大人や年長児はバナナ状の便が1日1回出るのが普通ですが、新生児では、水にマスタードのような粒々が入った便がおむつを開けるたびに出ているというのが普通です
母乳と人工乳の違い
生後半年頃までは、母乳と人工乳による便の違いがあります
例えば、母乳を飲んでいる子の便は人工乳の子に比べ水分量が多く緩く、酸っぱい匂いが強いのが特徴です
これは母乳を飲んでいる子の便に、人工乳を飲んでいる子の便よりも多くのビフィズス菌があり、ビフィズス菌が作り出す酸(乳酸)には殺菌作用があるため、感染防御の点からも母乳栄養のメリットと言えます
離乳食の便
生後半年を過ぎ離乳食が始まると、腸内細菌叢を構成している細菌種の割合が変化し、ビフィズス菌優位の状態から、ユーバクテリウムなど大人の腸で優位とされる菌が多い状態となります
こうして色や匂いが大人の便に近づいていくよ!
排便回数は月齢とともに減り、生後2〜3か月で1日2〜3回程度、1歳以上だと1日1回というのが一般的です
ただし個人差があるため、1歳以上でも1日2回から2日に1回程度、その子なりのリズムで排便できていれば問題ない
排便機能
こうした排便回数は排便機能の発達で変化します
少し詳しく説明すると、肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋という2種類の筋肉があります
内肛門括約筋は、便の刺激による反射で開きますが、外肛門括約筋は便が漏れないように閉めるなど、自分の意思によるコントロールが可能です
コントロールは最初からできるものではなく、ある程度体の機能の成熟が必要だよ!
乳幼児の排便の仕組み
乳幼児の排便の仕組みについて説明すると、まず直腸に便が到達した刺激で腸が膨らみます。
この腸が膨らむことを伸展刺激といい、赤ちゃんはこの伸展刺激を脊髄が受け、脊髄が腸を動かすことにより便が下りてきます。
そして下りてきた便に反応して内肛門括約筋が開き排便が起こります
それが1歳から2歳半ごろになると、今度は伸展刺激が、脊髄ではなく、脳まで到達するようになります。
そうすると、脳から外肛門括約筋をコントロールすることができるようになり、段々と大人のように排便をコントロールする随意排便が可能になるのです
つまりトイレットトレーニングをする2歳ごろというのは徐々に排便のコントロールができるようになる時期なんだね!
トイレトレーニング
トイレットトレーニングは身体の機能発達だけでなく、子どもの成長や親の状況なども大事な条件です
状況が整わない中で実施した結果、子どもがトイレに行くのを嫌がるようになってしまうこともよく見受けられますので慎重に実施してください
乳幼児の便秘の原因
乳幼児の便秘の原因としては、器質性のものと習慣性のものが考えられます
器質性の便秘
ヒルシュスプリング病など手術が必要となる場合もあります
習慣性の便秘
トイレットトレーニングがうまくいかずトイレを嫌いになっていたり、お尻が切れてしまって痛いなど、何かしら排便をしたくない状況が続き、便が直腸に溜まってしまうことがあります
便秘の悪循環
腸に便が溜まりすぎると、直腸が常に膨らんだ状態になります
すると、便が下りてきても伸展刺激が加わらず、脊髄や脳に刺激が行きません
さらに、便が直腸に溜まっている間に水分が腸に吸収されて硬くなり、それを無理に出そうとすると痛みを感じるので出さない、という悪循環が起きてしまうのです
便秘の治療
便秘の対処で大切なのは直腸に溜まった便を取り除くこと
浣腸と下剤
治療ではまず、浣腸を行います
1回取り除いただけでは腸の機能を取り戻す前にまた溜まってしまうので、最初は2日連続での浣腸が必須です
一度便が溜まって膨らんだ腸は排便のために収縮する力が弱まっていますから、その後も下剤の内服薬を連日使用しても便が2〜3日でなかったら、浣腸あるいは下剤の座薬を使用します
浣腸をするより先に下剤を飲むと、硬くなった便がつまり、栓になっている状態のまま腸が動き、腹痛を招くので必ず浣腸が先だよ!
下剤を飲みながら様子を見ているうちに、次第に腸の締まりが戻り、自力で排便できるようになります
浣腸と下剤は癖にならない
癖になるのは便が腸に溜まることの方で、浣腸や下剤の使用ではないよ!
腸の長さや動きなどの問題がある場合は継続的に薬の服用が必要となることもありますが、習慣性のない便秘などは根気よく治療に取り組めば解消されます
排便回数が週3回未満だと便秘とされています
便秘は初期の方が治りやすいため、ある程度便秘が続く場合は、早めに小児科を受診することが重要
乳幼児の下痢3つの原因
子どもの下痢にはいくつか原因が考えられていますが、主なものとしては3つあります
消化不良による下痢
乳幼児は消化酵素が非常に未熟で、消化しにくい食べ物が腸に送られると、未消化物が大腸内の浸透圧を上昇させ、体内の水分が腸管に移行するために下痢を起こします
特に消化吸収しにくのは脂質だよ!
