お子さんが呼んでも振り向かなかったりすると、耳の聞こえが心配になりますよね
難聴と言っても程度はさまざまです
また、聞こえの問題ではなく、発達障害が影響している場合もあります
この記事では対応の仕方や注意事項も含めて解説していきます
難聴の種類
伝音性難聴
中耳炎を繰り返す、外耳道閉鎖、あるいは鼓膜の損傷などによっておこる難聴
音の聞こえ方が小さくなりますが、聞こえ方はあまり歪みません
聴力損失は最大30デシベル程度ですので、大きめの会話程度の大きさの音なら聞こえます
聞こえ方は、指で耳をふさいだような感じ、と思えばわかりやすいね!
感音性難聴
有毛細胞より後の、聴覚神経の部分の障害によって起こる難聴
妊娠中の母親の風疹感染とか、髄膜炎、家族性など原因のはっきりしているものもありますが、多くは原因不明です
また、滲出性中耳炎を繰り返すと、鼓膜だけでなく内耳にも障害が及び、感音性の難聴になることもあります
感音性難聴では、話しことばの音の違いをつくり出すために重要な手がかりとなる2000ないし4000ヘルツ以上の高い周波数成分が聞こえなくなることが多いのです
音の聞こえ方が小さくなるだけでなく、開こえ方が歪み、こもったような不明瞭な音に聞こえたり、雑音が入ったりして、非常に聞き取りにくくなります
例えると、厚いマスクを二重にかけた人の声、接触不良のマイクを通してブツブツ間が途切れる放送、水の底で人の声!
難聴の程度
難聴の程度は、聴力損失のデシベル(dB)数で表わします
「デシベル」というのは、音の強さを測る尺度
聴力損失のデシベル(dB)が大きくなればなるほど難聴の程度が重い、ということを表わしています
たとえば「聴力損失40dB」とは「40dB(静かな会話程度)の音が聞いえない」という意味で、40dBよりも大きい音(ふつうの会話:60dB、大きめの会話:80dB)なら聞こえる程度ということになります
難聴の程度 | 呼び声に対して | 日常の環境音 | ことばの発達 | |
軽度 | 21~400dB | 振り向く | 聞こえる | |
中等度 | 41~700dB | 振り向いたり、振り向かなかったり | 聞こえたり、聞こえなかったり | 遅れることが多い |
高度 | 71~90dB | 大声であれば振り向くことがある | 聞こえないことが多い | 著しく遅れる |
重度 | 91dB以上 | 全く反応なし | ほとんど聞こえない | 全く発達しない |
高度難聴の場合でも、早期から補聴器を装用し、適切な指導を受ければ、ことばの発達に大きな障害を起こさないですむ場合がある
中等度難聴の場合は、音が全然聞こえないわけではありません
静かな部屋で大きな声での話しかけには応ずることができます
ましてや理解力のすぐれた子どもの場合は、まわりの状況から察して、ほとんど支障なく日常生活をこなしてゆけるので、逆に、発見が遅れてしまうことがよくあります
音の強さ | 環境 | 人の声 |
10dB | 深夜の郊外 | |
20dB | ||
30dB | ささやき声 | |
40dB | 静かな場所 | 静かな会話 |
50dB | ||
60dB | 普通の会話 | |
70dB | 静かな車の中 | |
80dB | 騒がしい事務所 | 大声の会話 |
90dB | セミの声 | |
100dB | 呼び声 | |
1100B | 電車の通るガード下 | 30cmの近さの叫び声 |
120dB | 車の警笛 | |
130dB | ジェット機の爆音 | 30cmの近さのサイレン |
月齢ごとの耳の聞こえの確認事項
聴覚は、生後6~7か月ごろに急速に発達します
月齢 | 項目 |
0か児 | 実然の音にビクッとする(モロー反射) 突然の音にまぶたがギュッと閉じる(眼瞼反射) 眠っているときに突然大きな音がすると、まぶたが開く |
1か月児 | 突然の音にビクッとして手足を伸ばす。 眠っていて、突然の音に目を覚ますか、または泣き出す 目が開いているとき、急に大きな音がすると、瞼が閉じる 泣いているとき、または動いているときに声を掛けると、泣き止むか動作を止める 近くで声を掛けると、ゆっくり顔を向けることがある |
2か月児 | 眠っていて、急に鋭音がすると、ビクッと手足を動かしたり、瞬きをする 眠っていて、子どものさわぐ声や、くしゃみ、時計の音、掃除機などの音に目をさます 話しかけると、アーとかウーと声を出して喜ぶ |
3か月児 | 眠っていて、突然音がするとまぶたをビクッとさせたり、指を動かすが、全身がビクッとなることはほとんどない ラジオの音、テレビのスイッチの音、コマーシャルなどに顔を向けることがある 怒った声や、やさしい声、歌、音楽などに不安そうな表情をしたり、喜んだり、または嫌がったする |
4か月児 | 日常のいろいろな音に関心を示す 名前を呼ぶと、ゆっくりではあるが顔を向ける 人の声に振り向く 不意の音や聞きなれない音、珍しい音に、はっきり顔を向ける |
5か月児 | 耳もとに目ざまし時計を近づけると、コチコチいう音に振り向く 父母や人の声、録音された自分の声など、よく聞き分ける 突然の大きな音や声に、びっくりしてしがみついたり、泣き出したりする |
6か月児 | 話しかけたり歌をうたってやると、ジッと顔を見ている 声をかけると、意図的にサッと振り向く テレビやラジオの音に敏感に振り向く |
7か月児 | となりの部屋のもの音や、外の動物のなき声などに振り向く 話しかけたり歌をうたってやると、じっと口元を見つめ、時に声を出して答える テレビのコマーシャルのテーマ音楽の変り目に、パッと向く 叱った声や、近くで鳴る突然の音に驚く |
8か月児 | 動物の鳴き声をまねると、キャッキャツ言って喜ぶ 機嫌よく声を出しているとき、まねてやると、またそれをまねて声を出す。 ダメッ!コラッ/などと言うと、手を引っ込めたり、泣き出したりする 耳もとに小さな音(時計のコチコチ音など)を近づけると、振り向く |
9か月児 | 外のいろいろな音(車の音、雨の音、飛行機の音など)に関心を示す 「オイデ」「バイバイ」などの人のことば(身振りを入れずにことばだけで命じて)に応じて行動する となりの部屋でもの音をたてたり、遠くから名を呼ぶと、はってくる 音楽や、歌をうたってやると、手足を動かして喜ぶ。 ちょっとしたもの音や、ちよっとでも変った音がすると、ハッと向く |
10か月児 | 「ママ」「マンマ」または「ネンネ」など、人のことばをまねて言う 気づかれぬように、ソッと近づいて、ささやき声で名前を呼ぶと振り向く |
11か月児 | 音楽のリズムに合わせて、からだを動かす 「チョウダイ」と言うと、そのものを手渡す 「~ドコ?」と聞くと、そちらを見る |
12〜15か月児 | となりの部屋でもの音がすると、不思議がって、耳を傾けたり、あるいは合図して教える 簡単なことばによるいいつけや、要求に応じて行動する 目、耳、口、その他の身体部位をたずねると、指さす |
発達の遅れかと思ったら、難聴だったということもあるよ!