離乳食が脂質の少ないささみなどからスタートするのはそのためです
この下痢の場合、食事はお粥やうどんなど消化吸収にいいものを与えます
離乳食が中期〜後期まで進んでいたら一つ前に戻してもいいね!
授乳中なら母乳はとても良いですし、育児用ミルクも薄めたりせず、どちらもいつも通りあげてください
また、消化酵素が最も働くのが37度と言われています
お腹が冷えると酵素の活性が弱くなり、消化吸収機能が落ちてしまうので、お腹を冷やさないことも大事です
食物アレルギーによる下痢
食物アレルギーでは皮膚に発疹や痒みが出たり、咳や喘鳴などの呼吸器症状が見られたりするほか、下痢・便秘といった形で消化器に症状が出現することもあります
離乳食で新しい食材を試す際は、全身症状だけでなく便の様子もチェック!
ウイルスによる下痢
嘔吐がある場合や、便が白い場合はノロウイルスやロタウイルスなどによる急性ウイルス性胃腸炎のことが多いです
ウイルス性胃腸炎
便が白くならない場合でも、周囲で流行しているときはウイルス性胃腸炎を疑って良いと思います
ウイルス性胃腸炎は急性疾患で大抵はすぐに治るが、脱水を防ぐため経口補水液による水分摂取を十分行う
乳糖分解酵素
ウイルス性胃腸炎の後、稀に下痢が長引くことがあります
胃腸炎によって腸の表面の乳糖分解酵素が剥がれ落ちることが原因です
乳糖分解酵素がなくなると母乳や人工乳などに含まれる乳糖が分解できなくなり、消化吸収不全を起こします
この場合、しばらくの間、乳糖分解酵素薬という薬剤、もしくは大豆ミルクなどの無乳糖ミルクを使い、乳糖分解酵素が回復するのを待ちます
アレルギー反応が起こる
腸の粘膜が荒れた結果、普段は吸収されない大きなタンパク質が吸収され体内に入り込み、アレルギーを起こすこともあります
この場合、食事制限が必要ですが、粘膜が正常に戻れば元の食生活に戻ることも可能なこともあります
下痢への対処
普通便が水状の頃は形状ではなく回数や匂いが下痢の目安になると思います
下痢の場合は回数が増え、匂いも酸っぱくなります
大切なのは、体重増加の有無
体重がしっかり増えていれば多少便が緩くても、消化吸収はできていると判断します
便の色や形状でわかる病気
白い便
白い便の原因には先ほど説明したノロやロタのほか、胆道閉鎖症もあります
これは、胆汁が肝臓から腸に流れる管が閉鎖してしまう重篤な病気で、早期の手術が必要となるため早期発見が必要です
胆道閉鎖症はノロやロタと違い、下痢を伴わず、さらに生後直後から便が白いという特徴があるので見分けやすいです
母子健康手帳には胆道閉鎖症の早期発見のための便色カードがあるから、活用しよう!
血便
血便も注意が必要ですが、血便は色によって出血部位が推測できます
黒い血便 | 胃潰瘍や十二指腸潰瘍など消化管の上方で出血 |
赤い血便 | 肛門に近い腸内で出血 |
いちごジャム状 | 腸重積のサイン |
腸重積とは、腸の一部が隣接する腸内にはまり込んでしまう病気で、ロタウイルスワクチンの副反応として出ることもあります
早期に受診すれば大事に至ることはないけど、時間とともに症状が増悪するので、注意が必要だよ!
また、下痢を伴う血便は感染性の病気も疑われます
心配がいらない便
出血が多くなると斑状もしくは線状になることもあるのですが、これはリンパ濾胞増殖症といい、母乳を飲むことで直腸にリンパ組織が発達しやすくなり、その表面から出血するものです
この母乳性の血便は割とよく見られ、離乳食が始まると自然に治るため治療の必要はなく、母乳も継続して問題ないよ!
出血量が多く貧血になってしまったり、親がどうしても心配だと言ったりする場合は、ミルクの量を増やすと症状が治まる場合もあります
ただしミルクアレルギーもリンパ濾胞増殖症に関与することがあるため、アレルギー性が疑われる場合は、最初はアレルギー用のミルクを使用します
まとめ
便は重篤な病気を発見するための信号としての役割もあり、健康状態を管理するための重要な手がかり
便の色や形状が気がかりな時には、便のついたおむつもしくは写真で撮った画像を持って受診していただければと思います
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