難聴と発達障害との違い
難聴児は注意深く見ると、発達に遅れのある子どもや自閉症児とは行動が違います
難聴 | 発達の遅れ | 自閉的傾向 | |
呼びかけや 音への反応 | 呼んでも振り向かない。 振り向くのに時間がかかる | 振り向くのに時間がかかる。反応がぼんやりしている | 呼んでも振り向かない。特定の音への反応は素早い。たとえばテレビのコマーシャルやお菓子の袋のカサコ ソいう音にはとなりの部屋からでも飛んでくる、など。 |
まわりへの注意の払い方 | まわりの人の行動に合わせて行動する。 話し手の口もとや表情をたびたび見る | 全体にボーッとしていて、反応が遅い。具体的に話しかけると行動を開始する | まわりに関係なく自分勝手な行動をしているように見える |
理解 | 「お出かけするよ」とか「新聞持ってきて」などの指示には、状況を理解して従うことが多い。「ことばだけ」での指示では、よく理解できない | 「ことばだけ」よりは「ことば+身振りや表情」のほうが理解しやすい。が、なんとなく、わかっているのかわかっていないのか、はっきりしない。 | 相手のことばや行動に注目しないので、指示に従いにくい。「ごみポイしてきて」などの簡単な指示も、確実には応じられない |
ことば | 話し始めが遅れる。「えっ?」と聞き返すことが多い | 話し始めが遅れる | 話し始めが遅れる。レロレロレロとかガッガッガッなど意味のない音遊びが続き、ママとかマンマなどの意味のあることばが出ない |
発音 | はっきりしない、こもったような発音 | はっきりしないことが多い | 発音そのものははっきりしていることが多い |
語彙数の増加 | 年齢が進むにつれて語彙数や言い回しが他児にくらべて遅れてゆく | 語彙の増え方が少ない。ことばをつなげて話すことが遅れる | 意味のあることばが増えない |
身辺自立 | 食事動作や排泄などに遅れはない | 遅れる | 遅れる。 食べ物の好き嫌いが激しいことが多い |
その他 | 注意力、集中力に欠ける。 落ち着かない印象がある | 動きの鈍い子と、落ち着かない子がいる | 落ち着きがない |
聴力検査について
幼児の聴力検査や難聴の見きわめは難しく、どこの医療機関でも正確な診断ができるとは限らないよ!
防音室が整っており、幼児用の聴力検査設備(CORなど)を持ち、脳波による聴力検査(ABR、脳幹誘発反応検査)ができ、乳幼児の難聴の経験数の多い医療機関を選びましょう
また、脳波による聴力検査は、入眠誘導から始まる1日かかりの大仕事になるので、子どもにとってもお母さんにとっても負担が大きいのです
したがって、音の反応に心配な点が見られても、すぐに精密検査のために医療機関に受診するのではなく、静かな部屋で、ひとりで遊んでいる子どもの後ろから、カスタネットやベル、たいこなどの音を聞かせて、反応するかどうかを観察してみましょう
何回かやってみて、音への反応が思わしくない場合は、専門機関に聴力検査を相談しましょう
日常生活の中で配慮
日常生活の中では、次のような配慮が役立ちます
- ゆっくり、はっきり、口型を見せて話しかける
- ジェスチャーや指さし、実物など、音以外の手がかりを意識的に多く与えてあげると理解しやすくなり、気持ちも安定する
- 保育園や幼稚園などの同年齢の子どもたちの集団で、ことばの刺激を受けるのは大切なことですが、そういう集団は非常に元気よく、うるさいことが多いものです。難聴児は、いろいろな音が混じって聞こえる環境では、音が聞き取りにくいため、とても疲れます。集団参加を進めるのと並行して、難聴の程度や必要に応じて、ろう学校の教育相談や医療機関・福祉センターのような専門機関で、静かな部屋で個別的・専門的な聴能訓練を受ける
まとめ
今回は発達がグレーソーンの子への対応のコツについて解説してきました
今回の記事の要点をまとめると、以下の2点があります
この記事が、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいです
最後までご覧いただきありがとうございました
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